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ケイト・モリス③
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リディが、女学園を辞めて、平民に嫁いだのは、劇が大成功してから、少し経った頃だった。リディ本人から話がなく、突然だったことから、何となくこれは本人の意思ではないのではないか、と推測出来たが、案の定だった。理由はどうあれ、家を没落させている彼女の両親は平民になっても、娘を政略結婚の駒とした。
心配になって、シルバの元に駆けつけたケイトだが、彼は普段と変わりなかった。
「政略結婚だからといって、幸せになれない訳じゃない。ケイトが言ってたじゃないか。互いを尊重していたら、いつの間にか好きになっていた、って。」
婚約者ってどんな人?と聞かれて、話したことをシルバは覚えていたようだ。
「リディは確かに両親に大金の代わりに売られたようなものだけど、相手はそんなに酷い人ではないみたいなんだ。何より彼女の能力を買ってくれて、彼女の意見を聞いてくれる人らしい。本当なら女学園卒業まで待ってくれる筈だったんだけど、状況が変わってね。リディは承知の上で、こうなっているから、心配しなくていいんだよ。」
「リディのことはわかったわ。心配だし、話が出来なかったのは悲しいけれど、彼女が幸せになるなら、それでいいわ。」
リディのことがあってからエミリアはあまり話さなくなったけれど、シルバから聞いたことを話せば、一旦は納得したみたいだった。
「ところで、またあの男に会いに行ったのね。」
「うん、だって心配だったから。」
「なら私も誘ってよ。一人で行くのはやめて、と言ったじゃない!」
エミリアは普段冷静な子なのに、シルバに対してだけ、何故か余裕がなくなる。
「恋、じゃない?」
エミリアの態度に悩んでいると、ある女性が割り込んできた。彼女は全ての事象には恋愛が絡んでいる、という自論のある所謂恋愛脳の持ち主。
だからといって、頭が花畑ではないところが面白い子爵令嬢のアリア。
エミリアの態度は明らかに恋とは真逆の感情だと思うのだが、それは彼女がまだ自分の気持ちに気がついていないからだ、と言われると、そうなのかな?とどれだけあり得なくても一旦考えてしまう。これは彼女の断定的な物言いが原因だと思う。ああも自信満々に言い切られると、優柔不断な人間は押し切られてしまう。
ここからどう説明したところで、彼女の中で「エミリアは恋をしている」ということは既に確定している為、下手に巻き込まれかねない。彼女を論破できないと、「それに横恋慕しているケイト」が足されるだけで、こちらに良いことなんて一つもないのだ。
エミリアは果敢にも彼女に対抗していた。
「あまりおすすめはしないけれど、相手に会えば恋愛とは違うってすぐにわかるわ。」
彼がリディの兄だと聞いて、妄想を膨らませていたアリアだが、本当に実際にシルバに会ってからは、エミリアの言ったことがわかったらしい。何があったかは言わなかったが、アリアはそれから全く人が変わったように、恋愛のれの字も言わなくなってしまった。
アリアとは入れ違いに、ケイトに近づいて来た人物と言うと、ケイトといつも勉強で順位を争っているキンバリー・グリーンだ。
ケイトは、最初、何でもハッキリと言い切る彼女のことを嫌いだった。同じ言い方でもアリアのことは嫌いではなかったのに、何故だろう?
理由はわかっている。彼女は初めからエミリアを色眼鏡で見ていた。
「彼女と付き合うと、貴女まで虐められるわよ。」と丁寧に忠告してくれたが、エミリアには虐められている事実は無かった。
「それ、誰の話?」
当のエミリアはどちらかというと、虐められるより、虐めを止めに入る側だし、何より同じクラス内は仲間意識が強く、仲が良い。すれ違いで言い合いになることはあれど、エミリアはその性格で上手く治めていく。
だから、ケイトはそれ以上彼女に構うつもりはなかったのだが、そうは上手くはいかなかった。
心配になって、シルバの元に駆けつけたケイトだが、彼は普段と変わりなかった。
「政略結婚だからといって、幸せになれない訳じゃない。ケイトが言ってたじゃないか。互いを尊重していたら、いつの間にか好きになっていた、って。」
婚約者ってどんな人?と聞かれて、話したことをシルバは覚えていたようだ。
「リディは確かに両親に大金の代わりに売られたようなものだけど、相手はそんなに酷い人ではないみたいなんだ。何より彼女の能力を買ってくれて、彼女の意見を聞いてくれる人らしい。本当なら女学園卒業まで待ってくれる筈だったんだけど、状況が変わってね。リディは承知の上で、こうなっているから、心配しなくていいんだよ。」
「リディのことはわかったわ。心配だし、話が出来なかったのは悲しいけれど、彼女が幸せになるなら、それでいいわ。」
リディのことがあってからエミリアはあまり話さなくなったけれど、シルバから聞いたことを話せば、一旦は納得したみたいだった。
「ところで、またあの男に会いに行ったのね。」
「うん、だって心配だったから。」
「なら私も誘ってよ。一人で行くのはやめて、と言ったじゃない!」
エミリアは普段冷静な子なのに、シルバに対してだけ、何故か余裕がなくなる。
「恋、じゃない?」
エミリアの態度に悩んでいると、ある女性が割り込んできた。彼女は全ての事象には恋愛が絡んでいる、という自論のある所謂恋愛脳の持ち主。
だからといって、頭が花畑ではないところが面白い子爵令嬢のアリア。
エミリアの態度は明らかに恋とは真逆の感情だと思うのだが、それは彼女がまだ自分の気持ちに気がついていないからだ、と言われると、そうなのかな?とどれだけあり得なくても一旦考えてしまう。これは彼女の断定的な物言いが原因だと思う。ああも自信満々に言い切られると、優柔不断な人間は押し切られてしまう。
ここからどう説明したところで、彼女の中で「エミリアは恋をしている」ということは既に確定している為、下手に巻き込まれかねない。彼女を論破できないと、「それに横恋慕しているケイト」が足されるだけで、こちらに良いことなんて一つもないのだ。
エミリアは果敢にも彼女に対抗していた。
「あまりおすすめはしないけれど、相手に会えば恋愛とは違うってすぐにわかるわ。」
彼がリディの兄だと聞いて、妄想を膨らませていたアリアだが、本当に実際にシルバに会ってからは、エミリアの言ったことがわかったらしい。何があったかは言わなかったが、アリアはそれから全く人が変わったように、恋愛のれの字も言わなくなってしまった。
アリアとは入れ違いに、ケイトに近づいて来た人物と言うと、ケイトといつも勉強で順位を争っているキンバリー・グリーンだ。
ケイトは、最初、何でもハッキリと言い切る彼女のことを嫌いだった。同じ言い方でもアリアのことは嫌いではなかったのに、何故だろう?
理由はわかっている。彼女は初めからエミリアを色眼鏡で見ていた。
「彼女と付き合うと、貴女まで虐められるわよ。」と丁寧に忠告してくれたが、エミリアには虐められている事実は無かった。
「それ、誰の話?」
当のエミリアはどちらかというと、虐められるより、虐めを止めに入る側だし、何より同じクラス内は仲間意識が強く、仲が良い。すれ違いで言い合いになることはあれど、エミリアはその性格で上手く治めていく。
だから、ケイトはそれ以上彼女に構うつもりはなかったのだが、そうは上手くはいかなかった。
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