王子は真実の愛に目覚めたそうです

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番外編 クロエとウィルヘルム

平民ウィルの困り事

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「王妃様生きてるの?お会いしたい!」

勝手に会いたく無いだろうと、言うのを躊躇っていた俺に、本当に嬉しそうに笑って、クロエはそう言った。

「今は仕事中だから、夜ならいるけど。来るか?」
「うん。行く!あ、できたら兄も一緒でいい?」
「ああ、あいつにも挨拶しないとな。」

そう言って、じっと見ていると、クロエの動きが止まる。

「何?変な顔して。」
「いや、その服。平民用の服なんて、持ってたんだな。」

貴族用のドレスと違って、動き易い服ではあるが、クロエ自身の魅力をうまく引き出している。

「まさか。持ってないから買ったのよ。平民に大人気の店をジャンヌ様が調べて下さったの。侍女に聞いたりして。」

来る時に着ていたドレスやら装飾品を売ったら結構な金額になった、とホクホクしている。貴族から平民になる辛さは一度経験しているため、大変さはわかっているつもりだが彼女はそんなこと気にしていなかったばかりか、楽しんでいることに感心していた。

信じていた者に、裏切られると言うのは、したことも、されたこともあるので、辛さは知っているつもりだ。

本当に、あの最初の、自分の裏切りだけで終わらなかったことに今は感謝している。ジャンヌを裏切り、母を裏切り、陛下と、弟を裏切って、それだけで終わらなくて良かった。

あのまま、何もかも上手くいっていたのなら、私は何も学べなかっただろう。今でもクズ王子のままでしかなかっただろう。

今はまだ、あの頃との違いがわからなかったとしても、人に裏切られた経験は今の自分を形作るのに、必要な出来事だった。

ダミアンが戻ってくるまで、手持ち無沙汰で、始めは喋りながら待とうと思っていたのに、二人でいると、何を話したら良いかわからなくなってしまった。

「何か困ってることあれば、手伝うぞ。」
「うーん、特にないかなぁ。男手は間に合ってるし。」

うん、話が終わった。


「……可愛いな。その服。似合ってる。」
「……ありがとう。ジャンヌ様のおかげよ。センスの良い服ばかり置いてあったし。」

「そうか。」

話、終わる。

「……好きな食べ物はあるか?」
「魚料理かな。」

「……そうか。」

……

暫し、沈黙が訪れる。


「ねえ、私達って話下手すぎない?全部二言で終わってる。もう、元王子でしょ。しっかりしなさいよ。」


「すまん。毎回夜会では、俺ではなく、ジャンヌが話してくれていたから。特に俺は何も話さなくて良かったんだ。」

本当に自分で思い出す限り、クズ王子の記憶しかないな。

隣に座るクロエに、ジャンヌの綺麗な横顔の面影が重なる。

似ても似つかない二人。性格も全く違う二人なのに、なぜ似てる気がするんだろう。




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