伯爵夫人を殺したのは誰だ

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エミリア・エポック①

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最初に相談?を受けたのは、女学園の卒業が間近になった辺り。女学園を卒業後すぐに伯爵家に嫁ぐと思い込んでいた友人達は驚いて、ケイトに詰め寄った。

何か悪いことが起きているのなら、力になりたいと、伝えたくて。だが、ケイト自身には特に何もないという。

「ただ伯爵夫人がねー、縛られてしまうというか。大変なのよ。」

「嫁姑問題?」

「だったらまだ良かったんだけど。」

エミリアにとって、伯爵夫妻なんて、雲の上の存在でお会いしたことなどない。勿論、ケイトから為人を聞く限り、夫人に巷に聞くような姑要素はなさそうだな、と判断したのだが、実際にはどうかはわからない。ケイトに辛く当たるのかも知れないし、息子を溺愛して、ケイトに嫉妬するのかも知れない。

「結婚を迷っているわけではないのよ?今更あの人と離れられるかと聞かれたら既に情が湧いてしまっているから、難しいとしか言いようがないけれど、ただそのまま流されて伯爵家に入るのも違うのかなって。」

「何か、やりたいことでもあるの?なら伯爵夫人としてではなく一個人としてそれをやれば良いんじゃない?そうしたら、伯爵家の仕事に疲れても逃げ場所が出来るし、懐も潤うから心の余裕が出来るわよ?」

エミリアの意見は、最近実家の隣に越してきた一家の奥さんの受け売りだ。彼女自身が働いているから、旦那さんの稼ぎに左右されることなく、自由で居られると話していた。

エポック家がまだ貴族だった頃、母は働いていた。夫人にまで働かせていると、蔑まれることは多かったが、何もしていないご夫人が幸せそうかと聞かれると首を傾げてしまう。

エミリアは大きくなったら、身分には関わらずとも母のように働く術を身につけたいと思っていた。働くには知識がいる。平民になって、貴族ではないのに、貴族が通う学園に通うのは気が引けたが、女学園の方だと平民でも自由に通うことが出来た。実際、平民の特待生に対する軽い嫌がらせはあったが、それは暇を持て余していた数人だけで、勉強やら仕事やら目標に向かって努力している者達には虐めなどは無縁なものだった。

同じく特待生となったリディは、エミリアと仲良く話すような関係ではなかった。同じ没落貴族でもその歴史はあまりにも違う。

彼女が声をかけてきたのは、エミリアとケイトが件の劇を成功させる少し前。

シルバとケイトの仲を取り持ったのはリディだけど、それから何故か彼女の態度は変わった。シルバを見る目が違う。今までは仲の良い兄妹だったのに、ふと違う人物を見るような睨むようなそんな目を向けるようになった。

二人の仲を聞こうにも、そこまで入り込んでいいのか躊躇っていると、リディは「今から私、変なことを言うから、本気にしないで。」と言い出した。

「あのね、兄は……前の人生では、女の子だったみたいなの。別の、人格?人生?何かははっきりわからないけれど、兄の中には兄以外の誰かがいて、兄の体を乗っ取っている。昨日、聞いてしまったの。彼女?兄の中にいる女の子の企みを。」



とてもおかしな話だけど、エミリアは笑う気にも、否定する気にもなれなくて、ただそのまま話を聞いていた。
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