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私が殺した筈の女
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悪霊はプリシラの身体を乗っ取ることはできなかった。代わりに身体を奪われたのはローガン。
と言うより悪霊は吸い取られるようにローガンの身体に収まって、それきり何も言わなくなった。
彼女はローガンの中に入ったのに、何の意思表示もしなくなった。ローガンはただ虚な目を返すだけ。
だから、プリシラはローガンの体がどうなっているのかが全くわからない。ただわかるのは私が殺したはずの女は、最終的には己の愛する男を手にしてしまったと言うこと。
私はローガンすらも殺さなくてはいけないのだろうか。
プリシラの懸念をよそに、ローガンは、プリシラに襲い掛かろうとする物体から彼女を守りたかった。しかし、どう言う訳か自分の身体に入る前にその物体は元の身体に戻ったのである。
何かぎゃあぎゃあと喚いていたような気がするが、すぐにおとなしくなったからには大丈夫なんだろう。
それからすぐに女はさっさと帰っていった。一体何をしに来たのかわからない。
プリシラはやたらとローガンの身体を気にしてくれる。ローガンは優しいプリシラが戻ってきたみたいで嬉しかったが、それが彼女が勘違いしていたせいだとは思わなかった。彼女はあの物体がローガンの身体を乗っ取ったと思ったらしい。
「いや、僕は正真正銘のローガンだよ。」
プリシラは何度言っても理解してくれなくて、対話を続けているうちに漸く安心してくれるようになった。
結局、何がどうなって、というのがわからない。「私が殺したはずの女は、まだ生きているのかな。」
悪霊となってまで執着してきたにも関わらずあっさり終わったやりとりに力が抜ける。
「あの体の持ち主が最後に立ち上がって、彼女を撃退したのかもしれないわ。」
プリシラはまだ彼女達について考えを巡らせていたが、ローガンにはどうでも良いと思えた。プリシラが無事ならばそれでいい。手を伸ばし、彼女を抱きしめると何もかもが元通りになったような気がした。プリシラもここのところずっと暗い表情を浮かべていたが今は思い悩む様子はない。昔の彼女に戻ったようでローガンはホッとした。
プリシラに憑こうとした悪霊を引き止めたのはマリーだ。彼女はプリシラを見るなり、諸悪の根源は彼女ではなくて、この悪霊なのでは?と思い至った。もう少しタイミングが遅ければ悪霊の思う壺だったが、すんでのところで、マリーの意識が勝った。
悪霊の言うとおりにすれば、自分にはまた惨めな人生が待っている。生きてはいられても、身体はプリシラの精神に奪われ、また愛人の地位に収まるとするならば、プリシラは愛されても、自分はいくら待っても愛されないのだ。
ならばプリシラの身体を悪霊が奪い取れば、悪霊だけが幸せで後は割を食うことになる。
だから、悪霊には一番屈辱的な方を選んでやった。好きでもない男にすら相手にされない、そんな人生を。一度飛び出した霊体をまた同じ身体に戻すと、これが本体だと誤認して、魂を無理矢理結びつけることが可能らしい。
彼女は最後の最後に裏切ったマリーを許さなかった。たかが霊体が許さないとしても何ができる?
