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絆されて
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ローゼリアとベアトリスをたきつけて、アリーチェは笑う。その隣に、昔はそこに誰もいなかったけれど、今は彼がいる。
今まで自分は淡白なのだと思っていた。人を愛する心はあれど、それは家族だったり、友人だったりに対する愛で、誰かに対する特別な感情ではない。エリオスのように誰かをすぐ好きになって楽しげに過ごすみたいなことがなかったから、余計にそんなことを思った。今思えば少し羨ましかったのだと思う。
それはエリオスに愛されたかったわけではなく、あんなに易々と愛情を持てる彼自身が羨ましかった。
今ではそれが、愛ではなく、単なる性欲だったとわかってはいるのだけど。
「気を抜いているところ、申し訳ないけれど
アリーチェに今度こそ婚約を結びたいんだ。」
リディアからの脱出に成功し、ホッと一息ついたある日、言われた言葉。
ベアトリスの下の兄、ハロルドは、悪戯っ子のような笑みを浮かべて、こちらを見ていた。
「婚約の話は伯爵を通して下さい。」
「もう通してるよ。君が良いなら良いそうだ。」
妹によく似た端正な顔つき。公爵家では大人しくしているが、兄妹に似ずはっちゃけた性格。物事の判断基準が良いか悪いか、正しいか正しくないか、ではなく、面白いか面白くないか。
家を継がないにしろ、公爵家の次男なのに、婚約者がいないなんて、珍しいと思っていた。
王子の婚約者候補に決まる前、今思えば物凄く幼い頃、一度結びかけた縁を、再度結ぼうとするとは思わなかった。
「そんなに驚かなくても……」
「いえ、社交辞令とか、口だけかしら、と思っていたから。」
「……私に対する印象ってそんなに悪いの?」
アリーチェは彼に対して、何かあるとかではなく、照れてしまう事があると、頭が回らずに余計なことを言ってしまう癖がある。ここ最近焦ったことがなかったので、忘れていた。
「違うの、そうじゃなくて、えーと……」
「冗談だよ。君達は、あの馬鹿のせいで、恋愛に幻想は持てないかもしれないけど、少なくとも私は一途な方だと思う。あの馬鹿王子みたいに気の多い男も中にはいるけれど、アレは本当に一部だよ。
浮気については心配しないでほしいんだ。
あと、君は認めたくないかもしれないが、私は呆れるぐらい狭量な男だから、君を振り向かせるために全力で君の周りをウロチョロするから。苦情は受け付けないから、宜しくね。」
こちらの返事は待たずに言いたいことを言うだけ言って帰っていく。
あの馬鹿王子と同じくらい勝手なのに、何故か馬鹿王子ほど怒りは湧かなかった。
宣言通り、ハロルドは、妹のところにも行かず、アリーチェの元にばかり通っていた。
「ハインツ様と甘い空気になっているところに、間違えて入ってしまったら、と考えるだけで、背中が薄ら寒くなるよ。
ここに来たらアリーチェにも会えるし、このクッキーにも会えるし、楽しいことばかりだろ?」
若干クッキーが一番の目当てなのでは?と思うぐらいパクパク食べているが、そんなに喜んで貰えると、製作者としては嬉しい限りだ。
伯爵がアリーチェに判断を委ねたのなら、悪い相手ではないと言うことだ。彼のことを信じると言うよりは父のことを信じるつもり。
アリーチェはひとまず、情に絆されることにした。
今まで自分は淡白なのだと思っていた。人を愛する心はあれど、それは家族だったり、友人だったりに対する愛で、誰かに対する特別な感情ではない。エリオスのように誰かをすぐ好きになって楽しげに過ごすみたいなことがなかったから、余計にそんなことを思った。今思えば少し羨ましかったのだと思う。
それはエリオスに愛されたかったわけではなく、あんなに易々と愛情を持てる彼自身が羨ましかった。
今ではそれが、愛ではなく、単なる性欲だったとわかってはいるのだけど。
「気を抜いているところ、申し訳ないけれど
アリーチェに今度こそ婚約を結びたいんだ。」
リディアからの脱出に成功し、ホッと一息ついたある日、言われた言葉。
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「婚約の話は伯爵を通して下さい。」
「もう通してるよ。君が良いなら良いそうだ。」
妹によく似た端正な顔つき。公爵家では大人しくしているが、兄妹に似ずはっちゃけた性格。物事の判断基準が良いか悪いか、正しいか正しくないか、ではなく、面白いか面白くないか。
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「そんなに驚かなくても……」
「いえ、社交辞令とか、口だけかしら、と思っていたから。」
「……私に対する印象ってそんなに悪いの?」
アリーチェは彼に対して、何かあるとかではなく、照れてしまう事があると、頭が回らずに余計なことを言ってしまう癖がある。ここ最近焦ったことがなかったので、忘れていた。
「違うの、そうじゃなくて、えーと……」
「冗談だよ。君達は、あの馬鹿のせいで、恋愛に幻想は持てないかもしれないけど、少なくとも私は一途な方だと思う。あの馬鹿王子みたいに気の多い男も中にはいるけれど、アレは本当に一部だよ。
浮気については心配しないでほしいんだ。
あと、君は認めたくないかもしれないが、私は呆れるぐらい狭量な男だから、君を振り向かせるために全力で君の周りをウロチョロするから。苦情は受け付けないから、宜しくね。」
こちらの返事は待たずに言いたいことを言うだけ言って帰っていく。
あの馬鹿王子と同じくらい勝手なのに、何故か馬鹿王子ほど怒りは湧かなかった。
宣言通り、ハロルドは、妹のところにも行かず、アリーチェの元にばかり通っていた。
「ハインツ様と甘い空気になっているところに、間違えて入ってしまったら、と考えるだけで、背中が薄ら寒くなるよ。
ここに来たらアリーチェにも会えるし、このクッキーにも会えるし、楽しいことばかりだろ?」
若干クッキーが一番の目当てなのでは?と思うぐらいパクパク食べているが、そんなに喜んで貰えると、製作者としては嬉しい限りだ。
伯爵がアリーチェに判断を委ねたのなら、悪い相手ではないと言うことだ。彼のことを信じると言うよりは父のことを信じるつもり。
アリーチェはひとまず、情に絆されることにした。
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