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兄の牽制②

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「お、ま、え、は~~~!」
屋敷に着くや否や兄から雷が落ちる。
「ごめんなさいごめんなさいお兄様。」

「何が悪いか、わかってるか?」
かなり脱力しきった状態で、兄が問い掛ける。こんな姿は初めてみる。
「男装したことですよね。」
恐る恐る答えると、兄は頭を抱えてしまった。

「お、お兄様…?」
長い長いため息のあと、ローズにしっかり言い含める。
「今後、殿下に会うときは、必ず男装して会うこと!いいか?」
ローズはきょとんとした。
「え?」
「今後一切、女性の格好で会う事を禁止する!」
「お兄様、男装してよろしいのですか?」
「ああ、でも令嬢として、参加するお茶会とかはだめだ。母に俺が叱られる。王子とプライベートで会うときだけだ。守れるか?」
「守れます!」
ローズが前のめりに返事をするのは、男装を兄に初めて認めて貰えた喜びから。

「他のやつにはお前が男装してるとバレるなよ。バレたら終了だ。いいな?」
「はい、勿論です。」
ディアンはその後、王子に会いに行き、男装姿なら妹に会ってもよい、と告げた。

王子は臣下に偉そうに言われたことにも、動じることなく、ただ苦笑いを浮かべ、了承した。

男装のローズに手を出せば、王子は男色であると、告白するようなものだし、女性の姿のローズに手を出せば、ローズはふしだらな女だと、罵られてしまう。

お互いを守れるのは、この方法しかない。

「もし、貴方に会うのに、男装したくないと妹が言えば、あとは貴方の思うようにしていただいて結構です。」

王子がローズに興味を抱いているのを理解した上で、条件をつけてきているのである。

わざわざ言うということは、ローズは王子に会えることではなくて、大好きな男装が出来ることに喜んでいるのだろう。

男装をして歩いている時の楽しそうな生き生きした、ローズの顔を思い浮かべて、王子はニヤニヤした。

男装姿だろうが、ローズに会える。その事実に王子の胸は高鳴った。





兄とて妹を苦労するとわかっている男に付き合わせたくはない。いくら政略結婚でも、だ。子爵と言えど、貴族の端くれ。政略結婚の意味を理解してはいる。

第一王子は、人間として、王族として信頼に足る人物だ。一緒に、戦争に参加した経験から、そう断言できる。

だが、彼には長年付き合ってきた公爵令嬢という婚約者がいる。彼女が正妃になる為、ローズには側妃か侍女になるかぐらいしか道が残されていない。

とはいえ、それはいずれも、ローズが望めば、だ。
ローズが望まないのなら、相手が王族だろうが、いくら望まれようが、関係ない。絶対に、ローズは渡さない。シスコンと言われようが、妹の幸せを譲る気はないのだ。









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