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用途
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箱をもう一度手に取ると、今度は痛みを感じることはなかった。
「一種の手品みたいなものだよ。つまりはタネも仕掛けもあるってこと。君がさっき感じた痛みは、チクリと刺すような痛みだっただろ?それは、ある花の根の毒に触れた時に感じる痛みなんだ。」
ハッとして、アントンの顔を見つめると、彼は首をゆっくりと横に振る。
「触っただけなら、問題ないよ。それにこれにはもう毒は入っていない。」
「前世の記憶は、毒に浮かされた幻覚症状だと?」
「それだけじゃないよ。毒による幻覚症状の発生している間に意思を持って他人の記憶を覚え込ませ、一種の洗脳状態を作り出したんだ。現状に不満があれば、今とは全く違った世界を見たがるだろう?
前世の記憶を望む者は少なからず今に不満のある人だ。だから、そう言う人に夢を売って、恩を売って、稼ごうとしているんだよ。」
「それと、エミリア・エポックの正体と何の関係があるんだ?」
アントンはまだ話したいことがあるようで、問いには答えてくれない。目の前のお茶が冷たくなっている。侍女を呼んで入れ直して貰うと甘い香りが部屋中に広がった。
「このカラクリ箱は、ブラウン家の領内にある工房で作られているのか?」
「いや、それは……確かデイビスが昔奥方と一緒に行ったことのある工房の作品だと聞いた。夫人の知り合いがその工房に縁があったとかで、……そうだよな?」
確かにデイビスのところに返ってきたケイトのカラクリ箱とにているだけはあったか。まさか、同じ工房だとは思わなかったけれど。
ここまでの話を聞いて、彼らがどこに着地したいかわからずにいる。ブラウン家の研究が違法かどうか、と、前世ビジネスが問題になりつつあることは理解できた。
「ブラウン家はこの事件には関係のない姿勢を貫いている。だが、あの花の根は医療以外の用途での使用は求められていない。ましてや、一時的とはいえ、幻覚を引き起こすほどの用量なのだから、罪に問われても仕方ない立ち位置だ。
ただブラウン家の当主は君が知る通り、そんなに頭が回る方ではない。と言うからには、入れ知恵をした者がいると言うことだ。」
ケイトの兄は、ただの駒だと言うことか。
デイビスは密かに妻に会ってから今までの記憶を呼び起こす。カラクリ箱の工房にはどんな手順で行くことになったのだったか。確かケイトが知り合いに聞いて、行ってみたいと言ったのか。
あの時の「知り合い」とは誰のことだ?深くを聞かなかったことを今頃になって後悔してしまう。
ふと、デイビスはある人物の立ち回りに違和感を覚える。
改めて見ると、おかしいと思う自分と、そうでもない、と思う自分が喧嘩をしている。これは幻覚などでは断じてない。
それでも、これをすることで、彼に何の意味があるのかがわからない。いや、そんなのはわからないものかもしれない。だからこそ、余計に気になり、デイビスは彼の行動を頭の中で追いかけてみることにした。
「一種の手品みたいなものだよ。つまりはタネも仕掛けもあるってこと。君がさっき感じた痛みは、チクリと刺すような痛みだっただろ?それは、ある花の根の毒に触れた時に感じる痛みなんだ。」
ハッとして、アントンの顔を見つめると、彼は首をゆっくりと横に振る。
「触っただけなら、問題ないよ。それにこれにはもう毒は入っていない。」
「前世の記憶は、毒に浮かされた幻覚症状だと?」
「それだけじゃないよ。毒による幻覚症状の発生している間に意思を持って他人の記憶を覚え込ませ、一種の洗脳状態を作り出したんだ。現状に不満があれば、今とは全く違った世界を見たがるだろう?
前世の記憶を望む者は少なからず今に不満のある人だ。だから、そう言う人に夢を売って、恩を売って、稼ごうとしているんだよ。」
「それと、エミリア・エポックの正体と何の関係があるんだ?」
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「このカラクリ箱は、ブラウン家の領内にある工房で作られているのか?」
「いや、それは……確かデイビスが昔奥方と一緒に行ったことのある工房の作品だと聞いた。夫人の知り合いがその工房に縁があったとかで、……そうだよな?」
確かにデイビスのところに返ってきたケイトのカラクリ箱とにているだけはあったか。まさか、同じ工房だとは思わなかったけれど。
ここまでの話を聞いて、彼らがどこに着地したいかわからずにいる。ブラウン家の研究が違法かどうか、と、前世ビジネスが問題になりつつあることは理解できた。
「ブラウン家はこの事件には関係のない姿勢を貫いている。だが、あの花の根は医療以外の用途での使用は求められていない。ましてや、一時的とはいえ、幻覚を引き起こすほどの用量なのだから、罪に問われても仕方ない立ち位置だ。
ただブラウン家の当主は君が知る通り、そんなに頭が回る方ではない。と言うからには、入れ知恵をした者がいると言うことだ。」
ケイトの兄は、ただの駒だと言うことか。
デイビスは密かに妻に会ってから今までの記憶を呼び起こす。カラクリ箱の工房にはどんな手順で行くことになったのだったか。確かケイトが知り合いに聞いて、行ってみたいと言ったのか。
あの時の「知り合い」とは誰のことだ?深くを聞かなかったことを今頃になって後悔してしまう。
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