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ある日、婚約は失われた
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男爵は陛下から呼ばれて王城へ向かっていた。王城勤めではない一介の男爵にとって、王家主催の外せない夜会以外に王城に赴くことは初めての体験である。
男爵はあのミリアの父にしては、楽観的に物事を考える性格ではなかったので、自分がわざわざ呼び出されたことに対して疑心暗鬼になっていた。
男爵家は所謂ほどほどの利益しか得ていない。出る杭は打たれるし、それが男爵という位しか持たない自分自身の身には余る。それぐらいならほどほどを目指しつつ落ちぶれないぐらいの慎ましい生活を、と頑張って来た。
もしや何かで不手際があって、何らかの賠償を申し伝えられるのかも。と漠然と考えてはみるが、わからない。悶々と考えながら馬車を飛ばして向かってみれば、陛下からは第二王子を受け入れる気はあるか、との打診であった。
男爵は第二王子の為人を詳しくは知らないでいた。だが、まさかの娘の恋人であると知れば、何となく陛下の言わんとしていることも、何があったのかも、全て理解したのである。
以降の説明は男爵の予想を裏切るものではなかった。
男爵としては娘には物の道理のわかる少し年上の男と縁を繋げようと思っていた。娘はしっかりしているように見えて見通しの甘いところがあり、我儘で幼稚だ。同い年や年下の男性ではうまく操縦することは難しいだろう、と。最初は熱に浮かされていてもずっとは疲れる。そんな娘をかわいいと思うのは、自分ぐらいの年上の男性だと。
だが、娘は手を出してはいけない人に手を出してしまった。興味本位か好奇心かはたまた本気かはこの際どうでも良い。兎に角、娘は責任をとらねばならない。
男爵には受ける以外の選択肢はない。娘の為を思うなら修道院へ入れるなり、やりようはあるのだろうが。男爵は頭の中で試算する。第二王子一人ぐらいならどうにか養っていけるほどの力は男爵家にはあるはずだ。陛下は、続いて男爵に第二王子の為に教育係まで付けてくれるという。男爵の負担を考えてくれている気遣いは有り難く、利用させてもらうことにする。
ついで第二王子が婿入りするにあたり、爵位が上がることはないことも説明された。この婚約自体が二人の罰なのだから、当然だ。寧ろ男爵にとっては温情に近い待遇に頭が下がる。
「いや、これは公爵家からの提案でな。」
苦笑いを浮かべた陛下はチラチラと部屋の隅に視線をやる。そこにはニコニコと笑みを浮かべる男性がいた。
「陛下。簡単にネタバラシしてはつまらないでしょう。娘に聞いた話ではそれはそれは、熱烈に二人は愛し合っていたようですからな。男爵が聡い方で良かった。奪略者が出世するのは道理が通りませんから。」
ニコニコしているのに圧がすごい。男爵はその言葉に目の前が真っ暗になった。
男爵はあのミリアの父にしては、楽観的に物事を考える性格ではなかったので、自分がわざわざ呼び出されたことに対して疑心暗鬼になっていた。
男爵家は所謂ほどほどの利益しか得ていない。出る杭は打たれるし、それが男爵という位しか持たない自分自身の身には余る。それぐらいならほどほどを目指しつつ落ちぶれないぐらいの慎ましい生活を、と頑張って来た。
もしや何かで不手際があって、何らかの賠償を申し伝えられるのかも。と漠然と考えてはみるが、わからない。悶々と考えながら馬車を飛ばして向かってみれば、陛下からは第二王子を受け入れる気はあるか、との打診であった。
男爵は第二王子の為人を詳しくは知らないでいた。だが、まさかの娘の恋人であると知れば、何となく陛下の言わんとしていることも、何があったのかも、全て理解したのである。
以降の説明は男爵の予想を裏切るものではなかった。
男爵としては娘には物の道理のわかる少し年上の男と縁を繋げようと思っていた。娘はしっかりしているように見えて見通しの甘いところがあり、我儘で幼稚だ。同い年や年下の男性ではうまく操縦することは難しいだろう、と。最初は熱に浮かされていてもずっとは疲れる。そんな娘をかわいいと思うのは、自分ぐらいの年上の男性だと。
だが、娘は手を出してはいけない人に手を出してしまった。興味本位か好奇心かはたまた本気かはこの際どうでも良い。兎に角、娘は責任をとらねばならない。
男爵には受ける以外の選択肢はない。娘の為を思うなら修道院へ入れるなり、やりようはあるのだろうが。男爵は頭の中で試算する。第二王子一人ぐらいならどうにか養っていけるほどの力は男爵家にはあるはずだ。陛下は、続いて男爵に第二王子の為に教育係まで付けてくれるという。男爵の負担を考えてくれている気遣いは有り難く、利用させてもらうことにする。
ついで第二王子が婿入りするにあたり、爵位が上がることはないことも説明された。この婚約自体が二人の罰なのだから、当然だ。寧ろ男爵にとっては温情に近い待遇に頭が下がる。
「いや、これは公爵家からの提案でな。」
苦笑いを浮かべた陛下はチラチラと部屋の隅に視線をやる。そこにはニコニコと笑みを浮かべる男性がいた。
「陛下。簡単にネタバラシしてはつまらないでしょう。娘に聞いた話ではそれはそれは、熱烈に二人は愛し合っていたようですからな。男爵が聡い方で良かった。奪略者が出世するのは道理が通りませんから。」
ニコニコしているのに圧がすごい。男爵はその言葉に目の前が真っ暗になった。
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