私が殺した筈の女

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悪霊と神様

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カリーナは新しく得た体をもらえた事に大満足だった。殺されて向かった先で神様に言われたのはあたらしい世界で今度はヒロインではない普通の女の子としての転生だった。今世の記憶も消して心機一転、と言われカリーナは絶望した。

カリーナは前世の記憶がある。カリーナになる前の香里奈としての記憶が。香里奈は地味な女で男からは全く見向きもされない女だった。ようやくカリーナとして、舞台に立てヒロインとしての人生を歩み出した矢先、モブ女に殺されたのだ。

神様は、カリーナに「君の役目は終わったよ。役回りとは言え、可哀想なことだった。来世は楽しい人生を用意したよ!」と言い、種明かしをした。


この世界は香里奈がしていた乙女ゲームの世界とは別の、ヒロインに人生を奪われた者達への救済をテーマにした世界、と神様は言った。

「前の世界で傷ついた魂が可哀想で仕方なくてね、今回君が途中退場となったのは最初から組み込まれていたことなんだ。救済する人は違ったけれど、彼はそれでも良いみたいだし。」

カリーナを殺すのは、プリシラではなく、別の男で、それが乙女ゲームの中では、バッドエンドに現れる暗殺者の男だと聞いて愕然とした。

彼はバッドエンドならカリーナと心中し、ノーマルエンドなら、カリーナを逃がしてくれる。顔自体はイケメンだが、暗殺者として生きている為、一見普通の男に擬態した、隠れ攻略者だ。彼は攻略対象ではないから、攻略することはできないが、場合によっては、逃がしてくれることから、カリーナにとっては最後の攻略対象として、考えていた。

でもまあ、暗殺者として暗殺対象を逃してその先彼がどうなるかなんて、分かり切ったことだ。彼を救済しなくてはならないほどに辛い目に遭ったのは間違い無いのだろう。カリーナはゲームの中のことだと何も考えず、ラッキーとしか思っていなかったけれど。

神様の救済では主人公は勿論カリーナではない。

「なら、あの女ね。私を殺したあの、モブ女。」
「プリシラのことかな。彼女はいや、違うね。どちらかと言えば彼女も救済対象にはなるけれど。」
「なら、誰よ。私に人生を台無しにされた人なんて、もういないでしょ。いやそうでもないさ。プリシラの元婚約者のローガンなんて、まさにその通りだろう。」
「ローガン?どうして彼が?彼は私に愛されて幸せだったわ。」
「そうかな。まあ、それならヒロインは別にいるんじゃないか。よーく、考えれば自ずと見えてくる筈だよ。」

神様はカリーナが、ローガンの元に急いで戻ろうとするのを強くは止めなかった。彼女が悪霊になった後は、新しい身体を求めてきっとこの世界の主人公の元に行くだろうし、それこそが神様の最後の仕事だったからだ。

「後は君に任せるからね。積年の恨みを晴らすと良い。」
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