マリーは無視をして、元の場所に戻ることを決めた。愛する人は、自分を捨てた時と同じくらいあっさりと自分を戻してくれた。そこに愛やら恋やらはないのだろう。全てがプリシラ嬢の代わりなのだから。自分の運命を迎え入れられなかった寂しい男を間近で見られるのはとても愉快なことだ。マリーは彼の姿に溜飲を下げ、これから始まる彼らの地獄を特等席で見続けることにした。
終わり
最後とっ散らかってすみませんでした。ヤンデレ、って難しいですね。
読んでいただきありがとうございました! mios
と言うより悪霊は吸い取られるようにローガンの身体に収まって、それきり何も言わなくなった。
彼女はローガンの中に入ったのに、何の意思表示もしなくなった。ローガンはただ虚な目を返すだけ。
だから、プリシラはローガンの体がどうなっているのかが全くわからない。ただわかるのは私が殺したはずの女は、最終的には己の愛する男を手にしてしまったと言うこと。
私はローガンすらも殺さなくてはいけないのだろうか。
プリシラの懸念をよそに、ローガンは、プリシラに襲い掛かろうとする物体から彼女を守りたかった。しかし、どう言う訳か自分の身体に入る前にその物体は元の身体に戻ったのである。
何かぎゃあぎゃあと喚いていたような気がするが、すぐにおとなしくなったからには大丈夫なんだろう。
それからすぐに女はさっさと帰っていった。一体何をしに来たのかわからない。
プリシラはやたらとローガンの身体を気にしてくれる。ローガンは優しいプリシラが戻ってきたみたいで嬉しかったが、それが彼女が勘違いしていたせいだとは思わなかった。彼女はあの物体がローガンの身体を乗っ取ったと思ったらしい。
「いや、僕は正真正銘のローガンだよ。」
プリシラは何度言っても理解してくれなくて、対話を続けているうちに漸く安心してくれるようになった。
結局、何がどうなって、というのがわからない。「私が殺したはずの女は、まだ生きているのかな。」
悪霊となってまで執着してきたにも関わらずあっさり終わったやりとりに力が抜ける。
「あの体の持ち主が最後に立ち上がって、彼女を撃退したのかもしれないわ。」
プリシラはまだ彼女達について考えを巡らせていたが、ローガンにはどうでも良いと思えた。プリシラが無事ならばそれでいい。手を伸ばし、彼女を抱きしめると何もかもが元通りになったような気がした。プリシラもここのところずっと暗い表情を浮かべていたが今は思い悩む様子はない。昔の彼女に戻ったようでローガンはホッとした。
プリシラに憑こうとした悪霊を引き止めたのはマリーだ。彼女はプリシラを見るなり、諸悪の根源は彼女ではなくて、この悪霊なのでは?と思い至った。もう少しタイミングが遅ければ悪霊の思う壺だったが、すんでのところで、マリーの意識が勝った。
悪霊の言うとおりにすれば、自分にはまた惨めな人生が待っている。生きてはいられても、身体はプリシラの精神に奪われ、また愛人の地位に収まるとするならば、プリシラは愛されても、自分はいくら待っても愛されないのだ。
ならばプリシラの身体を悪霊が奪い取れば、悪霊だけが幸せで後は割を食うことになる。
だから、悪霊には一番屈辱的な方を選んでやった。好きでもない男にすら相手にされない、そんな人生を。一度飛び出した霊体をまた同じ身体に戻すと、これが本体だと誤認して、魂を無理矢理結びつけることが可能らしい。
彼女は最後の最後に裏切ったマリーを許さなかった。たかが霊体が許さないとしても何ができる?
マリーは無視をして、元の場所に戻ることを決めた。愛する人は、自分を捨てた時と同じくらいあっさりと自分を戻してくれた。そこに愛やら恋やらはないのだろう。全てがプリシラ嬢の代わりなのだから。自分の運命を迎え入れられなかった寂しい男を間近で見られるのはとても愉快なことだ。マリーは彼の姿に溜飲を下げ、これから始まる彼らの地獄を特等席で見続けることにした。
終わり
最後とっ散らかってすみませんでした。ヤンデレ、って難しいですね。
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本日、懐かしい夢、まで拝読しました。
なるほど。死んだはずなのに、いた。それには、ああいった理由があったのですね。
しかしながらそちらが判明しても、まだまだ(いい意味で)気になる点が増えていて、ずっと興味津々で拝読しております。
あの人たちが(ふたりが)、これからどんな道を進んでゆくのか。引き続き注視させていただきます。
この辺りからローガンとプリシラの思考が変な方向に曲がっていく?感じなのと、私が書いていて「ヤンデレ」ってこれで合ってるんだっけ?と悩んでいるところなので、文章にもその片鱗が……それはさておき、楽しんでいただけているようで嬉しいです。ありがとうございます!
先日はなかなか体調が安定せず、本日2話と3話を拝読しました。
謎が、深まっていっていますね。
この出来事の裏には(ご自身が気付かなかった間に)、なにがあったのか? もちろん非常に気になりますので、このあともこの世界を追わせていただきます。
ちなみに、こういう世界観も好きです……!
ヤンデレというものに挑戦したかったのですが……難しいですね。どうしても明るくなってしまう……お忙しいところありがとうございます!無理なさらず、のんびりと読んで下さい。
遅くなりましたが、本日よりこちらの世界にお邪魔させていただきます。
殺した。二段階策を立てて、確かに死んだはず。なのに、いる。
これはどういうことなのか……。
本日は明日が検査がある都合で1のみとなっておりまして。続きは明日以降、必ず拝読しますね。
わあ、こちらにもありがとうございます!タグを追加しまして、ちょっと暗めの話になってます。相変わらず視点が安定しませんが、楽しんでいただけると嬉しいです。