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ある日、馬車がバラバラになった

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第二王子リカルドは意外なところにいた。勉強嫌いなリカルドは初めて足を踏み入れたと言っても過言ではない。その証拠にすれ違う人が皆驚愕の目で此方を向いては立ち止まり頭を下げてくる。

リカルドは昔ほどこの頭を下げられる行為が当然だとは思えなくなっていた。公爵家に婿入りする自分には今しかされない、期間限定の地位。公爵家に婿入りとは言っても、公爵になる訳ではない。自分とエレーナの子が公爵になる、その下準備の為種馬となるのだ。

リカルドは自分が取るに足らない人間であると薄々勘付いている。それは最近目の前で起こっている数々の現象を見てもよくわかる。

勉強嫌いなリカルドでも、聞いたことがある。昔愚かな行いを改めなかった王子が臣下に滅ぼされたことを。

公爵家に入りたい人間はリカルドだけではなくたくさんいる。政略結婚という名目で無理矢理了承させておいて、今不義理を働いているのはひとえにリカルドが今はまだ王子であるからだ。

だが、自分の地位はとても危うい。何故かというと、ダリオがいなくなったあたりから、自分の命を狙っている存在が現れたからだ。

愚かな王子を裁定するのは、白い男性である。その為人は明確に記されていない。白い男性が然るべきタイミングで現れて、王子に鉄槌を下すのだ。白い男性は、時には世界を滅ぼすほどの威力を持って王子を止めることもあると言う。

思えば、あの薔薇園での出来事と、中庭にたどり着けないことは明らかに不自然なこととして警戒しなければならなかった。それをリカルドはミリアに溺れて何の対策もしなかったのだ。

ミリアとは学園の間だけの関係で、卒業すればただの種馬として、公爵家で役目を全うする気である。ミリアは可愛らしいが貴族令嬢としては貞操観念はなく、令嬢というよりは娼婦に近い。

彼女に溺れている自覚はあるが、結婚後エレーナを子ができるまでの期間限定だとしても抱けるのだから、ミリアなどで妥協することはなく、一線はまだ越えないでいる。あくまで口付けだけだ。

ミリアは中庭が消失した後も変わらず性を堪能している。ダリオは自らの意思だと思っているが、彼を自分の代わりに彼女に差し出したのはリカルドだ。ある意味で護衛として主人の危機に身を差し出したのだから誉めてやるべきではあるが、そのせいで一足先に不合格と裁定されてしまった。

哀れなダリオ。リカルドはそんな目に合わない為、図書館に来ているのである。

王城内にある図書館は、王城で働く者なら誰でも入れるが、それ以外は入れないという利点がある。そこにははっきりとした身分による線引きがあり、そこに異を唱えることはいくら王子でも越権行為となる。王城内にはエレーナは手続きすれば入れるがミリアは入れない。そんな風に。リカルドは今はまだ王子の為入れても公爵家に婿入りした後はちゃんと手続きをしなければ入れなくなるのだ。

調べ物は捗らなかった。今まで調べ物は誰かにやってもらってばかりだったのだ。その方が正確で間違いはなく、リカルドはただ待っていれば良かった。


ふと、エレーナの存在を思い出し、彼女なら白い男性の話も知っている、と思い当たる。リカルドは先触れも出していないのに衝動的に馬車を出して公爵家に向かう。だが、その日、馬車が公爵家に辿り着くことはなかった。リカルドは何ものかによって、とっくの昔に不合格の裁定をされていたに違いない。

王家の紋章付きの馬車が大破したのを目撃したのは一人ではなかった。そこにいたのは惨めな王子一人だけ。いつまで経っても現れない護衛。その図から、王子は投げ出されたまま、遠巻きにされていた。
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