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呪いの一種

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茶会を、早々に終えた後、私はジャンヌをつれて自室に戻る。執務室だと邪魔が入りそうだから、自室だ。

頭が割れるように痛い。精神干渉に近い何らかの術か、呪いかを受けた時のように、頭が痛くてたまらない。

「ジャンヌ、大丈夫?」
自分の体を支えてくれているが、ジャンヌの方が心配だ。

顔が強ばっているが、これは直接の被害ではなくて、自分の予測に血の気がなくなっているだけだろう。

抱きしめて、背中をさすると、ジャンヌも私に抱きつく力が強くなる。

「これだけで済んだのを感謝するべきか。」

あの場から離れるとだんだんと、頭の痛みが和らいでいく。抱きしめたまま、ジャンヌが落ち着きを取り戻した頃に、影を呼ぶ。

「あのソフィア・デーツがどちらか調べろ。かけた側かかけられた側か。」

かけられた側だと、かけた人物がこの争いの黒幕だと思われる。彼女には何らかの術なり呪いなり、がかけられている。

まさか、自分でかけることもあるのだろうか。この呪いか何かは、多分感染するものだ。病原菌ではないにしろ、かけられた先の人の周りにも発動する。面倒極まりないものだ。

もしかしたら、隣国の多くの人は感染しているのではないだろうか。ある種の洗脳に近い行為。

彼女を連れてくる行為は、王女の独断だったのであれば、王女はすでに精神を干渉されているのでは?

では、王女の隣にいたダミアンは?クロエは?

隣国だけならまだしも、こちらにまで影響がある力ならば、国際問題として簡単にコトを起こすことができる。

ただ落とし所を間違えてはいけない。

追われているにしては、余裕のある態度の公爵令嬢。違和感を覚えるのは正常な反応だと思う。

そして、どうして私達は気づけたのだろう。
不思議に思った私達の反応を黙ってみていた人物がいる。

「お前たちは、俺も含め、抗体があるからだ。あの手の呪いは、昔から私達の周りにかけられていた。身に覚えはないか。」

弱っている今会いたくない男がいた。

「まさか、かけられていたのか。」

「ああ、かけられたのは多分俺だ。お前達はそれにうつされただけだ。」

ウィルヘルムに似た男は、当然のような顔で話をした。初耳ではあったが、あの王妃ならやりかねない。

呪いは、代々隣国の公爵家に伝わるものだそうで、本来ならかけられた人が生きていくのに不自由しない程度の幸運を与えるものだったらしいのだが。

今、隣国でこの呪いを扱えるものはどれだけいるのだろう。

「根絶やしにすれば、いいか。」

私の呟きに、ウィルヘルムはただ頷き、ジャンヌは固まってしまった。
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