馬鹿につける薬あります

mios

文字の大きさ
14 / 22

馬鹿にも種類はあるようで

「あいつの何が不満なんだ。」
「ルイスに不満なんてないわ。私に問題があるだけ。」

ルイスの兄、ディオの店にはいつもルイス作の面白い薬やら見たこともない玩具がある。ディオは口が悪いけれど、こちらが悩んでいると話を聞いてくれるし、無視したりしない。接客業なだけあって、他の人には愛想も良いし。何故か私にはあまり、だけど。

「どうせ、今まで受け身で流されてきたから、今度は自分で動いてみたい、とかそう言うやつだろ。」

「え、何でわかるの?」

「馬鹿にも種類があるって本当だな。」
「え?」
「折角馬鹿が治ったのに、また新たな馬鹿になったってこと。」

「馬鹿は馬鹿なんだから、考えたところで馬鹿な思考しか出てこない。ならいっそ開き直れば良いんじゃないか?」

そんな身も蓋もない。

「要はルイスとずっと一緒にいたいかどうかってことだと思うぞ。一番大事なところは。他の人だと、ルイスが護衛として付いてくるのを嫌がるのが普通だろうな。主人より仲の良い男なんて。愛人連れて嫁入りなんて、おかしいだろ。」

「ルイスは愛人じゃなくて、友人よ。」

「そう思って貰える相手なら良いな。」

ルイスは友人。それを分かってくれる人なんて、限られる。なら、ルイス本人にまだ気持ちが伴っていないのに、甘えても良いのかな。

「ルイスの魅力は、どこまでも優しいってところだ。あと、俺と違って忍耐力があるところ。どこまで甘えていいかわからないなら、とことんまで甘えたら良い。やり過ぎると俺みたいなダメ人間が出来上がるが。」

ディオは自分をダメ人間だと、卑下するけど、単にルイスとは才能の方向性が違うだけだ。ルイスは集団の中にいても力を発揮できるが、ディオは一人での方が能力を発揮するタイプ。

彼の心の拠り所がルイスなのは見て取れた。誤解を受けやすく、生きるのが不器用な人。ディオは昔の面影そのままの人だ。

「ねえ、どうして、爵位を受けるのを断ったの?」

「面倒くせえから。爵位を持っていれば、遅かれ早かれ社交にはでないといけない。ルイスとは違って、俺は品行方正になれない。平民のままのがずっと良い。」

平民と貴族は結婚できないわけではない。だけど、あまり好ましくはない。だから、私と結婚するために、ルイスは貴族になった。兄と身分を違えてまで。

ステラに気を遣ったのかはわからないが、ディオはいつもの笑顔で笑っている。


「これは俺の人生。あいつにはあいつの、お前にはお前の人生があるように、俺は後悔なんてしない。後悔するのは、馬鹿のすることだからな。」


気がつけば、店には他の客がパラパラと、入ってきていた。腰を上げ、店を後にする。入り口付近にいたルイスはステラを見ると、嬉しそうに微笑んだ。

「兄と話は出来ました?」
「うん。また馬鹿って言われたわ。」
「兄の馬鹿は、挨拶みたいなものだから。」
「うん。もう慣れた。」

顔合わせが終わってから、またルイスは護衛に戻り、普通に過ごしている。

婚約が決まるまではそばにいてくれるらしい。彼を待たせることは悪いことよね?

横にいるルイスに目を向けると、微笑みを返してくれる。こちらはディオとは異なり、昔の面影より随分大人びた。


「何を悩んでるかは分かりませんが、一緒にいたい方が別にいるなら、振ってくださって構わないのですよ。以前から爵位を貰う話は出ていたので、貴女に私の事情を押し付ける気はありませんから。」

本当にこの兄弟は人の心を容易く読んでしまう。

「貴女の人生です。後悔しないように。」
「後悔するのは、馬鹿のすることですものね?」

ルイスは、少し寂しそうに笑って頷いた。




感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

恋の終わりに

オオトリ
恋愛
「我々の婚約は、破棄された」 私達が生まれる前から決まっていた婚約者である、王太子殿下から告げられた言葉。 その時、私は 私に、できたことはーーー ※小説家になろうさんでも投稿。 ※一時間ごとに公開し、全3話で完結です。 タイトル及び、タグにご注意!不安のある方はお気をつけてください。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

【完結】さよなら、馬鹿な王太子殿下

花草青依
恋愛
ビーチェは恋人であるランベルト王太子の傍らで、彼の“婚約破棄宣言”を聞いていた。ランベルトの婚約者であるニナはあっさりと受け入れて去って行った。それを見て、上手く行ったと満足するビーチェ。しかし、彼女の目的はそれだけに留まらず、王宮の平和を大きく乱すものだった。 ■主人公は、いわゆる「悪役令嬢もの」の原作ヒロインのポジションの人です ■画像は生成AI (ChatGPT)

婿入り条件はちゃんと確認してください。

もふっとしたクリームパン
恋愛
<あらすじ>ある高位貴族の婚約関係に問題が起きた。両家の話し合いの場で、貴族令嬢は選択を迫ることになり、貴族令息は愛と未来を天秤に懸けられ悩む。答えは出ないまま、時間だけが過ぎていく……そんな話です。*令嬢視点で始まります。*すっきりざまぁではないです。ざまぁになるかは相手の選択次第なのでそこまで話はいきません。その手前で終わります。*突発的に思いついたのを書いたので設定はふんわりです。*カクヨム様にも投稿しています。*本編二話+登場人物紹介+おまけ、で完結。

あなたの絶望のカウントダウン

nanahi
恋愛
親同士の密約によりローラン王国の王太子に嫁いだクラウディア。 王太子は密約の内容を知らされないまま、妃のクラウディアを冷遇する。 しかも男爵令嬢ダイアナをそばに置き、面倒な公務はいつもクラウディアに押しつけていた。 ついにダイアナにそそのかされた王太子は、ある日クラウディアに離縁を突きつける。 「本当にいいのですね?」 クラウディアは暗い目で王太子に告げる。 「これからあなたの絶望のカウントダウンが始まりますわ」

お別れを言うはずが

にのまえ
恋愛
婚約者に好きな人ができたのなら、婚約破棄いたしましよう。 エブリスタに掲載しています。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。