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同じこと
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ロバートに話を聞いてから、リチャードがまずしたことは、婚約の前に起きていたことの把握である。
「あの時と同じことが今起きている」というのは何のことなのか。リチャードは記憶を辿り、あの頃のことを必死に思い出していた。
真っ先に思い出したのは、筆頭公爵家の婚約解消。確かご令嬢が隣国の王太子に見初められたとかで既存の婚約を解消した。今は彼方の国で花嫁修業中だとか。
婚約解消された方は、こちらも公爵家の嫡男だったが、後継者の座から降りたとか何とか。仲が良いようには見えなかったものの、それほどまでに婚約者を思っていたのかと、驚いたものだ。
リチャードは彼とはクラスメートではあるが大して仲良くはない。将来仕事で一緒になることがあってもあまり仲良くしたい気になれないタイプだった。
そういえば、一時期婚約破棄が流行っていた。フリーになった者が増えたせいで、リチャードの周りも騒がしくなったという悪循環。
ご令嬢の何人かは、婚約破棄後修道院に入ったと聞いている。あれは、特に下位貴族のご令嬢が多かった。そうやって考えてみると、そのような中、新たに婚約をしたリチャード達は珍しい部類として、注目を浴びたのかもしれない。
とここまで考えて、ロバートが言っていた「デニス伯爵令嬢が解決したこと」とは何だったのかが気になった。
婚約が破棄されることは珍しいことではない。政略の旨味がなくなったり、より良い選択肢が現れたりすれば、十分あり得ることだ。だけど同時期にあんなに何件も、というのはやはり何らかの原因があると考えるのが普通だろう。
リチャードは婚約者に会う前に、何人か狙いをつけた人物を追い、状況を把握しようとした。
そこでわかったことは、ある人物の関与だ。
驚いたことにこの婚約破棄には首謀者が存在していた。
男性を誑かし、不貞をさせ、それを相手にバラすことで婚約破棄をさせた女狐が存在したのだ。
彼女の名前は、ディアナ・ラウド。彼女の主人は隣国の王家ではないかと言われている。そこから突如降って湧いた王女の存在。リチャードは何だかとても嫌な気分になった。
そして、今。目の前に座る、アルマ嬢は何の興味も浮かべない瞳でリチャードの顔を見ると、不機嫌そうな声色を隠しもせずに、用件を尋ねた。アルマ嬢はリチャードを「婚約者様」と呼ぶことにしたらしい。二人に挟まれている王女と、辺境伯次男は、我関せずで二人で仲良く話をし始める。
リチャードは今までの態度を謝り、全てを教えてくれ、と願った。
「まずは調べたことから辿り着いたことを教えてください。話はそれからです。」
婚約者同士なのに、まるで上司のような話し方にリチャードは緊張しながら話を終えた。
「不正解ですわね。再度調べ直してください。ヒントは王女様の立ち位置、ですわ。」
有無を言わさず、立ちあがろうとする彼女を王女が止めた。
「待って待って。婚約者同士、もう少し交流したら?貴女が怒るのは最もだけど、この人、勉強ができるだけの、ちょっと残念な人なんでしょう?ちゃんと一から教えてあげないとわからないんじゃないかな。怒るのはその後で充分だと思うわよ?」
酷いことを言われていたが、引き止めてくれたことに感謝した。王女はリチャードが気に入ったというよりはアルマ嬢を宥めたいようだ。
「あの時と同じことが今起きている」というのは何のことなのか。リチャードは記憶を辿り、あの頃のことを必死に思い出していた。
真っ先に思い出したのは、筆頭公爵家の婚約解消。確かご令嬢が隣国の王太子に見初められたとかで既存の婚約を解消した。今は彼方の国で花嫁修業中だとか。
婚約解消された方は、こちらも公爵家の嫡男だったが、後継者の座から降りたとか何とか。仲が良いようには見えなかったものの、それほどまでに婚約者を思っていたのかと、驚いたものだ。
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そういえば、一時期婚約破棄が流行っていた。フリーになった者が増えたせいで、リチャードの周りも騒がしくなったという悪循環。
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とここまで考えて、ロバートが言っていた「デニス伯爵令嬢が解決したこと」とは何だったのかが気になった。
婚約が破棄されることは珍しいことではない。政略の旨味がなくなったり、より良い選択肢が現れたりすれば、十分あり得ることだ。だけど同時期にあんなに何件も、というのはやはり何らかの原因があると考えるのが普通だろう。
リチャードは婚約者に会う前に、何人か狙いをつけた人物を追い、状況を把握しようとした。
そこでわかったことは、ある人物の関与だ。
驚いたことにこの婚約破棄には首謀者が存在していた。
男性を誑かし、不貞をさせ、それを相手にバラすことで婚約破棄をさせた女狐が存在したのだ。
彼女の名前は、ディアナ・ラウド。彼女の主人は隣国の王家ではないかと言われている。そこから突如降って湧いた王女の存在。リチャードは何だかとても嫌な気分になった。
そして、今。目の前に座る、アルマ嬢は何の興味も浮かべない瞳でリチャードの顔を見ると、不機嫌そうな声色を隠しもせずに、用件を尋ねた。アルマ嬢はリチャードを「婚約者様」と呼ぶことにしたらしい。二人に挟まれている王女と、辺境伯次男は、我関せずで二人で仲良く話をし始める。
リチャードは今までの態度を謝り、全てを教えてくれ、と願った。
「まずは調べたことから辿り着いたことを教えてください。話はそれからです。」
婚約者同士なのに、まるで上司のような話し方にリチャードは緊張しながら話を終えた。
「不正解ですわね。再度調べ直してください。ヒントは王女様の立ち位置、ですわ。」
有無を言わさず、立ちあがろうとする彼女を王女が止めた。
「待って待って。婚約者同士、もう少し交流したら?貴女が怒るのは最もだけど、この人、勉強ができるだけの、ちょっと残念な人なんでしょう?ちゃんと一から教えてあげないとわからないんじゃないかな。怒るのはその後で充分だと思うわよ?」
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