馬鹿につける薬あります

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機会は与えられた ルイス視点

『馬鹿につける薬』
兄のネーミングセンスには少し悪意があるが、おかげで彼女の目に留まることが出来た。

彼女には目を覚まして貰いたい。あわよくば自分のことも思い出してくれるかも、なんて。淡い期待はすぐになくなってしまったけれど。

彼女は辺境にて、四人の兄弟に囲まれた小さな姫だった。皆その視界に入りたくて、入れない存在。

シガニ卿に薬を作る腕を見込まれ、研究を繰り返していた時に彼女に会えた私は運が良かった。彼女は口の悪い兄にも楽しそうに話しかけ、キャッキャしていた。あの時は幼かったからまだ覚えていなくても仕方ない。

ルイスはあれだけ会いたいと思っていたステラの護衛になれたことを不思議に思う。辺境にいるからには、と幼い頃から訓練を受けた身ではあるが、自分より強い者などいくらでもいる。シガニ卿の思惑は誰にもわからないが、何かを期待しているのだけは確かだ。

要はその期待が何かわからないと言うことと、期待がいつ失望に変わるか不安と言うことだけ。

「あの子は良くも悪くもお嬢様だ。目を覚まさせてやるのは兄としての役目だ。」

「あれは馬鹿女に成り下がったな。話しても良い感じではなかった。何だか残念だ。」

シガニ卿と、兄に言われた言葉を反芻する。二人に共通することは、彼女の目を覚ましたいと言うこと。

彼女の事情は、護衛についてみて、漸くわかってきた。圧倒的に絡む人間が少ない。だから、一人の人に対する信頼が桁違いに高くなる。

侍女のサラとしかほぼ話していない。友人は?いるにはいるが、ステラは友人達を一生の友とは思っていないみたいだ。貴族令嬢達ってこんなにシビアなの?

ルイスは辺境で暮らしていたから、知らなかったことはたくさんあるが、これは知りたくなかった。

家の動向に左右されるのだから、何事もシビアにならざるを得ないのは、ある意味仕方のないことかもしれない。



ステラの護衛につくまでに、シガニ卿に言われてある修道院にいるある女性を訪ねた。彼女は、スザンヌといい、ヨハンの元不貞相手だ。

こちらで調べたことと、彼女の真実を擦り合わせしたかったのだが、彼女は嫌な目にあったにも関わらず、反抗もせず全てを話してくれた。

「私は事件の被害者でもありますが、不貞に関しては加害者でもありますから。」

その態度は策略でもあったのかもしれないが、私には好印象だった。

彼女の証言は概ねこちらの予想通り。ただ、彼女自身が気づいていない感情として、ステラに対して良くない感情を抱えていることがわかった。

「恵まれた環境にいながら、何も知らないでいられる女」と、称したのは、何となく兄の口の悪さに通じるものがあったりして、感慨深い気持ちになった。

皆が彼女の視界に入りたくて、入れなくて。

入れたとして、その目が節穴ならば、失望は更に大きくなるだろう。

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