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ある日、庭園が水浸しになった
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最近流行りの薔薇園は、密かに恋人同士のデートスポットとして令嬢達に人気である。今上演中の歌劇の舞台にもなった薔薇園に連日人が押しかけているが、当然ながら貴族と平民は同じ場所にはおらず、貴族だけが案内される場所と、平民が見て回る場所と、見事に区切られていた。
薔薇園には行ったことはないのに、何故かエレーナの夢の中では鮮明に薔薇が咲き誇っていた。
エレーナはこの世界が夢だと理解している。何故って、あのいつもの白い男性がボタンを持って追いかけて来たからだ。
彼は無言で世界が滅びるボタンをしきりに押させようとするが、エレーナは頑として断り続ける。
自分の婚約者とその恋人だけが周りに迷惑をかけない範囲で滅びれば良い。そこに世界などは関係ない。
男性にそう伝えたいのだが、彼とは意思疎通ができないようで、ボタンをどうにか躱すぐらいしか対抗手段はない。
彼は首を傾げて、なら、とまた別のボタンを差し出してくる。
エレーナがボタンの文面を読んでいると、いつもなら無音の夢の中、あの男爵令嬢の明るい声が聞こえて来た。
語尾を伸ばし気味の鼻につく声。幼子でももう少しハキハキと喋るのに。リカルドは彼女に密着されてすっかり鼻の下が伸びている。貸切なのだろうか。他に人は見当たらない。まあ、あれでも一応王族なのだから、当たり前だ、と思いきや、まさにその時、彼らの背後から怪しい人影が躍り出る。王家の影ならばエレーナもなんとなくわかるのだが、多分そうではない。エレーナはすかさずボタンを押した。
スプリンクラーが急に誤作動したせいでリカルドに怪我はなかった。だが、水浸しになったせいで足を取られたミリア嬢が派手に転んでしまい、いくつかの薔薇が潰れてしまった。
リカルドとミリアは薔薇園を出禁になった。
不審者の正体はミリア嬢に便宜を図ったせいで解雇になった教師なのだそうだ。エレーナも顔見知りの教師だったが、辞めて数日で随分と落ちぶれたものだ。
ミリア嬢は転んだ際に薔薇の棘で負傷したと訴えたものの、薔薇園の管理は王妃様のご実家である。希少な薔薇を潰した損害賠償を、と言われれば何も言えなくなってリカルドにまで宥められていた。
エレーナはエレーナであくまでも夢の中の話だと認識していたのに、まるでその場にいたかのような臨場感にさすがにおかしいぞ、と思い始めた。
あれが夢でないとすると、あの変な白い男性も実際にはいるってことになる。
でも、とエレーナは思う。最初はわからなかったけれど、あの顔、何処かで見たことがあるような気がする。そもそもあのボタンにはどう言う意味が?
エレーナは貴族名鑑をパラパラとめくっていく。ふと目が止まった箇所をよく読んで、漸くエレーナは思い当たったのだった。白い男性の正体に。
薔薇園には行ったことはないのに、何故かエレーナの夢の中では鮮明に薔薇が咲き誇っていた。
エレーナはこの世界が夢だと理解している。何故って、あのいつもの白い男性がボタンを持って追いかけて来たからだ。
彼は無言で世界が滅びるボタンをしきりに押させようとするが、エレーナは頑として断り続ける。
自分の婚約者とその恋人だけが周りに迷惑をかけない範囲で滅びれば良い。そこに世界などは関係ない。
男性にそう伝えたいのだが、彼とは意思疎通ができないようで、ボタンをどうにか躱すぐらいしか対抗手段はない。
彼は首を傾げて、なら、とまた別のボタンを差し出してくる。
エレーナがボタンの文面を読んでいると、いつもなら無音の夢の中、あの男爵令嬢の明るい声が聞こえて来た。
語尾を伸ばし気味の鼻につく声。幼子でももう少しハキハキと喋るのに。リカルドは彼女に密着されてすっかり鼻の下が伸びている。貸切なのだろうか。他に人は見当たらない。まあ、あれでも一応王族なのだから、当たり前だ、と思いきや、まさにその時、彼らの背後から怪しい人影が躍り出る。王家の影ならばエレーナもなんとなくわかるのだが、多分そうではない。エレーナはすかさずボタンを押した。
スプリンクラーが急に誤作動したせいでリカルドに怪我はなかった。だが、水浸しになったせいで足を取られたミリア嬢が派手に転んでしまい、いくつかの薔薇が潰れてしまった。
リカルドとミリアは薔薇園を出禁になった。
不審者の正体はミリア嬢に便宜を図ったせいで解雇になった教師なのだそうだ。エレーナも顔見知りの教師だったが、辞めて数日で随分と落ちぶれたものだ。
ミリア嬢は転んだ際に薔薇の棘で負傷したと訴えたものの、薔薇園の管理は王妃様のご実家である。希少な薔薇を潰した損害賠償を、と言われれば何も言えなくなってリカルドにまで宥められていた。
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あれが夢でないとすると、あの変な白い男性も実際にはいるってことになる。
でも、とエレーナは思う。最初はわからなかったけれど、あの顔、何処かで見たことがあるような気がする。そもそもあのボタンにはどう言う意味が?
エレーナは貴族名鑑をパラパラとめくっていく。ふと目が止まった箇所をよく読んで、漸くエレーナは思い当たったのだった。白い男性の正体に。
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