世界が滅びるボタン←押す?

mios

文字の大きさ
5 / 7

ある日、馬車がバラバラになった

しおりを挟む
第二王子リカルドは意外なところにいた。勉強嫌いなリカルドは初めて足を踏み入れたと言っても過言ではない。その証拠にすれ違う人が皆驚愕の目で此方を向いては立ち止まり頭を下げてくる。

リカルドは昔ほどこの頭を下げられる行為が当然だとは思えなくなっていた。公爵家に婿入りする自分には今しかされない、期間限定の地位。公爵家に婿入りとは言っても、公爵になる訳ではない。自分とエレーナの子が公爵になる、その下準備の為種馬となるのだ。

リカルドは自分が取るに足らない人間であると薄々勘付いている。それは最近目の前で起こっている数々の現象を見てもよくわかる。

勉強嫌いなリカルドでも、聞いたことがある。昔愚かな行いを改めなかった王子が臣下に滅ぼされたことを。

公爵家に入りたい人間はリカルドだけではなくたくさんいる。政略結婚という名目で無理矢理了承させておいて、今不義理を働いているのはひとえにリカルドが今はまだ王子であるからだ。

だが、自分の地位はとても危うい。何故かというと、ダリオがいなくなったあたりから、自分の命を狙っている存在が現れたからだ。

愚かな王子を裁定するのは、白い男性である。その為人は明確に記されていない。白い男性が然るべきタイミングで現れて、王子に鉄槌を下すのだ。白い男性は、時には世界を滅ぼすほどの威力を持って王子を止めることもあると言う。

思えば、あの薔薇園での出来事と、中庭にたどり着けないことは明らかに不自然なこととして警戒しなければならなかった。それをリカルドはミリアに溺れて何の対策もしなかったのだ。

ミリアとは学園の間だけの関係で、卒業すればただの種馬として、公爵家で役目を全うする気である。ミリアは可愛らしいが貴族令嬢としては貞操観念はなく、令嬢というよりは娼婦に近い。

彼女に溺れている自覚はあるが、結婚後エレーナを子ができるまでの期間限定だとしても抱けるのだから、ミリアなどで妥協することはなく、一線はまだ越えないでいる。あくまで口付けだけだ。

ミリアは中庭が消失した後も変わらず性を堪能している。ダリオは自らの意思だと思っているが、彼を自分の代わりに彼女に差し出したのはリカルドだ。ある意味で護衛として主人の危機に身を差し出したのだから誉めてやるべきではあるが、そのせいで一足先に不合格と裁定されてしまった。

哀れなダリオ。リカルドはそんな目に合わない為、図書館に来ているのである。

王城内にある図書館は、王城で働く者なら誰でも入れるが、それ以外は入れないという利点がある。そこにははっきりとした身分による線引きがあり、そこに異を唱えることはいくら王子でも越権行為となる。王城内にはエレーナは手続きすれば入れるがミリアはは入れない。そんな風に。リカルドは今はまだ王子の為入れても公爵家に婿入りした後はちゃんと手続きをしなければ入れなくなるのだ。

調べ物は捗らなかった。今まで調べ物は誰かにやってもらってばかりだったのだ。その方が正確で間違いはなく、リカルドはただ待っていれば良かった。


ふと、エレーナの存在を思い出し、彼女なら白い男性の話も知っている、と思い当たる。リカルドは先触れも出していないのに衝動的に馬車を出して公爵家に向かう。だが、その日、馬車が公爵家に辿り着くことはなかった。リカルドは何ものかによって、とっくの昔に不合格の裁定をされていたに違いない。

王家の紋章付きの馬車が大破したのを目撃したのは一人ではなかった。そこにいたのは惨めな王子一人だけ。いつまで経っても現れない護衛。その図から、王子は投げ出されたまま、遠巻きにされていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最後のスチルを完成させたら、詰んだんですけど

mios
恋愛
「これでスチルコンプリートだね?」 愛しのジークフリート殿下に微笑まれ、顔色を変えたヒロイン、モニカ。 「え?スチル?え?」 「今日この日この瞬間が最後のスチルなのだろう?ヒロインとしての感想はいかがかな?」 6話完結+番外編1話

【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。

BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。 何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」 何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。

【完結】婚約者とのお茶の時に交換条件。「 飲んでみて?」

BBやっこ
恋愛
婚約者との交流といえば、お茶の時間。客間であっていたけど「飽きた」という言葉で、しょうがなくテラスにいる。毒物にできる植物もあるのに危機感がないのか、護衛を信用しているのかわからない婚約者。 王位継承権を持つ、一応王子だ。継承一位でもなければこの平和な国で、王になる事もない。はっきり言って微妙。その男とお茶の時間は妙な沈黙が続く。そして事件は起きた。 「起こしたの間違いでしょう?お嬢様。」

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

ほーみ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。

BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。 男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。 いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。 私はドレスですが、同級生の平民でした。 困ります。

【完結】“自称この家の後継者“がうちに来たので、遊んでやりました。

BBやっこ
恋愛
突然乗り込んできた、男。いえ、子供ね。 キンキラキンの服は、舞台に初めて上がったようだ。「初めまして、貴女の弟です。」と言い出した。 まるで舞台の上で、喜劇が始まるかのような笑顔で。 私の家で何をするつもりなのかしら?まあ遊んであげましょうか。私は執事に視線で伝えた。

悪夢がやっと覚めた

下菊みこと
恋愛
毎晩見る悪夢に、精神を本気で病んでしまって逃げることを選んだお嬢様のお話。 最後はハッピーエンド、ご都合主義のSS。 主人公がいわゆるドアマット系ヒロイン。とても可哀想。 主人公の周りは婚約者以外総じてゴミクズ。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】私の代わりに。〜お人形を作ってあげる事にしました。婚約者もこの子が良いでしょう?〜

BBやっこ
恋愛
黙っていろという婚約者 おとなしい娘、言うことを聞く、言われたまま動く人形が欲しい両親。 友人と思っていた令嬢達は、「貴女の後ろにいる方々の力が欲しいだけ」と私の存在を見ることはなかった。 私の勘違いだったのね。もうおとなしくしていられない。側にも居たくないから。 なら、お人形でも良いでしょう?私の魔力を注いで創ったお人形は、貴方達の望むよに動くわ。

処理中です...