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男友達
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第一王子は、訓練のあった日、ローズと会話してから二度、ローズと会っている。会うと言っても、偶然会ったのが一度。待ち伏せしたのが、一度。
二度とも、ローズは男装中だった。
ローズにあまりにも似ているが男だと思い、親戚か何かと声をかけてみたら、まさかの本人だった、という訳だ。
なるほど、女性だと絶対に出来ないことが、男装しているとできるのだな、と思った。
試しに肩を組んで、引き寄せて見ても、傍目には、友人同士がじゃれついているようにしか見えない。
ローズ本人は驚きすぎて固まっていたが。
「君は今、男性だろ。」
そう耳元で囁くと、そうでした、と
男のフリをする。そのフリは板につきすぎていて、男装が一度きりのものではないことを分からせた。
男装をするような女性を他に知らない。
会えば会うほど、面白い女性だと、王子は思った。
「殿下、あの…」
「しっ!ここでは、エドで頼む。殿下では目立つからな。」
「は、はい。エド様。」
「様…まあ、良い。」
ローズと肩を組んだまま歩く。
これが、女性の姿なら、婚約者のいる身としては、余計な噂になっていたが、今は男の姿だ。
(これは、案外使えるな。)
王子は黒い笑みを浮かべたが、緊張していたローズは気が付かなかった。
二度目の待ち伏せは、自分でもらしくないことをしたと思う。
たまたま用事があったのを早めに切り上げて、市井の様子を見に行く。勿論、変装し、護衛もつけて。
ローズが立ち寄りそうな、店を何軒か見に行き、うろうろしていると、たまたま、男装したローズが通りかかった。
最初は、男性に見えたのに、タネを知ってしまうと、今度は女性にしか見えなくて、馴れ馴れしい態度は出来なくなってしまった。
男装の話や、ローズのこと、好きなものの話など、世間話をして、街を歩く。
格好は男だが、歩幅は小さいので、配慮して、ゆっくり歩く。
コロコロ変わる表情は、見ていて飽きない。
「君さえ、よければ、私の友人になってくれないか。」
ローズは驚きながら、
「恐れ多いことで…」と、断ろうとする。
「私の変装に付き合って欲しいのだ。これからも。男として。」
最後の一言は、自分自身にも言った言葉だ。
男として。
女性としてではないから、浮気ではない。あくまで友人として、だ。
渋々と言った様子で、ローズは了承してくれた。
私達は友人になった。
「おや、今日は男装じゃないのだな。」
近づいてきた王子が余計なことを言った。チラリと兄の顔色を伺って、ローズは曖昧に頷く。
ディアンは、漸く頭が動き出したようで、先程の王子の発言を理解した。ローズをジト目で見ている。
ローズは冷や汗が止まらない。
王子は、気に留めた様子もなく、優雅に続ける。
「今日の町娘風もなかなか可愛いな。」
兄の目が鋭さを増していく。
「殿下、妹が最近、大変お世話になっているようで。何か粗相がございましたか。」
「いや、お世話になっているのは私の方だ。いや、貴君の妹君は面白い。」
(一緒に戦争に行っていただけあって
仲は良いのかもしれないわ。)
ローズはニコニコしながら、力強い握手を交わしている王子と兄をみて、呑気にそんなことを思った。
力強い握手は、ミシミシと、音がするかのようだった。
二度とも、ローズは男装中だった。
ローズにあまりにも似ているが男だと思い、親戚か何かと声をかけてみたら、まさかの本人だった、という訳だ。
なるほど、女性だと絶対に出来ないことが、男装しているとできるのだな、と思った。
試しに肩を組んで、引き寄せて見ても、傍目には、友人同士がじゃれついているようにしか見えない。
ローズ本人は驚きすぎて固まっていたが。
「君は今、男性だろ。」
そう耳元で囁くと、そうでした、と
男のフリをする。そのフリは板につきすぎていて、男装が一度きりのものではないことを分からせた。
男装をするような女性を他に知らない。
会えば会うほど、面白い女性だと、王子は思った。
「殿下、あの…」
「しっ!ここでは、エドで頼む。殿下では目立つからな。」
「は、はい。エド様。」
「様…まあ、良い。」
ローズと肩を組んだまま歩く。
これが、女性の姿なら、婚約者のいる身としては、余計な噂になっていたが、今は男の姿だ。
(これは、案外使えるな。)
王子は黒い笑みを浮かべたが、緊張していたローズは気が付かなかった。
二度目の待ち伏せは、自分でもらしくないことをしたと思う。
たまたま用事があったのを早めに切り上げて、市井の様子を見に行く。勿論、変装し、護衛もつけて。
ローズが立ち寄りそうな、店を何軒か見に行き、うろうろしていると、たまたま、男装したローズが通りかかった。
最初は、男性に見えたのに、タネを知ってしまうと、今度は女性にしか見えなくて、馴れ馴れしい態度は出来なくなってしまった。
男装の話や、ローズのこと、好きなものの話など、世間話をして、街を歩く。
格好は男だが、歩幅は小さいので、配慮して、ゆっくり歩く。
コロコロ変わる表情は、見ていて飽きない。
「君さえ、よければ、私の友人になってくれないか。」
ローズは驚きながら、
「恐れ多いことで…」と、断ろうとする。
「私の変装に付き合って欲しいのだ。これからも。男として。」
最後の一言は、自分自身にも言った言葉だ。
男として。
女性としてではないから、浮気ではない。あくまで友人として、だ。
渋々と言った様子で、ローズは了承してくれた。
私達は友人になった。
「おや、今日は男装じゃないのだな。」
近づいてきた王子が余計なことを言った。チラリと兄の顔色を伺って、ローズは曖昧に頷く。
ディアンは、漸く頭が動き出したようで、先程の王子の発言を理解した。ローズをジト目で見ている。
ローズは冷や汗が止まらない。
王子は、気に留めた様子もなく、優雅に続ける。
「今日の町娘風もなかなか可愛いな。」
兄の目が鋭さを増していく。
「殿下、妹が最近、大変お世話になっているようで。何か粗相がございましたか。」
「いや、お世話になっているのは私の方だ。いや、貴君の妹君は面白い。」
(一緒に戦争に行っていただけあって
仲は良いのかもしれないわ。)
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力強い握手は、ミシミシと、音がするかのようだった。
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