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ある日、王子は地位を奪われた
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第二王子の乗った馬車がバラバラになり、車外に本人が投げ出され怪我をした件はすぐさま王家の知るところになった。王妃は頭を抱え、陛下は決意した。
公爵家が呼ばれると、エレーナとリカルドの婚約はあっさりと解消となった。
陛下としてはなけなしの親心で婚約だけはそのままを願ったのだが、事情を知る公爵がそれを断ったのだ。
「陛下、我が家をそんなに憎んでいらっしゃるのですか?私共は、これまで身を賭して王家に忠誠を誓ってまいりました。裁定が為された後の不用品を押し付けられることを公爵家に委ねるなど、その忠誠は不要だと、そう思って宜しいのですか?」
第二王子リカルドを不用品と呼ぶ不敬なれど、陛下はそんなことを気にしてはいられない。公爵家を敵に回す気などはない。ただエレーナが少しの情を持ち、リカルドを好いてくれていたら我が子の命が助かるなら、そう思っただけである。
「いや、忘れてくれ。解消だが、慰謝料も勿論つける。今まで愚息の面倒を押し付けて悪かった。」
公爵と陛下は若かりし頃からの友人である。公爵がねちこいのも知っているし、怒らせたら怖いのも知っている。公爵は基本笑いながら怒るのだ。それが尚更恐ろしさを掻き立てる。
リカルドは誰に似たんだか……と考えて多分自分だろうなぁ、と自省する。陛下が裁定に合格したのは賢い妻とこの友人のおかげであることは感謝しているのだ。
「時に陛下、我が娘エレーナのことなのですが……」
陛下は話を聞いて飛び上がった。エレーナ嬢の元に何度か現れた白い男性の話にも驚いたのだが、裁定者が持っていたボタンがまさかの「世界を滅ぼすボタン」だったとは。陛下は気が遠くなり、頭が真っ白になった。
王族の行いが正しいかを判断する裁定者は代々被裁定者の周りに現れる。今回ならリカルドの周りだから、エレーナが選ばれるのは必然。とはいえリカルドの周りに彼女いがいのまともな者がいたならそちらに裁定者が現れる場合もある。
彼らは愚かさに応じて、ボタンを押すように言われる。「国を傾けるボタン」「制度を壊すボタン」「誰かをぶっ飛ばすボタン」などなど。
その中でも「世界を滅ぼすボタン」というのは選ばれた人がもう限界であることを示すボタンであった。
愚かな人は周りに許されて支えられている限り許される。だが、周りにそっぽを向かれてはどうしようもならず、ただの塵に成り下がる。
リカルドは自分自身の行いによって婚約者に捨てられる寸前だったのだ。数々の荒療治で我に帰れたのならまだ助かったのだが、そうはならなかった。愚かな考えのまま愚かな行為を繰り返したのだ。
リカルドには新たな周りを見つけてやらなければならない。甘いと言われるかもしれないが、それこそが親心であると陛下は決意した。
公爵家が呼ばれると、エレーナとリカルドの婚約はあっさりと解消となった。
陛下としてはなけなしの親心で婚約だけはそのままを願ったのだが、事情を知る公爵がそれを断ったのだ。
「陛下、我が家をそんなに憎んでいらっしゃるのですか?私共は、これまで身を賭して王家に忠誠を誓ってまいりました。裁定が為された後の不用品を押し付けられることを公爵家に委ねるなど、その忠誠は不要だと、そう思って宜しいのですか?」
第二王子リカルドを不用品と呼ぶ不敬なれど、陛下はそんなことを気にしてはいられない。公爵家を敵に回す気などはない。ただエレーナが少しの情を持ち、リカルドを好いてくれていたら我が子の命が助かるなら、そう思っただけである。
「いや、忘れてくれ。解消だが、慰謝料も勿論つける。今まで愚息の面倒を押し付けて悪かった。」
公爵と陛下は若かりし頃からの友人である。公爵がねちこいのも知っているし、怒らせたら怖いのも知っている。公爵は基本笑いながら怒るのだ。それが尚更恐ろしさを掻き立てる。
リカルドは誰に似たんだか……と考えて多分自分だろうなぁ、と自省する。陛下が裁定に合格したのは賢い妻とこの友人のおかげであることは感謝しているのだ。
「時に陛下、我が娘エレーナのことなのですが……」
陛下は話を聞いて飛び上がった。エレーナ嬢の元に何度か現れた白い男性の話にも驚いたのだが、裁定者が持っていたボタンがまさかの「世界を滅ぼすボタン」だったとは。陛下は気が遠くなり、頭が真っ白になった。
王族の行いが正しいかを判断する裁定者は代々被裁定者の周りに現れる。今回ならリカルドの周りだから、エレーナが選ばれるのは必然。とはいえリカルドの周りに彼女いがいのまともな者がいたならそちらに裁定者が現れる場合もある。
彼らは愚かさに応じて、ボタンを押すように言われる。「国を傾けるボタン」「制度を壊すボタン」「誰かをぶっ飛ばすボタン」などなど。
その中でも「世界を滅ぼすボタン」というのは選ばれた人がもう限界であることを示すボタンであった。
愚かな人は周りに許されて支えられている限り許される。だが、周りにそっぽを向かれてはどうしようもならず、ただの塵に成り下がる。
リカルドは自分自身の行いによって婚約者に捨てられる寸前だったのだ。数々の荒療治で我に帰れたのならまだ助かったのだが、そうはならなかった。愚かな考えのまま愚かな行為を繰り返したのだ。
リカルドには新たな周りを見つけてやらなければならない。甘いと言われるかもしれないが、それこそが親心であると陛下は決意した。
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