友人は自力で選びますので

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婚約者からのお願い

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「君に頼みがあるんだ。」
いつもそっけない婚約者からの突然の頼みに、嫌な予感を覚えるのは何もミシェルに限ったことではない。

月に一度、最近では事前にキャンセルしてくる婚約者とはいえ、愛情など元から薄い相手に、会話すらままならない仲でしかない相手に、「頼み」など、面倒でない筈がない。

お断りします、と言うか迷った結果、話だけは聞いてあげようと、情けをかけた結果、ミシェルはある結論に達した。

嫌な予感がある時点で断っておけば、更なる面倒に巻き込まれなかったのに、と。

「君は……ローガン男爵令嬢を知っているか?」
「ええ、有名な方ですわね。」
それが何か?とは聞かなかった。話を促す気はない。何せ嫌な予感が的中したのだから。

「彼女と友人になって貰えないだろうか?いや、彼女は友人がいないそうで……」

話の続きを期待していたのに、そこで話は途切れてしまった。

友人がいなくて、それで何だというのか。それぐらい貴族令嬢ならば自力で何とかすべきでしょう。

「彼女は私と友人になりたいと言ったのですか?貴方とではなくて?」

婚約者はわかりやすく狼狽えると、「いや、確かに私と友人になりたいとは言われたが、友人なら同姓の方がいいだろう。私と彼女では、話も合わないし……」

まただ。話の最後を話さないのはやめてほしい。察してくれ、なんて子供じゃあるまいし。

「私なら彼女と話が合うと?」
「やはり同性同士が良いんじゃないかと思って……できれば君の友人との橋渡しもしてもらいたいんだ。」

ミシェルは友人の面々を思い出し、ため息をついた。彼女達が男爵令嬢にどう接するかわかった上での発言ではないことは分かり切っている。

「お断りいたします。」

ミシェルの言葉に面食らった様子の婚約者ダリルは、何故か少し不機嫌になって、ミシェルに突っかかってきた。

「どうして……一度、会ってみてくれないか。それから決めても遅くはないだろう。」

「どうして?貴方が理由に思い至らないことにどうして、と言いたくはなりますが。私、時間を無駄にしたくないのです。ローガン男爵令嬢とは今後関わりになることはございませんので。」

「君は……彼女の言う通り、冷たい人間なのだな。」

「それです。」
「……何だと?」
「その、私を冷たいと言ったのは、貴方が友人になってくれとお願いして来た、その男爵令嬢なのでしょう?」

何故か不機嫌になって、見当違いにも此方を責めて来たダリルは、ミシェルの発言に、漸く自らの間違いに気づいたらしい。

「そもそも、友人でもない、話をしたこともない彼女に、冷たいと言われるのは不思議です。それに、その根拠のない彼女の勝手な考えを、わざわざ婚約者である貴方に伝えたことに、私は彼女の意図を感じるのです。私の言いたいこと、お分かりですか。」

ダリルには今度こそ意味が通じただろう。というか、そうであってほしい、と期待を込める。

彼は時間を無駄にしたことを詫びて、話は有耶無耶になった。
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