巻き戻りの人生は幸せになれるはずだったのに

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シェリーの使い道

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シェリーは穴に落とされた。ここがあの有名な地獄へ繋がる扉だと気がついたが、ここは地獄ではない。

「もう、あの男、最後にこんなことするなんて、悪い奴ね。まあ、ここなら身を隠すのに丁度良いかしら?でも、何でこんなに暗いの?松明ぐらい用意しておきなさいよ。」

シェリーはぐちぐち文句を言いながら、立ち上がる。高いところから、落とされた割には、怪我一つしていない。これでも女騎士だから、身体は丈夫なのが、助かった。

段々と暗闇に慣れてくると、道が三方向に分かれている。目を凝らしてみると二方向から微かな光が漏れている。

シェリーは少し考えて左の道を選んだ。光の届き方から見て、この道が一番歩き易そうだったからだ。

歩いているとまた扉があった。微かだが、人の声らしきものが漏れ出ている。助けを呼べるかと、扉をあけると、白衣の人間が何人かシェリーを見つけた。

「早かったですね、お元気そうでよかったです。」

男性には見覚えはない。だが、気安い態度で歓迎されると、シェリーは従うしかなくて請われるまま、部屋の中程まで連れてこられる。

「あれ?次の方、間違ってません?」
「いや、リリアーナ嬢なら、この方で合っている。」

リリアーナの名前に否定しようとするが、見た目より強い力で彼らに押さえつけられ、動くことができない。

「私はリリアーナ嬢では……」
「勿論。もう彼女は亡くなられてますから。でも、貴女はシェリーさんでしょ。
だから、合っているんです。」

シェリーは段取り良くテキパキと動く彼らに簡単に拘束されると、問答無用でリリアーナの記憶の追体験をさせられる。

シェリーはその後、落盤事故で死んだ殆ど全ての人間の痛み、恨みを知ることになる。

終わった後にはシェリーがどうなるかなどわからない。彼らの仕事は死者の魂を鎮めることだ。生きているシェリーがどうなろうが知ったことではない。


「最初から狂ってるんだったら、あまり変わらないのですかね。それとも一周半回って、まともになるんですかね。」

機械のスイッチを入れたら、後はやることのなくなった彼らは、シェリーの涙が生理現象であることしかわからない。

そこに悲しみや、恐怖、後悔などが含まれていようがいまいが、どうだって良い。

彼らの目的は、未練を失ってなくなった魂の方にある。人を裁くのは彼らの仕事ではない。

「魂の救済って、本当に大変なんですね。」

お菓子を食べながら、スイッチを押す彼らにはわからない。シェリーの魂が限界を迎えて、身体から抜け出しそうになっていることも。救済された筈の魂がシェリーの体に入ろうと小さな争いを生じさせていることも。

「中々しぶといですね。」

彼らは満足そうに彼女の姿を眺める。この事業が成功すれば、この地下からいつか抜け出せるかもしれない。それにはシェリーが必要不可欠なのだ。
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