伯爵夫人を殺したのは誰だ

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ケイト・モリス②

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シルバとの話は面白かった。彼の話を聞いていると、自分がいかに狭い世界で生きて来たかわかる。彼はケイトと然程歳が変わらないのに、たくさんの事を知っていた。

「ケイトはいつも驚いてくれるから脅かしがいがあるよ。」

悪戯を仕掛ける時にどうしても笑ってしまうエミリア達とは違って、シルバは顔色一つ変えずに、最後までやりのける。

「シルバに嘘をつかれたら最後まで気がつかない自信があるわ。」

シルバはいつも、満足そうに頷いて、「君には嘘はつけないよ。良心が痛むからね。」と最後には約束してくれる。

「今度、女学園で演劇をやることになったの。何かいい脚本でもないかしら。」
「なら、あの話にすれば良いんじゃない?」
「あの話?」
「あの、シルバが言ってた……」
「溺れた魚の話?」
「違うわよ。人形が送られてくるアレ、箱のサイズを調整して入れば、皆を驚かせられるわよ?」

友人達が話しているのは、シルバが教えてくれたある箱の話。

ある冬の日、主人公の元にある箱が届く。差出人は書かれておらず、誰かの悪戯だと思われた。届いた箱は何かの仕掛けがあるのか開かない。

また次の日、同じ時間に今度は前日の箱よりも少しだけサイズの大きな箱が届く。中にはカラクリ箱の開け方が一つずつ書いてあるメモが入っている。

最初に届いた小さな箱には何か入っていて、開け方は翌日からの箱に記されている。

そうして最後に届いた箱の中には、人間を模った人形が入っていた。

人形を見てみると、目の部分に空洞があり、そこには最後の開け方が書いてある。

ワクワクして、小さな箱を開けると、そこには?

という話。

彼の話し方もあるんだろうけれど、途中から不穏な空気がして来て、初めて聞いた時はかなり泣きそうになっていた。


「カラクリ箱の話なら、他にもたくさんあるのに、よりにもよってソレ?いつまでも同じ景色だと、飽きるんじゃないの?」

「確かにそうね。それなら、あの遺言の話にする?」

皆が盛り上がる最中、エミリアの、普通の恋愛話が良いんじゃない、との一言で、すぐに状況は変わってしまった。

シルバの話は、いつも少し暗く、不穏な空気に包まれている。見ている人の中にはホラーが苦手な人もいるだろう。ケイトはその後、皆の意見で男装することになり、結果これが見に来た人に受けた。

エミリアはケイトには優しいが、シルバを全面的に信頼するのは、危険だといつも言っていた。人の好き嫌いを口にしない彼女には珍しい反応だった。

「お願いだから、一人きりの時にはシルバに会いに行かないで。」

エミリアだけでなく、シルバの妹であるリディまでがそう言ったのは、驚いたが、ケイトは変わらずにシルバに会い続けた。

彼女達の真剣さを侮っていた訳ではない。ただ、ケイトにとって、婚約者以外で一番頼りにしていたのが、シルバだっただけだ。
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