巻き戻りの人生は幸せになれるはずだったのに

mios

文字の大きさ
7 / 18

子爵家の没落 マリア視点

しおりを挟む
第二王子カートが、子爵家の子息を始末した原因は、口封じの為だ。彼のお気に入りを誰にも取られないように策を練り、協力者に口封じをしたのだった。

子爵家の子息は、ギャンブルで膨れ上がった借金の完済を餌に、ある伯爵令嬢を傷物にするという役目を与えられた。実際には傷物にする前にカートが助けに入る、という筋書きだったのだが、そうとも知らない伯爵令嬢は、カートを恩人として、崇めるようになった。

彼女は結果、カート王子以外の男性を怖がり、王子に依存していくようになる。そこまでしないと一人の女も籠絡できないなんて可哀想だと思うけれど、余計なことを言って殺されるなんて嫌だから黙っている。いつのまにかいた男爵令嬢はああいう子だから放っておいて構わない。彼女は過去の自分よりも愚かで、愛らしい。一つ前の人生では見かけなかったからか、最初は少し警戒したけれど、彼女に何かできるとは思わない。だってあんなにわかりやすいのだもの。

子爵家の没落は特に意識していたわけじゃない。ベアトリスの時には簡単に出来て許されていたことが、ただの子爵令嬢には許されなかったってことだけ。そう思えば、やっぱり公爵家の権力って侮れないのね。

それに集まってくる男達の質も下がった。子爵令嬢じゃ、中々上の身分の男達は寄ってこない。しかも中には無理矢理関係を迫ってくるような輩もいて、身分って大事なのだと思い知った。

「子爵家が没落するなら、私が囲ってやろうか。」

カート王子の申し入れは素直に受けた。彼は単に目の届く範囲に監視対象を置きたかっただけで、恋愛感情なんてものは一切なかったけれど、周りはそうは思わない。

子爵家を没落まで追いやった毒婦が第二王子を籠絡したと面白おかしく騒ぎ立てる。ここに来て第二王子の側近達は騒がしくなった。

隣国の王女と婚約している第一王子アーノルドに対抗する為に、公爵家の後ろ盾を求める。

ベアトリスだった頃に散々虐めた本物が今ではちゃんと公爵令嬢になっていた。彼女は今となっては雲の上の存在。彼女は大切にしてくれる人に囲まれて幸せに暮らしている。

よせば良いのに、カートを取り囲む者達は、公爵家に関わりたくて仕方がない見たい。

前の人生で懲りたの。あの公爵令嬢には関わりたくないわ。それでもカートの側にいるとどうしても関わりになってしまうのが公爵家。

こうして思い返してみると、今までの人生の鍵となる人物って、第二王子カートのような気がする。彼が主人公という線は低い。だってあんなに悪さばかりしているのだもの。

だから、きっと彼はラスボスで、彼をどうにか倒すために、勇者か何かが彼を倒そうとしているんだわ。差し詰め、私は悪の手下で、すぐ死ぬキャラね。

私だって一度ぐらいは正義の方になりたいけど、無理ね。性根が悪寄りなのは、今更変えようがないのよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ここへ何をしに来たの?

恋愛
フェルマ王立学園での卒業記念パーティ。 「クリストフ・グランジュ様!」 凛とした声が響き渡り……。 ※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しています。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

セラフィーネの選択

棗らみ
恋愛
「彼女を壊してくれてありがとう」 王太子は願った、彼女との安寧を。男は願った己の半身である彼女を。そして彼女は選択したー

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」 男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。 初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。 その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。 しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。 社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。 一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。

今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?

水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。 メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。 そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。 しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。 そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。 メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。 婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。 そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。 ※小説家になろうでも掲載しています。

【完結】君を愛する事はない?でしょうね

玲羅
恋愛
「君を愛する事はない」初夜の寝室でそう言った(書類上の)だんな様。えぇ、えぇ。分かっておりますわ。わたくしもあなた様のようなお方は願い下げです。

「ばっかじゃないの」とつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

処理中です...