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身柄拘束

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王女が隣国へ戻るタイミングで、クロエとダミアンの身柄を拘束させて貰った。未だに体調の優れないクロエにはちゃんとした医師をつけた。ダミアンも人目に触れないように用意した部屋に隠れてもらう。

王女の一向に何人か紛れ込ませ、隣国に向かわせると、後は事態が動くのを待った。

多くの者たちは、王女が隣国へ行くのに、ダミアンとクロエが共に帰ったと思っていた。私達も勿論、そのように振る舞い、残された公爵令嬢にもダミアンとクロエを会わせなかった。


クロエは、運び込まれてからは苦しそうにしていたが、医師ではなく、別のところに見せたところ、意識を取り戻した。

クロエは、ただの魔力酔いではなかった。強烈な呪いをかけられたことにより中毒になっていたのだった。

隣国の王妃が、刺客に襲われた話はすぐに伝わってきた。私達にはそれが真実でないことはすぐにわかった。ありえないのだ。王女には洗脳魔法対策に魔道具を渡しているし、隣国の王妃を害そうとするものは、この国にはいない。

一人を除いて。


ソフィア・デーツ公爵令嬢は、執務室に入るなり、倒れ込んだ。控えている護衛が、その体を支えて、ソファに座らせる。

「王妃がまた襲われたそうです。」

彼女は青白い顔で、小刻みに震えている。ジャンヌは心配そうにしているが、呪いのこともあって、側には寄っていない。

「あの子が大変なことを……まさか、あんなこと。いくら命令でも限度がありますでしょう?」

「と言いますと?」

「クロエです。彼女が昔から側妃の叔母様のいいなりだったことは私が証言できますわ。」

「ほう?クロエ嬢が……」

「ええ、彼女は命令されたのです。彼女に罪がないとはいいませんが、彼女だって被害者なのです。本当に悪いのは命令した側妃ですわ。」

ソフィア嬢は、キラキラした瞳で演説をしていたが、私の顔を見て、不穏な空気を察知したようだ。

「あの……?」

「いえ、すみません。意外なことを仰るな、と思いまして。」

ソフィア嬢が、私の顔をはっきりと見る。

「クロエ嬢に、王妃を襲うことは無理なんですよ。今彼女はこの国で、洗脳魔法の中毒症状と闘っているのですよ。強くかけすぎたようですね。殺すおつもりだったのですよね。」

ソフィア嬢は、取り繕うこともせずに、睨みつけている。

「貴女は、命令されたわけではありませんよね。黒幕は貴女ですか?お父上ですか?それとも……兄ですか?」

「貴方、性格悪いって言われるでしょ。」

「王子ですから、ね。性格が良いだけなら生きていけません。」
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