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鉱山から始まる マリア視点

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目覚めたら、背中が痛かった。自分がまた始まりに戻ってきたことを悟り、ガックリと肩を落とした。

「また始めからか。」

何故かはじめはいつも鉱山からで、マリアは何度も人生をやり直ししている。一つ前の人生は、公爵家に偶然入り込むことが出来たおかげで、お金の心配などない贅沢な生活を堪能できた。

次もそうなったら嬉しいけれど、またあんなに勉強ばかりさせられるのは勘弁。公爵家の一人娘ベアトリスは、演じていて楽しかったけれど難しかった。話せば話すほど、馬鹿がバレるし、本物の娘の存在を忘れていたせいで返り討ちに遭ってしまった。

別に貴族にならなくても、良いかと思うものの、やはり一度知った贅沢は忘れられない。

「今度はあまり上の身分でなくても良いわ。」

マリアはいつもとても運が良い。今回だって、自分から何かしなくても、勝手に幸運が転がり込んできた。マリアは今回もカート第二王子に出会うことに成功した。彼はとても使える便利な男だ。マリアはいつものように彼らに近づくと、以前学んだことのある最上級のご挨拶をする。

彼らは面白いように騙されてくれて、私の提示したシナリオを何の躊躇いもなく受け入れた。

彼らは処理に困った子爵子息の遺体をどうにかしたい。私は手っ取り早く貴族の位を手に入れたい。そして偶々起こった落盤事故。

「鉱山は他にもあるから大丈夫だ。」というカート第二王子は、幸運にも、マリアの知っているままの人間だった。


悪いことができない人だけど、悪さの基準はとても曖昧で、悪いと思わなければ何だってできる人。

他人の所有する鉱山を奪うことも、婚約者以外の女性に手を出し、囲うことも、自分の権限で邪魔な人間を始末することも悪いことだとは感じていないのだ。

マリアがベアトリスだった時、公爵家に入り込むことができたのも彼のおかげ。あの時、マリーの義兄のマイケルがマリーを気に入らなければ、全てがうまくいっていたのだ。

マイケルは健気な女の子が好きだ。わかりやすくあざとい女に引っかかる、いかにもな男。

「馬鹿な男。」
そうは言ってもまた邪魔をされては敵わない。ちゃんと彼を自陣に引き込んでおくと、前の時は知り得なかった彼の本性が顕になった。これは大きな収穫だ。困った時には是非頼りにさせて頂こう。


マリアの本名はわからない。自分の名前なのにおかしいと言われても本当なのだから、仕方ない。ただ、目覚めた時に、今度の名前はマリアだと思うだけ。

この前のベアトリスという名前は大変だった。学のない自分が自分に与えられた名前を読むことができなかったのだ。

だから、名前を聞かれた時に声に出さずに土の上に書けば、それを声に出してくれた男のおかげで自分の名前を知ることができたのだ。

あの男もいつの間にかいなくなっていたけれど。

名前は配られるものの、それが何の名前か知り得ない自分は役を全うする為に役をそれらしく形作っていく。

この一連にどんな意味があるかなんて、わかるわけがない。それこそ神の遊びか何かじゃないの?

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