16 / 18
この世界は誰のもの
自分の身体を好きに使おうとする悪霊に、身体の持ち主である女は表面上は抵抗しなかった。現状、目的地へ連れて行って貰うまでは、彼女に逆らうのは得策ではない。だって、彼らの住む家をそもそも女は知らない。
女は、名前をマリーと言い、元は平民だった。貴族家でメイドをしていた折、屋敷のお嬢様に目をつけられて酷い虐めにあっていたところを、お嬢様の婚約者に助け出された。お嬢様の婚約者とは何もなかったけれど、そのことがきっかけで職は失い、他家への再雇用も絶望的になった。虐めの事実は伏せられ、仕えていた家のご令嬢の婚約者に色目を使う泥棒猫だと、言いふらされたからだ。
事実はどうあれ、反対する術を持たないマリーにはどうすることもできなかった。変わり者の第三王子が、マリーに興味を示すまでは。
彼の愛人になってからは、マリーの世界は変わった。彼の愛人の多くは皆訳ありで彼とは結婚できない事情があった。皆同じ立場でありながら、誰一人それを不満に思うことはない。ただ、いつ彼が妻を迎えて、お払い箱にされるのか、そればかりが気がかりだった。
彼自身が本当の意味で恋をしたことがない、というのも大きかった。だからこそ、愛人を複数作れたし、だからこそ皆を均等に愛することが出来たのだ。
マリーは概ね幸せだった。悪霊が来て、彼の運命の相手とやらを彼に見せるまでは。
彼女にはどこかで会ったような気がしていて、マリーは胸騒ぎに襲われていた。何となく、近づきたくないようなそんな気持ち。彼を彼女に会わせようとしている悪霊とは反対に、彼らを決して会わせてはならない、と本能的に感じる。
悪霊と彼の話から、運命の彼女には別に愛する人がいると言う。ならば、絶対に彼らが離れないようにすればこちらまで危ない目に遭うことは回避できるのでは?
マリーは、平民だし、特に頭も良くはない。悪霊だって、多分マリーと同じくらいの頭しか持っていなさそうだ。
悪霊には、ローガンとか言う男を与えておけば、女の方はどうでもいいと、マリーにくれるかもしれない。
第三王子に見つかる前に彼女を逃がせることができれば、とマリーは考えてみたが、生きていると判れば彼女を決して諦めないかもしれないと、思い直し、最悪、始末しなければならない、と決意した。
マリーはそうは言っても、人を殺したことはない。ましてや平民が貴族を殺害すれば、処刑が待っている。躊躇うのが普通だ。
「だけど、どちらにしても死ぬんですよね、私。」
神様に救済の世界まで特別に作って貰うことになったマリーは、この先どう頑張っても、死が訪れる。ならば、せめて大好きな人の側で、と願ったのだ。だから、悪霊も受け入れた。マリーには悪あがきしか後がない。
神様を今更恨むこともできなくて、悪霊の暴走に身を委ねた。
女は、名前をマリーと言い、元は平民だった。貴族家でメイドをしていた折、屋敷のお嬢様に目をつけられて酷い虐めにあっていたところを、お嬢様の婚約者に助け出された。お嬢様の婚約者とは何もなかったけれど、そのことがきっかけで職は失い、他家への再雇用も絶望的になった。虐めの事実は伏せられ、仕えていた家のご令嬢の婚約者に色目を使う泥棒猫だと、言いふらされたからだ。
事実はどうあれ、反対する術を持たないマリーにはどうすることもできなかった。変わり者の第三王子が、マリーに興味を示すまでは。
彼の愛人になってからは、マリーの世界は変わった。彼の愛人の多くは皆訳ありで彼とは結婚できない事情があった。皆同じ立場でありながら、誰一人それを不満に思うことはない。ただ、いつ彼が妻を迎えて、お払い箱にされるのか、そればかりが気がかりだった。
彼自身が本当の意味で恋をしたことがない、というのも大きかった。だからこそ、愛人を複数作れたし、だからこそ皆を均等に愛することが出来たのだ。
マリーは概ね幸せだった。悪霊が来て、彼の運命の相手とやらを彼に見せるまでは。
彼女にはどこかで会ったような気がしていて、マリーは胸騒ぎに襲われていた。何となく、近づきたくないようなそんな気持ち。彼を彼女に会わせようとしている悪霊とは反対に、彼らを決して会わせてはならない、と本能的に感じる。
悪霊と彼の話から、運命の彼女には別に愛する人がいると言う。ならば、絶対に彼らが離れないようにすればこちらまで危ない目に遭うことは回避できるのでは?
マリーは、平民だし、特に頭も良くはない。悪霊だって、多分マリーと同じくらいの頭しか持っていなさそうだ。
悪霊には、ローガンとか言う男を与えておけば、女の方はどうでもいいと、マリーにくれるかもしれない。
第三王子に見つかる前に彼女を逃がせることができれば、とマリーは考えてみたが、生きていると判れば彼女を決して諦めないかもしれないと、思い直し、最悪、始末しなければならない、と決意した。
マリーはそうは言っても、人を殺したことはない。ましてや平民が貴族を殺害すれば、処刑が待っている。躊躇うのが普通だ。
「だけど、どちらにしても死ぬんですよね、私。」
神様に救済の世界まで特別に作って貰うことになったマリーは、この先どう頑張っても、死が訪れる。ならば、せめて大好きな人の側で、と願ったのだ。だから、悪霊も受け入れた。マリーには悪あがきしか後がない。
神様を今更恨むこともできなくて、悪霊の暴走に身を委ねた。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
必要とされなくても、私はここにいます
あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。
口出ししない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
ただ静かに、そこにいるだけ。
そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。
張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。
何かを勝ち取る物語ではない。
誰かを打ち負かす物語でもない。
それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。
これは、
声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、
何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
無愛想な婚約者の心の声を暴いてしまったら
雪嶺さとり
恋愛
「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」
「え?」
伯爵令嬢ルーシャの婚約者、ウィラードはいつも無愛想で無口だ。
しかしそんな彼に最近親しい令嬢がいるという。
その令嬢とウィラードは仲睦まじい様子で、ルーシャはウィラードが自分との婚約を解消したがっているのではないかと気がつく。
機会が無いので言い出せず、彼は困っているのだろう。
そこでルーシャは、友人の錬金術師ノーランに「本音を引き出せる薬」を用意してもらった。
しかし、それを使ったところ、なんだかウィラードの様子がおかしくて───────。
*他サイトでも公開しております。
出会ってはいけなかった恋
しゃーりん
恋愛
男爵令嬢ローリエは、学園の図書館で一人の男と話すようになった。
毎日、ほんの半時間。その時間をいつしか楽しみにしていた。
お互いの素性は話さず、その時だけの友人のような関係。
だが、彼の婚約者から彼の素性を聞かされ、自分と会ってはいけなかった人だと知った。
彼の先祖は罪を受けず、ローリエの男爵家は罪を受け続けているから。
幸せな結婚を選ぶことのできないローリエと決められた道を選ぶしかない男のお話です。
片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた
アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。
高校生くらいから何十回も告白した。
全て「好きなの」
「ごめん、断る」
その繰り返しだった。
だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。
紛らわしいと思う。
彼に好きな人がいるわけではない。
まだそれなら諦めがつく。
彼はカイル=クレシア23歳
イケメンでモテる。
私はアリア=ナターシャ20歳
普通で人には可愛い方だと言われた。
そんなある日
私が20歳になった時だった。
両親が見合い話を持ってきた。
最後の告白をしようと思った。
ダメなら見合いをすると言った。
その見合い相手に溺愛される。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」