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隠されていないもの
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リスキー侯爵家は、夫人と離縁してから、急激に力を落とした。これまで家のことを夫人に全部任せていたのだから当然だ。ついでに、前の侯爵夫人も、家を出て行ったというし、侯爵家に残ったのは名前だけで何もできない男達と、その寄生虫のみ。
ミラ・コーリン子爵令嬢は、女学園出身の中でも、優秀な方だった。何より卒業後結婚する予定だった婚約者と、領地運営をするためにずっと勉強していたのだから。
アーサーが追加で調べ直してみたところ、コーリン子爵令嬢を嵌めた人物に行き着いた。
彼女は自称ケイトの親友で、コーリン子爵令嬢のことを「寄生虫」と称した。デイビスは一度騙されている。彼女は女学園時代、ケイトに粘着していたようなので、常にそばにいて信頼しあっていた令嬢達に嫉妬したのだろうか。
事実がわかった今、ケイトが彼女を「信頼できる者」と言ったことも、「ケイトからの紹介」も、嘘であったことになる。
「どうして今頃現れたんだろうか。一度は、ケイトへの執着を辞めたんだろう?」
キンバリー・グリーンは、一度は離れたケイトに再び執着して来たが、その意味は何だろう。
「昔の知り合いが自分を訪ねてくるなんて、私は一つか、二つの理由しか思いあたりません。」
「俺もだ。金の無心か、何かの勧誘か、だろうな。」
「ええ。どちらも回避したいものではありますね。」
キンバリー・グリーンが何を思っていたのかはわからない。ただ仕事を世話して欲しかったのか?
「けれど、どうして奥様は彼女に、仕事を紹介したのでしょう。女学園時代は彼女にうんざりしていたようですので、奥様には断るという選択肢もあった筈です。」
「……ケイトが弱味を握られていたと?」
「少なくとも、女学園時代にそのような弱味は掴めなかったと思いますよ?」
「なら、それから、ということか。」
もう一度キンバリー自身に話を聞くという案はデイビスにはない。聞いたところで嘘ばかりだと、わかっているのだから。
「もう一度、リスキー、いや、コーリン子爵令嬢に話を聞いてみても、良いと思うか。」
「一番は、エポック嬢に聞けたら良いんですけどね。多分あの方なら全て明らかになるでしょうに。これを読むところでは、犯人という推理はあり得なさそうですし。」
アーサーが手にしているのは、ケイトの部屋に隠されていない状態で無防備に置いてあった彼女のスケジュール帳だ。
日記とは異なり、ここには日々の出来事が端的に書いてあり、そこには空白と言っても、一言ぐらいしか書くことはできない。
そのスケジュール帳に必ず登場するのが、エポック嬢だ。そのスケジュール帳から推測するに、本当にケイトが一緒に働きたかったのは、グリーン嬢ではなく、エポック嬢だとわかった。
グリーン嬢があの手紙を持っていたということは、エポック嬢かケイトから取り上げたことになる。
そして、スケジュール帳にはグリーン嬢のことは一切登場しない。
彼女はどうやって、あの書類を手に入れたのか。デイビスは、エポック嬢ではなく、ケイトを殺したのはグリーン嬢ではないかと疑い始めていた。
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事実がわかった今、ケイトが彼女を「信頼できる者」と言ったことも、「ケイトからの紹介」も、嘘であったことになる。
「どうして今頃現れたんだろうか。一度は、ケイトへの執着を辞めたんだろう?」
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「けれど、どうして奥様は彼女に、仕事を紹介したのでしょう。女学園時代は彼女にうんざりしていたようですので、奥様には断るという選択肢もあった筈です。」
「……ケイトが弱味を握られていたと?」
「少なくとも、女学園時代にそのような弱味は掴めなかったと思いますよ?」
「なら、それから、ということか。」
もう一度キンバリー自身に話を聞くという案はデイビスにはない。聞いたところで嘘ばかりだと、わかっているのだから。
「もう一度、リスキー、いや、コーリン子爵令嬢に話を聞いてみても、良いと思うか。」
「一番は、エポック嬢に聞けたら良いんですけどね。多分あの方なら全て明らかになるでしょうに。これを読むところでは、犯人という推理はあり得なさそうですし。」
アーサーが手にしているのは、ケイトの部屋に隠されていない状態で無防備に置いてあった彼女のスケジュール帳だ。
日記とは異なり、ここには日々の出来事が端的に書いてあり、そこには空白と言っても、一言ぐらいしか書くことはできない。
そのスケジュール帳に必ず登場するのが、エポック嬢だ。そのスケジュール帳から推測するに、本当にケイトが一緒に働きたかったのは、グリーン嬢ではなく、エポック嬢だとわかった。
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そして、スケジュール帳にはグリーン嬢のことは一切登場しない。
彼女はどうやって、あの書類を手に入れたのか。デイビスは、エポック嬢ではなく、ケイトを殺したのはグリーン嬢ではないかと疑い始めていた。
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