親が決めた婚約者ですから

mios

文字の大きさ
6 / 22

まずはそこから

しおりを挟む
アルマ嬢の態度はリチャードが知っている姿とは異なる。大して交流もなかった彼女の何を知っているのかと言われるとそれまでだが、多分彼女はリチャードには本来の姿を見せる気はなかったのだろう。

アルマ嬢から目を逸らすと、辺境伯の次男アーサー殿と隣国の王女オーブリー殿が仲良さげに話しているのが目についた。

「あの、お聞きしても?」
「ええ。私達が仲良いのが不思議?」
「はい。私が聞いた話では、アーサー殿は王女様とのご婚姻を拒んだと聞いておりましたから。」
王女は、アルマ嬢と目配せをして、にっこりと笑う。
「良かったわ。貴方の耳に入ったと言うことは、王都にまでその噂は届いたと言うことね。」
リチャードの混乱など見向きもせずに三人はこれからのことを話し始めた。リチャードは話についていくことなどできずにただ話を聞くことに集中した。

どうやら、彼らの口ぶりから察するに、この流れは彼らが流した噂であるようだ。

「貴方って宰相閣下のご子息なら、私達の政敵が誰かはご存知?」
私達というのは、隣国ではなく辺境伯の方であろうと予想し、頷いた。

辺境伯当主と王弟殿下の確執は有名だ。
「王弟殿下、ですよね。」

「ええ、なら、隣国王家と此方の筆頭公爵家が手を結んだ今、王弟殿下はどう動くのが予想される?ちなみにディアナ・ラウドは隣国の王家、もしくは王弟殿下との繋がりを匂わせている。どちらもあり得る話だし、勿論彼女の狂言の可能性もあることとする。どう?」

「隣国の王家とは貴女の実家という意味で宜しいですか?」

「ええ、勿論。私自身は話したことはないけれど、兄の公爵令嬢に対する執着は相当のものだったようだから、ハニトラを仕掛けて、国を乱し、愛する女性を手に入れることはしそうなのよね。」

王女とばかり話しているが、アルマ嬢をチラリと盗み見ると、少しずつ嫌な気持ちを抑えてくれるような表情になっていった。

「話の途中で申し訳ありませんが、一つ聞いても?」

「ええ。アルマに?」
「はい。アルマ嬢はご令嬢にどのような態度をして問題を解決したのですか?」
アルマ嬢はまたもや怒りを思い出したようにリチャードを睨みつけた。

ただリチャードは彼女のこの態度が本当に嫌われてとられたことではないことがわかってきた。


アルマ嬢からは、此方を探るような感じがしても此方を蔑んだり、馬鹿にしたりするような雰囲気はなかった。

「貴方を共通の敵にしただけよ。女性の誘いを断るのに婚約者とお父上の力を借りるおぼっちゃまの子守りをするより、素敵な殿方との縁談をまとめる方が遥かに楽しいわよ、そう言っただけ。」


リチャードはその言い分から自分の驕り高ぶった心を反省した。デニス伯爵令嬢は多分この婚約について、何も喜んでいないことが理解できたからだ。彼女にとって、リチャードとの婚約は面倒を押し付けられたようなもの。

リチャードは自分の価値すら示さずに、彼女に勝手に試練を与えている気分になっていたが、実際に与えられていたのは自分だった。

恥ずかしさで小さくなったリチャードをアルマ嬢が許してくれるかどうかは、この後の行動次第だろう。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる

椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。 その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。 ──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。 全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。 だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。 「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」 その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。 裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。

早く婚約解消してください!

鳴哉
恋愛
自己評価の低い子爵令嬢 と その婚約者の侯爵令息  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、6話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

冬薔薇の謀りごと

ono
恋愛
シャルロッテは婚約者である王太子サイモンから謝罪を受ける。 サイモンは平民のパン職人の娘ミーテと恋に落ち、シャルロッテとの婚約破棄を望んだのだった。 そしてシャルロッテは彼の話を聞いて「誰も傷つかない完璧な婚約破棄」を実現するために協力を申し出る。 冷徹で有能なジェレミア公爵やミーテも巻き込み、それぞれが幸せを掴むまで。 ざまぁ・断罪はありません。すっきりハッピーエンドです。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢マリオンの婚約者アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は……    暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

処理中です...