男装令嬢は騎士様の制服に包まれたい

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謁見

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あとから到着した両親と合流して謁見の順番を待つ。二年ぶりの我が子を見て両親は誇らしげに微笑んでいる。

「ディアンに縁談がたくさん届くわね。」末席の貴族で近衛騎士の兄にはまだ婚約者がいない。昔から声はかかっていたものの、戦争が終わるまでは、いつ命を落とすかままならないため、お断りしていた。

母親の弾むような声に、苦笑しつつ平静を保とうとしているが、ローズやレオンは騙されない。

あれは、面倒と思っている顔だと。
「貴方達も他人事じゃないわよ。」
母の興味が妹弟に移って、気をよくしたのかニヤッと笑い、「そうだぞ、お前らを残して行けないだろう。」とのたまう。

「ローズ、貴方はちゃんと女性の格好さえしてくれたら素敵なのよ。」
完全に母が対象をローズに移したことに兄は上機嫌になった。

母がこうなると、何も口を挟まず、大人しくしておいた方が早く終わる。お茶会で何度か母に内緒で、男装したことを根に持っているのだ。

ちょうど、タイミングよく謁見の声がかかる。ローズは助かった、と思うものの、途端にマナーについて不安になった。だが、今日の主役は、兄なので自分に注目は集まらないだろう、と思い直した。

王様、王妃様、第二王子とは、前回の夜会でお目にかかったが、第一王子にお目にかかるのは初めて。
顔をまっすぐに見てしまって、さっきレオンに言われた言葉を思い出した。

(不敬っ!怒られる!)

急に目を伏せ、あわあわしたローズをみて、第一王子は穏やかな笑みを浮かべた。

「君がディアンの妹か。そんなに緊張しなくて良い。」
第二王子とも兄とも違う綺麗な男の人に柄にもなくドキドキしてしまい、恥ずかしさも相まって、さらに俯く。
そんなローズを面白そうに、第一王子は見つめていた。

緊張していたせいか、すぐに謁見は終わる。疲れてソファに座り込むと、母が嬉しそうな声をあげた。

「第一王子、戦争から帰られてさらに威厳が加わって、素敵になられたわね。うちは、子爵だから正妃は無理でも、側妃とか侍女とかいくらでもお側にいられる手段はあるわよ。」

前半はローズも同意したものの、後半は何の話かわからないでいると、兄までもが「まあ、第二王子の側妃よりは、第一王子の方がまだマシか。」と言いだした。

弟は反対してくれているが、知らぬ間に外堀を埋められそうになっていることにローズは震えた。

「初めてお目にかかって、緊張してしまっただけよ。恐れ多いこと、言わないで!」

ローズがそう言うと、母はなーんだ、と言う顔になって、
「ようやく、貴方のお眼鏡にかなう人が現れたと思ったのに。」と言った。

どうせだったら、近衛騎士から選ぶわよ、と言う心の声が聞こえたのか、兄は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

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