ファーストキスは草の味

mios

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幸せならそれで良い

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第二王子は、卒業を待たずに自称側近達と一緒に母方の実家へ帰らされた。隣国の属国となっているその国は、荒れていて、身なりの良い者達を見れば身包み剥がされて売り飛ばされる危険な場所になっている。

キラキラしい見た目を最大限に飾り付けた道中はさぞ刺激的なものとなったことだろう。

「まあ、これで王女殿下が立太子できる状況になったわね。」

リカルドの兄ヒューゴは、王女殿下を目に入れても痛くないほどに愛している。

リカルドはその様子を笑ってみていたが、自分も最近兄に似てきているらしい。

「生徒会室でも、よくイチャイチャしてたもんな。」

共に激務をこなした仲間は、仕事の合間にいちゃつく二人をよく見ていた。

「二人のすごいところは、いちゃつきながらも、手が止まらないところだね。書類を捌くスピードは落ちなかった。」

「そうそう。これも薬草汁を飲んだおかげね。」


実際、ファーストキスが草の味だったスザンヌとリカルドは、セカンドもサードもそれ以降もキスは草の味がした。

これって、薬草汁を飲んだ後にキスしたくなるってこと?

そんなばかな。


皆が卒業して、一番残念がられたのは、薬草汁を飲めなくなることだった。

「いっそのこと、売り出しちゃうとか?」
「キスしたくなる草の味、とか?」
「ネーミングセンスないな。」

好き勝手言っている仲間達との関係は多分今後も続いていく。

「辛いことがあれば、多分薬草汁を思い出すんだろうな。」

薬草汁を改良したものを売り出す計画はその後、王女殿下に迫られた時にふと話してしまい、有言実行しなければならなくなった。

「これで、皆も安心して激務に入れるわね。」
にっこりと笑う王女殿下を見て、少しだけ鳥肌が立ったのは内緒だ。

だが、実際王女殿下の治世には、激務が随分と減った。忙しいことはあっても、何人かの人に仕事が集中することはなくなったからだ。

ヒューゴは王配として女王陛下を支えた。リカルドとスザンヌは卒業後すぐに結婚した。

スザンヌの薬草知識を真っ先に誉めてくれたのは前王姉の公爵夫人だった。

「つくづく、あのアホに取られなくてよかったわ。可愛い娘を連れてきてくれて、リカルドには感謝しなければいけないわね。」

公爵夫人のいうあのアホとは元第一王子のミハイルのことだ。因みに第二王子のことは「あのサル」と呼んでいた。ミハイルは結婚までは貞操を守っていたが、アスランは、サルみたく盛っていたから、ということらしい。

驚いたことに、公爵夫人も薬草には詳しいらしく新しい化粧品の開発にスザンヌを引き入れてくれた。

「こういう息子の嫁と共同作業ってやってみたかったのよ。」

夫人の笑顔はとても可愛く年齢不詳である。広告塔として、これ以上の逸材はいない。

スザンヌは知識を総動員して頑張った。リカルドが拗ねるぐらいには夫人といたスザンヌにリカルドはやたらと甘やかしてくれた。

「兄の気持ちがわかったよ。」
日中は忙しくしているスザンヌの邪魔をしない代わりに夜は彼の独壇場である。

ベッドに柔らかく押し倒され、リカルドの愛を思う存分味わった後、スザンヌは限界とばかりに、幸せな気持ちで意識を手放した。


終わり
読んでいただきありがとうございました。      mios
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