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隠し場所
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領地の邸は白い小花が咲き乱れていた。結婚してすぐ、王都に帰る前に、ケイトが近所の住民から貰った花の種を植えたのだった。花を育てるのが苦手だったケイトが、気に入って少しずつ手入れしていた花をここの庭師達は、喜んで貰う為に頑張って世話した結果だろう。
今はそれがデイビスの心を潤わせた。他にも庭にはたくさんの花が増えていた。全てケイトの為に育てられた庭師の愛情がたっぷり含まれた花だ。
伯爵家のこの雰囲気もケイトが嫁いできてから、随分と明るくなった。
この邸内で探す場所はもう決まっている。自分が隠すとしたら、と考えてあの場所にしかないと考えついた場所だ。
彼女が残したカラクリ箱と同じように、執務室にしている書斎には、金庫とは別に引き出しの奥に仕掛けのある空間が存在している。
そこは、結婚してからケイトに、自分に何かあればここを探すように、と自分から開示した場所だ。彼女はあのカラクリ箱にヒントを残した。あの箱の開け方は作り手の職人と店以外は妻とデイビスしか知らない。
と言うことは、あのメモはデイビスに向けたものだ。ならば、あの中にも彼女が残した手がかりがあるはずだ。
デイビスははやる気持ちを抑えて、書斎の引き出しに手をかける。中には思った通り紙に包まれた何かがあった。メモはない。包みの中には、どこかの鍵と、押し花の栞が一つ。
デイビスの思考は、少しの間、止まった。
念には念を。彼女の用心深さに笑ってしまう。デイビスはこれから、この鍵が何処の鍵かを探さなければならない。多分この押し花の栞が何かのヒントになっているはずだ。何度か栞を透かしたり、触ったりしてみるが、何の変哲もないただの栞だ。
花の種類には詳しく無いが、庭師に聞けばすぐに判明するだろう。
「これは、随分古い種類の花ですね。今、現存しているものは無いと、きいています。この花は育成が難しく、湿度が一定でないと、直ぐに枯れてしまうのですよ。本来水の中で咲くと言われている非常に珍しい花なんです。」
普段見慣れない花に興奮している庭師によると、昔は何とか栽培しようとする試みはあったものの、何度かの失敗を繰り返す内に手を出す者がいなくなったと言う。
「そこまでして、栽培するには理由があったのか?」
正直可愛らしい花ではあるが、愛でるだけならば、他の花に比べて劣る。栽培が難しいのならば、尚更だ。
「これは、花の根に、毒がありまして、研究によると、毒の成分がある病に効くと立証されているんです。」
「病?毒で病を治すのか。」
「詳しくは知らないのですが、花の研究をしている博士が、そのような論文を書いたと、一時期有名になっていました。その方を、奥様のご実家はずっと支援なさっていたと、お聞きしていましたが。」
妻の実家が急に話に出てきて戸惑う。あの家は何をやっているんだ。
「確か、マクホーン家との共同事業であったと言ってましたよ。あちらの子爵様、奥様のお兄様が熱を入れていたと仰っていました。」
今はそれがデイビスの心を潤わせた。他にも庭にはたくさんの花が増えていた。全てケイトの為に育てられた庭師の愛情がたっぷり含まれた花だ。
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そこは、結婚してからケイトに、自分に何かあればここを探すように、と自分から開示した場所だ。彼女はあのカラクリ箱にヒントを残した。あの箱の開け方は作り手の職人と店以外は妻とデイビスしか知らない。
と言うことは、あのメモはデイビスに向けたものだ。ならば、あの中にも彼女が残した手がかりがあるはずだ。
デイビスははやる気持ちを抑えて、書斎の引き出しに手をかける。中には思った通り紙に包まれた何かがあった。メモはない。包みの中には、どこかの鍵と、押し花の栞が一つ。
デイビスの思考は、少しの間、止まった。
念には念を。彼女の用心深さに笑ってしまう。デイビスはこれから、この鍵が何処の鍵かを探さなければならない。多分この押し花の栞が何かのヒントになっているはずだ。何度か栞を透かしたり、触ったりしてみるが、何の変哲もないただの栞だ。
花の種類には詳しく無いが、庭師に聞けばすぐに判明するだろう。
「これは、随分古い種類の花ですね。今、現存しているものは無いと、きいています。この花は育成が難しく、湿度が一定でないと、直ぐに枯れてしまうのですよ。本来水の中で咲くと言われている非常に珍しい花なんです。」
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「そこまでして、栽培するには理由があったのか?」
正直可愛らしい花ではあるが、愛でるだけならば、他の花に比べて劣る。栽培が難しいのならば、尚更だ。
「これは、花の根に、毒がありまして、研究によると、毒の成分がある病に効くと立証されているんです。」
「病?毒で病を治すのか。」
「詳しくは知らないのですが、花の研究をしている博士が、そのような論文を書いたと、一時期有名になっていました。その方を、奥様のご実家はずっと支援なさっていたと、お聞きしていましたが。」
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