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番外編 ジャンヌとルーカス

ゆっくり

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「ジャンヌ、もうすぐ着くよ。」
せっかくの休みの三日間を移動ばかりにあてるのは勿体無いので、母の実家の侯爵領にある別邸に身を寄せる。

王都に近いのに、自然を堪能でき、ゆっくりできるので、幼い頃よく訪れていた。ここにジャンヌを一度ゆっくり連れていきたかった。

母方の祖父母には、話をしているが、彼らは邪魔なんて、無粋な真似はしない。

湖が近くにあり、魚釣りも体験できる。

ジャンヌは、外を見るなり、目を光らせた。

王都に住み、王妃教育に明け暮れるまでは、公爵領に引きこもっていたジャンヌは、今のように澄まして淑女然としていても、その実は、野山が大好きで走り回っていた少女と少しも変わらない。

彼女は今ですら、大人しく座って本でも読んでいそうな女性だが、幼い頃は、木に登ったり、川で泳いだり、走り回っていたときいている。

ご令嬢の中には、自然を楽しむことが、嫌いで早く王都に帰りたがったり、不満そうな態度を取る者もいた。やれ虫が苦手、やれ土で靴が汚れる、など、文句を言うのが仕事のように。

ジャンヌのように、キラキラした目で自然を堪能する女性は稀だ。

屋敷には、趣味の良い家具が最小限置いてあり、華美な装飾などない為、質素だ。それでも質のいいものしかない部屋に、ジャンヌは嬉しそうな表情を浮かべた。

「君なら、気に入ってくれるかと思って。三日間丸々遊べるよ。何がしたい?」

「そうですね。お疲れでないのなら、散歩に行きたいですわ。明日何をするか考えるためにも、何があるかわかっておきたいのです。」

「じゃあ、歩いて行くかい?それとも馬にする?割とこの中は広いからね。歩いてだったら時間がかかって全部回れないかもしれない。」

「馬がいるのですか?」

「いるよ。ジャンヌにプレゼントしたい馬がいるんだ。気に入ってくれるとうれしいのだけど。」

ここにジャンヌを連れてきたいと思った時に、用意した馬に、ジャンヌをようやく会わせてあげられる。

思ったとおり、ジャンヌは喜んでくれた。


「すぐに着替えます。」
急がなくていいよ、と声を掛けたけれど、多分聞こえていない。

馬に乗ることを提案した女性達がどんな様子だったか思い出し苦笑する。ジャンヌは、いつも、私には他に選択肢があったと言うけれど、それは思い込みでしかない。

第二王子の婚約者となりたい者達の興味はお金や贅沢であって、馬の世話や、自然に触れ合うことではない。

大切にしている自分の馬に触らせてあげたのに、汚い、と言った令嬢を許しはしない。

私の好みの女性は、一つに、馬を大切にしてくれる人と言う、恐ろしくハードルが低いものがあるのだが、貴族令嬢においてはそのハードルが何よりも高いのだろう。







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