こんな小物で本当に良いのですか?

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小物呼ばわりされた第一王子

百年に一度現れるとされる聖女様。国の危機には必ず現れる、とされる聖女様。今回はアリーヤ・クルエル男爵令嬢がその聖女に選ばれた。

聖魔法を使う彼女は、れっきとした男爵令嬢なのだけれど、淑女教育は遅れがちで、全く身についていない為に、婚約者を巡るトラブルに巻き込まれている。

男性にベタベタと近づく聖女様を男性の婚約者が注意すると、聖女様は大袈裟に泣き、男性がそれを庇い、女性が激昂する。

何度も何度もループするその一連の流れに、第一王子ミカエルは呆れを通り越して退屈さえ感じていた。

聖女は所謂男好きで、第一王子にも馴れ馴れしくベタベタとひっついてくるのに、自分の護衛や側近もそれを咎めるどころか羨ましそうな顔をしている。

ミカエルは全てが終われば、彼らとはサヨナラすることになるだろうな、と思いながら彼らを見ていた。

彼女の前に立ち塞がるのは、ミカエルの婚約者、侯爵令嬢のレイラ。彼女は聖女に耳打ちする。

美しい瞳を彼女に向けながら、何故かミカエルとは目が合わない。アリーヤ嬢はいつもなら泣き喚いたり、悲劇のヒロインになりきるのに、レイラの言葉に衝撃を受けた様子で、「確かに、そうだわ。」と呟いた。

「ええ。なのに、どうして、そうなさらないのかと。彼方もきっとお待ちになられているのでは?」

聖女様はレイラの言葉に何を思ったのか一目散に走り出し、ミカエルを除く男性がその姿を追った。


「ミカエル様の護衛と側近は選び直しになりますわね。」

「元々そのつもりだったから大丈夫だ。護衛対象を置いて女性を追いかける護衛など、言語道断だ。」

アリーヤに掴まれていたせいで、甘ったるい香水の残り香が移っている上着を脱いで、レイラと手を繋ぐと、ふと気になったことを聞いてみる。

「彼女が血相変えて出ていくなんて驚いたな。なんて言ったのか教えてくれないか?今後の対策にしたいんだ。」

「今後、彼女が戻ってくることは多分ないと思いますわよ。彼女の対策よりも帝国にお詫びをする用意をされれば良いと思いますわ。」

レイラの言う通り、聖女は帰って来なかった。聖魔法の使い手が居なくなったことで少しは支障が出るかと思ったが、そんなことにはならなかった。

百年前とは違い、今の国は平和で、訓練を受けた騎士や、魔法師達が国を守っているし、聖魔法はなくとも、治癒魔法の使い手は増えていて、聖女がいなくとも、皆立派に機能していた。

聖女様は帝国に向かったそうだが、その後の足取りは掴めなかった。一緒に国境を越えた男性達が夢から醒めたように我が国に帰って来て、不思議なことを口にしたのを皮切りに、聖女について見直しが検討された。

彼らは「魅了魔法」を、かけられたとか何とか話していたが、我が国ではとっくの昔に廃れたそれが本当にかけられていたのかは、誰にもわからない。

それこそ、かけられている現場に、帝国の皇太子のような人が居合わせないことには。

「確か帝国の皇太子様は、全ての魔法を無効化するのでしたわね。」

「ああ、しかも痕跡も辿れるから、言い逃れは出来ない。」

「聖女様がお勉強嫌いで助かりました。」

久しぶりにみるレイラの微笑みにミカエルは幸せな気分になる。結局、レイラが聖女様に伝えた言葉は教えてもらえなかったが、ミカエルは漸く平穏を手に入れたことに夢中で、言葉などどうでも良いと思っていた。



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