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愛の結晶
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「この子を育てるように。」
リガン侯爵家に突如現れた赤ん坊は、髪の色や瞳の色が、婚約者によく似ていた。
婚約者は真っ青な顔が徐々に真っ白になっていき、赤ん坊を抱いていた男から睨みつけられた挙句、泣きそうな顔になっている。
赤ん坊を抱いていた男は婚約者ノエル・リガンを一瞥した後は、此方に向き直ると、懐から一通の書状を取り出して、エリカに手渡した。
「王太子殿下より、バセット侯爵令嬢にお渡しするようにと。ご令嬢には改めて説明と謝罪に赴きます。」
エリカはその言葉で大抵の流れを理解した。そういえば、婚約者様は、あの妃殿下に懸想していたわ、と。
王子殿下を含む高位貴族の令息に囲まれて嬉しそうにしていた元男爵令嬢は、王子殿下の婚約者を蹴落として、王子妃という地位に登り詰める。
彼女に振られて捨てられたエリカの婚約者は何食わぬ顔でエリカの元に戻り、傍目には王子殿下の側近で居続けている。
成婚時には、妊娠中ではなかった妃殿下が王子以外の男の子を身籠ったなんて、とんでもないことじゃない。
エリカはその事実に血の気が失われた。産まれた瞬間に王家の血を引いていないことがはっきりわかったからこそ、産まれたばかりの王子は、儚くなった。
次期侯爵と、王子妃の不義の子を、侯爵家が育てる。そうすれば、リガン侯爵家は王家から責められることはない。書状にはそう書いてあった。
エリカに、と渡された書状には、王命による婚約破棄を認める、と書かれておりこれによってエリカと婚約者の関係は終わった。
エリカは正直とてもホッとした。政略的な婚約だったからこそ、婚約者として色々我慢していたエリカをどういう訳か自分を愛しているのだと、一方的な勘違いをするばかりか、何やら上から目線で話してくる馬鹿な婚約者にとてもウンザリしていたからだ。
いつだったかは、覚えていないのだが、王子妃が、まだただの男爵令嬢だった頃に、彼に言われたのは、「エリカは少しぐらい彼女のように愛らしさを学ぶべきだ。」ということだった。彼女の愛らしさとやらをエリカは確かに知らない。誰に聞いても「アレは愛らしいではなく、幼い?はしたない?マナーがなっていない」というのだから、生粋の貴族令嬢のエリカには到底真似できるものではない。
公爵令嬢が殿下に同じようなことを言われた際も二人で、苦笑いを浮かべたぐらいだ。
「あの方こそ、王弟殿下を見習ってはどうかしら。」
「それは難しいのじゃないかしら。だって、ホラ。元が違うのですから。」
公爵家の後ろ盾を無くした王子は王太子ではなくなった。人柄以前に、後ろ盾がなくては、王太子になるなど考えられなかった、その程度の人。
代わりに王太子になったのは、その後ろ盾だった公爵家の嫡男デリック。
「子が産まれたからには、あの方も王子ですらなくなるから、きっとあの王子妃もその地位を降ろされるのでしょうね。」
「男爵令嬢に戻れるのか平民になるのか、後継が既にいるのなら用無しになった元婚約者様は大手を振って、彼女を迎えに行けるわね。
……これこそ、素晴らしい真実の愛ではなくて?」
リガン侯爵家に突如現れた赤ん坊は、髪の色や瞳の色が、婚約者によく似ていた。
婚約者は真っ青な顔が徐々に真っ白になっていき、赤ん坊を抱いていた男から睨みつけられた挙句、泣きそうな顔になっている。
赤ん坊を抱いていた男は婚約者ノエル・リガンを一瞥した後は、此方に向き直ると、懐から一通の書状を取り出して、エリカに手渡した。
「王太子殿下より、バセット侯爵令嬢にお渡しするようにと。ご令嬢には改めて説明と謝罪に赴きます。」
エリカはその言葉で大抵の流れを理解した。そういえば、婚約者様は、あの妃殿下に懸想していたわ、と。
王子殿下を含む高位貴族の令息に囲まれて嬉しそうにしていた元男爵令嬢は、王子殿下の婚約者を蹴落として、王子妃という地位に登り詰める。
彼女に振られて捨てられたエリカの婚約者は何食わぬ顔でエリカの元に戻り、傍目には王子殿下の側近で居続けている。
成婚時には、妊娠中ではなかった妃殿下が王子以外の男の子を身籠ったなんて、とんでもないことじゃない。
エリカはその事実に血の気が失われた。産まれた瞬間に王家の血を引いていないことがはっきりわかったからこそ、産まれたばかりの王子は、儚くなった。
次期侯爵と、王子妃の不義の子を、侯爵家が育てる。そうすれば、リガン侯爵家は王家から責められることはない。書状にはそう書いてあった。
エリカに、と渡された書状には、王命による婚約破棄を認める、と書かれておりこれによってエリカと婚約者の関係は終わった。
エリカは正直とてもホッとした。政略的な婚約だったからこそ、婚約者として色々我慢していたエリカをどういう訳か自分を愛しているのだと、一方的な勘違いをするばかりか、何やら上から目線で話してくる馬鹿な婚約者にとてもウンザリしていたからだ。
いつだったかは、覚えていないのだが、王子妃が、まだただの男爵令嬢だった頃に、彼に言われたのは、「エリカは少しぐらい彼女のように愛らしさを学ぶべきだ。」ということだった。彼女の愛らしさとやらをエリカは確かに知らない。誰に聞いても「アレは愛らしいではなく、幼い?はしたない?マナーがなっていない」というのだから、生粋の貴族令嬢のエリカには到底真似できるものではない。
公爵令嬢が殿下に同じようなことを言われた際も二人で、苦笑いを浮かべたぐらいだ。
「あの方こそ、王弟殿下を見習ってはどうかしら。」
「それは難しいのじゃないかしら。だって、ホラ。元が違うのですから。」
公爵家の後ろ盾を無くした王子は王太子ではなくなった。人柄以前に、後ろ盾がなくては、王太子になるなど考えられなかった、その程度の人。
代わりに王太子になったのは、その後ろ盾だった公爵家の嫡男デリック。
「子が産まれたからには、あの方も王子ですらなくなるから、きっとあの王子妃もその地位を降ろされるのでしょうね。」
「男爵令嬢に戻れるのか平民になるのか、後継が既にいるのなら用無しになった元婚約者様は大手を振って、彼女を迎えに行けるわね。
……これこそ、素晴らしい真実の愛ではなくて?」
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