美少年は男嫌い

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下心(光)

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隼人さんに、キスをした。
隼人さんは驚いて、動きをとめて、困った顔をしたあと、ほんの少し僕の後ろに目をむけた。途端に、苦しそうな顔をした。

隼人さんに甘えていた。
夢から覚めた時の心配そうな顔をみて、心底嬉しかった。
僕を心配する人なんていなかった。
今まで、特に男の人は。

何をしても許される、と思ったわけではない。でも、してしまった。甘えてしまった。しなきゃよかった。

隼人さんの困った顔をみて、後悔したんじゃない。後悔したのはそのあと、僕の後ろを見ながら苦しそうな顔をした時。

隼人さんは、僕じゃない誰かを見てた。あの部屋で、僕のように隼人さんに迫った人がいたのかな。
隼人さんの事を何もしらない自分は想像するしかないんだけど。

隼人さんにあんな顔をさせたいわけじゃなかった。僕は調子にのっていたんだ。
男の人に触られて気持ち悪くならなかったのは隼人さんだけ。

触られた、と言っても不可抗力だしね。触りたくて触ったわけじゃないからなのかな。

隼人さんは僕を追い出さないだろう。僕はここを追い出されたら、本当に困る。
あの人はなんだかんだで、面倒見が良いから、泊めてくれるはずだ。

そう思いたって、僕は自分が酷く汚れたように感じた。今まで軽蔑し、一線をひいて身を潜めていた所に自ら飛び込んでしまった。

隼人さんは優しい。僕を見捨てない。けれど、もう純粋に僕だけを見てくれない気がした。

あの誰かとの思い出を映す器としてしか、僕を見てくれないんじゃないか、と。

下心のある人の顔を何度も見た。いつも、吐き気を催すほどの汚らしさを宿していた。僕は、隼人さんに、そんな汚らしくみえていないといいな、と思う。

隼人さんは決して裏切らない。
常に一歩引いて、踏み込まないからだ。
隼人さんをずるいと思った。
そして、そう思った自分に吐き気がした。

ついに自分で自分に吐き気を起こさせるようになるとは。

ずるくても、何でも、この人の側にしか居場所がない。汚いと言われようが、嫌がられようが、軽蔑されようが、罵られようが、隼人さんを手放すことはできない。彼は僕が生きていく上での酸素見たいな人だから。

本当の事を言うと、せっかくの味方を南にとられたくない、と思った。
あの時から、邪な気持ちを隼人さんに抱いていた。

襲われるのが嫌だって言ったのは、本当なのに、同じ事を僕は隼人さんにしたんだ。

隼人さんに嫌われたくない。
誰かの代わりでも側にいてくれるならいいかもしれない。僕はその誰かを知らないし、隼人さんも優しいのなら、いいよね。僕じゃなくても。

僕は高校生になって初めてズルイ生き方にのまれた。


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