伯爵夫人を殺したのは誰だ

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領地へ

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デイビスはケイトの死後、ずっと彼女がどうして死ななければならなかったのかをずっと調べていたが、何もそればかりにかまけていたわけではない。

当然伯爵としての仕事もある。妻が居ない今、後妻も考えていないので、社交に出る必要もないので、ひと足先に領地に戻ることにした。

それにはもう二つ理由がある。エミリア・エポックに見つからないように隠したノートがもし存在するとするならば、彼女はどこにそれを隠すだろうか。

絶対に見つからないのは、伯爵家のどこかに隠した場合だろう。私がエミリア嬢を妻の友人だからといって邸に入れたとしても、探す暇までは与えないことを知っていたから。

また確実を期すのなら、王都の屋敷ではなく領地の方に隠すだろうと考えた。王都からは少し離れているし、エミリア嬢が一人で来るには足がない。田舎の道なので、舗装された道を走る王都の馬車では、すぐに走れなくなるおまけ付きだ。

もう一つの理由としては、ケイトの実家を訪ねてみようと思っていること。

伯爵家の領地に近いところに、ケイトの実家はある。今は兄が継いでいるが、件の兄嫁は、妻のお葬式には来なかった。

確か理由は「体調が優れない」と言う話だったが。

彼女が本当にケイトに執着していたのなら何をおいても式には来ただろうに。それか信じられなくて、発狂したか。どちらにしても、リスキー侯爵夫人のこともあるから、無闇に人を信じてはならない。多分本当だとは思うが、キンバリー・グリーンの証言の裏付けを取らなければならない。

アーサーはよく働いてくれている。ケイトの代わりという程ではないが、此方が指示するより先にリスキー侯爵夫人について調べてくれた。結果、グリーン嬢の言った通りの出来事が起きていた。

侯爵夫人というのは、子爵令嬢からすると、大出世だが、所謂お飾りの妻であり、借金を返し終わるまでは奴隷のようにこき使われる。勿論、子供は、侯爵とその恋人の間に生まれた子を、彼女の子として、育てられる。


侯爵の恋人は平民で、コーリン家に養女に入らせるか、娘をお飾りの妻として嫁にやるかで、意見が分かれたと言う。

ミラ嬢とすれば、家に平民を入れるのは問題外で、自分が嫁になればいつかは目が覚めて愛してくれるようになる、と考えていたようだが、そうはなっていない。


この件については、ミラ・コーリンも侯爵家に陥れられた方だろう。彼女のやり過ぎを諌めなかったのもこの契約を成立させるため。

最初から彼女の嘘には気づいていただろうに。だから、高位貴族は苦手なんだ。


忌々しい気持ちを抱えたまま、馬車は通り慣れた道を走っていく。自分が先に領地へ向かうことはあっても、後からすぐケイトが来ていたのに、それが永遠に失われたことに、まだ実感がわかない。

ケイトが亡くなったことは頭で理解していると言うのに。

ケイトを大切にしていた、とはもう言えなくなっている。少し調べただけで、彼女が厄介ごとに巻き込まれていたらしいことぐらいはわかるのに、その片鱗さえも気づかずに、何も問題はないと思い込んでいた。

妻だって、そんな夫に何の説明もせずに、一人で耐えていたのだ。彼女の居ない今その問題を解決することに何の意味があるのか。それは自分でもわからない。ただ、今更かもしれないが、自分が妻の為に何かした、と言う実績が欲しいのかもしれない。そうでなくては、自分が死んだ後、ケイトに笑いかけてもらえなくなる。それだけは嫌だ。
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