17 / 25
弟と、兄
しおりを挟む
次男マイルズは、兄の髪の毛の生え際をじっと眺めていた。兄は猫毛のマイルズとは違いしっかりした毛根の太めの髪質をしていて、将来的に薄くなることはあっても、禿げたりはしなさそうな髪質をしていた。
汗をかいても、ぺたりとしたりしない髪。兄をあまり好きではないのは、こういうところも関係しているかもしれない。
マイルズはシスティーナが作った契約書を眺めて、その穴に、全く気がついていない兄に疑いの目を向けた。
兄は安易に契約書にサインしてしまったことに今更ながら後悔しているが、そもそもこの契約書は、有効なのか。マイルズは確証が持てなかった。
兄姉達の仲は、システィーナがいるからこそ成り立っていることは幼いマイルズにもわかっている。マイルズとは違い歳の近い三人の間には自分が入り得ない何かがあることもちゃんと理解している。
それでも、あの完璧なシスティーナお姉様が作った契約書に穴があるなんてあり得ないと本当に信じていたとしても、この仕掛けに気づかないなんてことがあるのだろうか。
単純な話、もしそうなら勉強をもう一度やり直しした方がいい。文字が読めないのなら、初等教育からのやり直しになるが。
姉システィーナは厳しい人だ。自分にも他人にも厳しいと思われているが、身内には少し甘くなる。今まで間違ったことだと感じながらロザリアの為に諸々のフォローをし続けていた辺り、その甘さが兄にも理解できているだろうに。
だから、本来ならこんな契約書に穴があるなんて、あり得ないことなのだ。それはシスティーナからの温情にすぎない。口では厳しいことを言っていても、兄と妹にどうにか自立をしてほしいという一心で。
「契約書をよく読みなさいと、何度も私は言いましたよ。貴方、ちっとも反省していないのね。残念だわ。」
マイルズには優しい母も、兄には甘い顔を見せない。わざわざ甘やかさなくても勝手に甘えてくるような性格の兄なのだ。マイルズが兄にヒントを出そうとするのを止めたのも母だ。
「自分の行動は、自分しか挽回できないのよ。誰かに頼って解決して貰って、一生そうやって生きていくつもり?悪い人間に騙されて財産を全て奪われるかもしれない。知らない内に悪事に関与させられたなら、どれだけ無関係を口にしても連座は免れないわ。
誰にも頼らずにちゃんと考えなさい。ちゃんとシスティーナに向き合いなさい。」
母のヒントにも未だに気付いた様子はない。
「契約書をよく読みなさい」をスルーしているあたりで言わずもがなだけど。兄には期待しないでいたけれど、このままだと、自分にも火の粉が降りかかりそうでマイルズは早めに退散した。
あのプライドの高い兄がマイルズに助けを求めてくることはないとしても、間違った方向に向かってくることはあるかもしれない。家令に声をかけて用心しておく。家令は特に驚いている様子はなかったから、そういう可能性はあったと判断していたのだろう。
マイルズには新しい護衛がついた。
汗をかいても、ぺたりとしたりしない髪。兄をあまり好きではないのは、こういうところも関係しているかもしれない。
マイルズはシスティーナが作った契約書を眺めて、その穴に、全く気がついていない兄に疑いの目を向けた。
兄は安易に契約書にサインしてしまったことに今更ながら後悔しているが、そもそもこの契約書は、有効なのか。マイルズは確証が持てなかった。
兄姉達の仲は、システィーナがいるからこそ成り立っていることは幼いマイルズにもわかっている。マイルズとは違い歳の近い三人の間には自分が入り得ない何かがあることもちゃんと理解している。
それでも、あの完璧なシスティーナお姉様が作った契約書に穴があるなんてあり得ないと本当に信じていたとしても、この仕掛けに気づかないなんてことがあるのだろうか。
単純な話、もしそうなら勉強をもう一度やり直しした方がいい。文字が読めないのなら、初等教育からのやり直しになるが。
姉システィーナは厳しい人だ。自分にも他人にも厳しいと思われているが、身内には少し甘くなる。今まで間違ったことだと感じながらロザリアの為に諸々のフォローをし続けていた辺り、その甘さが兄にも理解できているだろうに。
だから、本来ならこんな契約書に穴があるなんて、あり得ないことなのだ。それはシスティーナからの温情にすぎない。口では厳しいことを言っていても、兄と妹にどうにか自立をしてほしいという一心で。
「契約書をよく読みなさいと、何度も私は言いましたよ。貴方、ちっとも反省していないのね。残念だわ。」
マイルズには優しい母も、兄には甘い顔を見せない。わざわざ甘やかさなくても勝手に甘えてくるような性格の兄なのだ。マイルズが兄にヒントを出そうとするのを止めたのも母だ。
「自分の行動は、自分しか挽回できないのよ。誰かに頼って解決して貰って、一生そうやって生きていくつもり?悪い人間に騙されて財産を全て奪われるかもしれない。知らない内に悪事に関与させられたなら、どれだけ無関係を口にしても連座は免れないわ。
誰にも頼らずにちゃんと考えなさい。ちゃんとシスティーナに向き合いなさい。」
母のヒントにも未だに気付いた様子はない。
「契約書をよく読みなさい」をスルーしているあたりで言わずもがなだけど。兄には期待しないでいたけれど、このままだと、自分にも火の粉が降りかかりそうでマイルズは早めに退散した。
あのプライドの高い兄がマイルズに助けを求めてくることはないとしても、間違った方向に向かってくることはあるかもしれない。家令に声をかけて用心しておく。家令は特に驚いている様子はなかったから、そういう可能性はあったと判断していたのだろう。
マイルズには新しい護衛がついた。
112
あなたにおすすめの小説
【完結】“自称この家の後継者“がうちに来たので、遊んでやりました。
BBやっこ
恋愛
突然乗り込んできた、男。いえ、子供ね。
キンキラキンの服は、舞台に初めて上がったようだ。「初めまして、貴女の弟です。」と言い出した。
まるで舞台の上で、喜劇が始まるかのような笑顔で。
私の家で何をするつもりなのかしら?まあ遊んであげましょうか。私は執事に視線で伝えた。
妹が行く先々で偉そうな態度をとるけど、それ大顰蹙ですよ
今川幸乃
恋愛
「よくこんなんで店なんて開けましたね」
「まるで心構えがなっていませんわ、一体何年働いてますの?」
エインズ公爵家の娘、シェリルは商人やメイドなど目下の相手に対していつもこんな感じだった。
そのため姉のラーナは常にシェリルのなだめ役をさせられることを悩んでいた
そんなある日、二人はスパーク公爵家のパーティーに招待される。
スパーク家の跡継ぎは聡明で美貌の持ち主と名高く次代の王国を支えると評判のアーノルドで、親密になれば縁談もあるかもしれない。
そう思って張り切るラーナとシェリルだったが、シェリルはスパーク家の人々にもいつも通り怒りをぶちまけてしまい、ラーナの制止も聞かない。
そこにアーノルドが現れ……
『候補』だって言ったじゃないですか!
鳥類
恋愛
いつのまにやら『転生』して美幼女になっていましたよ!魔法がある世界とかサイコーか!
頑張って王宮魔導師になるぞ!と意気込んでいたら…いつのまにやら第一王子殿下の『婚約者候補』にされていた…!!
初投稿です。
異世界転生モノをやってみたかった…。
誤字脱字・タグ違いなどございましたらご一報いただければ幸いです。
内容については生温くサラッと読んでいただけたらと…思います。
婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。
将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。
レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・
二人は正反対の反応をした。
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる