見えるものしか見ないから

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真実①

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伯爵令嬢の死について思うことなどは、侍女にはなかった。彼女が過労死したことだって、あの程度で音を上げることに疑問を感じたぐらいだ。だってシンシア嬢の方が遥かにたくさんのことをこなしていたし、アリス嬢はそのシンシア嬢を差し置いて、その立場に成り代わろうというのだから、大変なのは覚悟の上だと思っていた。

ここだけの話、ミカエル第二王子殿下は陛下の子ではない。王妃の不貞によって生まれた子だ。陛下の血が入っていないのは怠惰な性格や、能力を見てもよくわかる。王妃様のお気に入りの伯爵は、シューデルト家を継いでいて、妻との間に一男一女を設けていた。

ミカエル様の好みは王妃と同じらしい。異母妹のアリスと結婚をさせられないと王妃は何とかして、シンシア嬢に婚約を元に戻して貰おうと画策していた。


間近で見ていてわかることは、シンシア嬢はミカエル様を毛嫌いしていることぐらい。自分の人生を諦めて、国の為に働くことで、何とか喜びを得ようと頑張っていた。それは侍女も同じだ。アリス嬢の為に働く気などは更々無くとも、これがシンシア嬢の幸せに繋がるのであれば、嫌がるアリス嬢に発破をかけてその地位に留まらせることぐらいは出来る。

王妃によってアリスにつけられた侍女であるが、本当の雇用主は陛下であり、王太子殿下である。

王妃は陛下を欺いているつもりだが、最初から企みはバレている。因みに王妃のお気に入りの伯爵も、王妃を愛している訳ではない。あまりにもしつこく執着してくる為に、妻子を守る為に従ったフリをしただけだ。

勿論ミカエル様の実父などではない。王妃を欺いて、陛下の指示で当てがわれたのは、伯爵によく似た別人だった。彼の正体は詳しくは知らない。そこまでは侍女には知らされなかった。

一説には詐欺事件を起こした貴族の末端で、陛下と司法取引をしたらしい。王妃の相手をしてくれるなら、監視付きで平民として暮らしても良いと。


監視付きと言うからには、罪などは犯せない。それでも、彼は従った。騙された王妃を哀れには思うが、そもそも自分には関係のないことだと、彼は目を瞑ることにしたらしい。



侍女は、アリス嬢が居なくなって王妃付きに戻らずに王太子付きに抜擢された。王妃は未だに侍女の主人でいるつもりだから、スパイとしての彼女の働きを期待しているが、第二王子ミカエルが失脚したのだから、もう既に詰んでいる。



伯爵家はアリス嬢の死後、同盟国に移り住んだ。娘を殺されてまで従う気はないのだろうし、それが最初からの取り決めだったのだ。

残るは王妃の死のタイミングだけ。彼女は夢を見ているままに、儚くなる予定だ。

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