伯爵夫人を殺したのは誰だ

mios

文字の大きさ
26 / 53

ケイト・モリス④

しおりを挟む
キンバリー・グリーンは何故だか妙にケイトに絡んで来た。ケイトのことは、エミリア達に良いように操られている可哀想な令嬢に見えるらしい。突然現れては「私は貴女の苦労がわかっているわ。私の友人になれば、あの生意気な平民達から助けてあげられる。」だの、「あれは寄生虫よ。甘い顔をしていると、どこまでも貴女に執着するわ。」だの、友人を悪く言うので話をするのも聞くのも嫌になって、その内に彼女の姿が見えると、隠れるようになっていった。

ケイトは彼女が絡むのは自分だけだと思っていたが、エミリアや、ミラにケイトの友人を辞めるように言いに来たそうだ。

ミラはコーリン子爵家のご令嬢で、彼女に夢中な婚約者がいる。同じ子爵家の嫡男で女学園を卒業後、結婚が決まっているそうだ。彼女はとても彼が大好きなようで、見ていて微笑ましい。

「ケイトの友人だって、あのキンバリーが言いふらしているって知ってた?」
ミラが心配そうにこちらを見る。
「あんなに避けられているのに、何でわからないんだろ。」
「あの人、エミリアや私にケイトについてやたら親友風吹かしてくるんだけど、聞けば聞くほど、どこのケイトですか?って聞きたくなるくらい、ケイトじゃないの。あの人他に友達いなさそうだからかな。何かすごく執着されてるね。」

ケラケラと笑いながらミラは言うが、ケイトからすれば笑い事ではない。

「本当にどうにかならないかしら。ちょっと異常よね。私なんかに何故執着するのかな。ただの友人なら良いけれど、他の大切な人達を貶める人は嫌なのよね。」

「それを聞いてもらうのが一番だけど逆上したら尚更厄介よ。今まで通り、できればそれ以上、会わないのが良いと思うわ。」

エミリアはミラと一緒に、「彼女の相手は私達に任せて!」と平民がよくやるように親指を立てるポーズをした。

「でも、貴女達にばかり助けてもらってるような気がするわ。二人とも無理はしないでね。あんまりひどい場合には、抗議することも考えているから。」

同じ子爵家とはいえ、グリーン家と、ケイトの実家は雲泥の差。勿論雲は彼方側。抗議をしたところで一笑に付されるか、若しくは怒りを買ってしまうか。

ふと、グリーン家の何番目かの兄君がレノー侯爵家に婿入りした話をどこかで聞いた気がして、記憶を辿る。つい先日その話を誰としたのだろう。



確か、レノー侯爵夫人は、学園での劇を見に来てくださっている。私にとても好意的で、婚約者とも同じ時期に学園に通っていたと言うし、どうしても無理だと思えばそちらから、苦情を言うのは可能だろうか。

婚約者のデイビスには、まだ侯爵夫人とのことを話していないが、失礼に当たらないかだけ、聞いてみるのも良いだろう。

ケイトは断るのが下手だと自覚している。自分に自信がないから、拒否される痛みも知っていて、だから、キンバリーを断りきれない。

エミリアもミラもそれをわかっているから、私にも強く言わずに、見守ってくれているのだ。

私はもっと強くならなければならない。周りをちゃんと守れるように。当面は、あのキンバリー・グリーンから。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

お飾り妻は天井裏から覗いています。

七辻ゆゆ
恋愛
サヘルはお飾りの妻で、夫とは式で顔を合わせたきり。 何もさせてもらえず、退屈な彼女の趣味は、天井裏から夫と愛人の様子を覗くこと。そのうち、彼らの小説を書いてみようと思い立って……?

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

番など、今さら不要である

池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。 任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。 その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。 「そういえば、私の番に会ったぞ」 ※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。 ※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。

侯爵様の懺悔

宇野 肇
恋愛
 女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。  そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。  侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。  その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。  おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。  ――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。

[きみを愛することはない」祭りが開催されました~祭りのあと2

吉田ルネ
恋愛
出奔したサーシャのその後 元気かな~。だいじょうぶかな~。

処理中です...