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訓練
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「あら、お兄様は?」
祝勝会の後、何日間かは騎士団の訓練はお休みで、しっかり体を休めるよう王命が下ったというのに、ローズがどれだけ屋敷の中を探しても、兄のディアンの姿はなかった。
「体が鈍ると仰られて、訓練に行かれました。」
ローズは、マリカに目配せすると、目をそらされてしまったものの、兄に叱られてもいいわ、と身支度を始めた。
勿論、兄を出しにして騎士団の訓練を見に行くとは、言えない。
マリカは、言ったところで聞かないだろう主人の考えに賛同はしないが、ちゃんと準備を手伝い、言うとおりにするから、侍女の鑑だと言える。
ただ、止めるのが面倒だから、と言った理由では決してない、はずだ。
騎士は訓練中は勿論制服ではないのだが、マネキンがどのように作られるかは少し興味がある。
肉厚な感じが、6割増しマネキン様のウリだ。
あと、普通に兄に会いたい、というのもある。
ローズは本人は気づいていないのだが、立派なブラコンであり、幼い頃と変わらず兄と同じところにいたがった。
とはいえ、この2年間、会いたくとも戦争についていけるわけもない。ここぞとばかり、男装にはまっていたのは、決してしめしめと思っていたのではなく、それが兄を身近に感じる時だったからだ。
機嫌よく過ごしているローズに苦笑しながら許してしまうのは、マリカが、兄のいない時期のローズを間近で見て、知っているからだ。
料理長から預かった差し入れを持って、馬車で向かう。
「お兄様に、叱られるかしら。」
どことなく楽しそうなローズに、笑ってしまう。
「なんだか、叱られたいように見えますよ。そのいい方ですと。」
「だって久しぶりに会えたのに、もういないのよ。会ったら文句の一つもいいたいわ。」
「訓練が終わったら、ちゃんと帰ってこられますよ。」
普段はすましているローズも、兄の前だと妹になる。少し残念な女の子になる。
それも、マリカから見ると、可愛くて面白かった。
近衛騎士の練習場は王宮の外れに位置している。二人が着くと、意外にも人がたくさんいて、休みと言うのに、皆考えることは同じみたいだ。
ローズが声を掛ける前に、兄が気付く。
驚きはしたが、想定内だったのか、苦笑して、周りの方を紹介してくれる。
皆様にご挨拶して、最後は上司の方。
上司の方は、あの、6割増しの方だ。
他の方と筋肉のつき方が違う気がする。
あまりにもまじまじと見てしまったようで、上司の方が恥ずかしそうにしていることに気づき、謝罪を口にする。
「ごめんなさい。素敵(な筋肉)でしたので、見惚れてしまいました。」
上司の方の顔がさらに赤くなった。
「それ、何?」
マリカが持っているバスケットに、食べ物の気配を感じたのか、兄が声を掛ける。
「差し入れです。お腹を空かせてらっしゃるかと思いまして、シェフに頼んだので、美味しいと思います。皆様の分もございますので、どうぞお召し上がりください。」
多めには作ったのだが、足りるだろうか。
想定外の人の多さに困惑したものの、騎士様の筋肉に貢献できることに、胸は踊った。
祝勝会の後、何日間かは騎士団の訓練はお休みで、しっかり体を休めるよう王命が下ったというのに、ローズがどれだけ屋敷の中を探しても、兄のディアンの姿はなかった。
「体が鈍ると仰られて、訓練に行かれました。」
ローズは、マリカに目配せすると、目をそらされてしまったものの、兄に叱られてもいいわ、と身支度を始めた。
勿論、兄を出しにして騎士団の訓練を見に行くとは、言えない。
マリカは、言ったところで聞かないだろう主人の考えに賛同はしないが、ちゃんと準備を手伝い、言うとおりにするから、侍女の鑑だと言える。
ただ、止めるのが面倒だから、と言った理由では決してない、はずだ。
騎士は訓練中は勿論制服ではないのだが、マネキンがどのように作られるかは少し興味がある。
肉厚な感じが、6割増しマネキン様のウリだ。
あと、普通に兄に会いたい、というのもある。
ローズは本人は気づいていないのだが、立派なブラコンであり、幼い頃と変わらず兄と同じところにいたがった。
とはいえ、この2年間、会いたくとも戦争についていけるわけもない。ここぞとばかり、男装にはまっていたのは、決してしめしめと思っていたのではなく、それが兄を身近に感じる時だったからだ。
機嫌よく過ごしているローズに苦笑しながら許してしまうのは、マリカが、兄のいない時期のローズを間近で見て、知っているからだ。
料理長から預かった差し入れを持って、馬車で向かう。
「お兄様に、叱られるかしら。」
どことなく楽しそうなローズに、笑ってしまう。
「なんだか、叱られたいように見えますよ。そのいい方ですと。」
「だって久しぶりに会えたのに、もういないのよ。会ったら文句の一つもいいたいわ。」
「訓練が終わったら、ちゃんと帰ってこられますよ。」
普段はすましているローズも、兄の前だと妹になる。少し残念な女の子になる。
それも、マリカから見ると、可愛くて面白かった。
近衛騎士の練習場は王宮の外れに位置している。二人が着くと、意外にも人がたくさんいて、休みと言うのに、皆考えることは同じみたいだ。
ローズが声を掛ける前に、兄が気付く。
驚きはしたが、想定内だったのか、苦笑して、周りの方を紹介してくれる。
皆様にご挨拶して、最後は上司の方。
上司の方は、あの、6割増しの方だ。
他の方と筋肉のつき方が違う気がする。
あまりにもまじまじと見てしまったようで、上司の方が恥ずかしそうにしていることに気づき、謝罪を口にする。
「ごめんなさい。素敵(な筋肉)でしたので、見惚れてしまいました。」
上司の方の顔がさらに赤くなった。
「それ、何?」
マリカが持っているバスケットに、食べ物の気配を感じたのか、兄が声を掛ける。
「差し入れです。お腹を空かせてらっしゃるかと思いまして、シェフに頼んだので、美味しいと思います。皆様の分もございますので、どうぞお召し上がりください。」
多めには作ったのだが、足りるだろうか。
想定外の人の多さに困惑したものの、騎士様の筋肉に貢献できることに、胸は踊った。
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