伯爵夫人を殺したのは誰だ

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別邸で起きたこと①

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「奥様、お客様を別邸でお迎えするのですか?」

モリス伯爵家には王都、領地以外にもバカンスの時期だけの滞在だったり、その他必要な時に泊まれる為だけに用意された別邸がたくさん存在する。

各邸には、そこに見合った使用人が存在し、いつ訪れるかわからない主人を待つように邸を綺麗に掃除し、修繕し、管理している。

王都と領地の邸以外には、奥様の商会の為の邸があり、そこには基本的に奥様しかいる事はない。たまに、奥様に会いに旦那様が来ることもあるが、基本的には奥様の専用の邸であった。

ここに、奥様は貴族のご婦人方だけでなく、平民の女性もお客様として呼んでいた。

伯爵家の侍女には平民もいるが、ほとんどは貴族の令嬢だったりする。自分よりも身分の低い平民に仕えることは少し複雑な気分でもあるが、奥様の友人として敬意を持って接することは、難しくはなかった。

ケイト・モリスに付いていた侍女の一人であるココ・ジャレッドは、エミリア・エポックの訪れに、ザワザワする気持ちを見ないようにした。

元は同じ男爵令嬢、あちらは没落し平民に落ちたが、特待生として女学園に入れるだけの賢さがある。ましてや、仕えている奥様のご友人として貴族家に呼ばれて直接的ではなくとも、私達を使える立場にいる。

ココ・ジャレッドが伯爵家に来たのはケイトが輿入れしてからのことだった。その為、他の侍女とは違い、伯爵家に仕えると言うよりはケイトに仕えている感覚を抱いていた。

ココにはケイトを害しそうな人物がわかる、と言う力がある。これは彼女に何か特別な力があるわけではなくて、単にケイトを愛しすぎている弊害のようなものだった。

例えば伯爵様に妹としてにじり寄るご令嬢だったり、ケイトに友人として嫌なことを言おうと待ち構えている商会関係者だったり。

今までそう言った人物にはなるべくケイトから距離を取って貰うように会話を誘導したりして過ごしていた。


ココは彼女独自のアンテナを張り巡らし、奥様に危害を与えようとする使用人の一人に気がついた。昨日と人が変わったような彼女に、ココは嫌な予感を覚えた。

ココは彼女に監視をつけた。これは伯爵の侍従であるアーサーに頼まれたことだ。ココが確実に奥様の味方であることを知っているアーサーは、ココの直感を軽く見ることはない。

奥様の近くにいる人物は皆監視をつけている。彼らは善行、悪行に関わらず、奥様を取り囲んでいる。

「エミリアを別邸に呼んで、二人だけの茶会をしようと思うの。」

ココとケイトの会話に不自然なタイミングで割り込むのは同じ奥様付きの侍女。

ココは自らの身体を張って、奥様を守ることにした。

その際、エミリア・エポックは守れるかわからない。念の為、二人とも一緒に守る為に、人を他にも配置したが、最悪の場合、奥様だけは守るつもりだった。
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