馬鹿につける薬あります

mios

文字の大きさ
18 / 22

子爵令嬢との対面

仕事が休みの日には、婚約者候補との交流がある。ほぼルイスばかりに偏るのはいつも一緒にいる時間が長いから。

ルイスの優しさに付け込んでいるようで申し訳ないと思うのだが、本人が爵位を持ったことで他の貴族とはどのみち交流しなくてはならない、というのでお言葉に甘えている。

彼は私情を挟まずに護衛に徹してくれている。

学生時代、友人と呼べる人間は少ないもののいたのだが、卒業後の交流は今の所ない。婚約問題でわちゃわちゃしていたのもあり、茶会などにも行けていないので当然といえば当然だ。

茶会に行けば、ストラウス公爵家のことを話すことになるだろう。まだ裁判が途中のものもある為話せるかどうかの確認も必要だ。

「サラ、私って、今までの人生、何をしていたのかな。」

婚約者がいなくなれば、自分には何もない。ヨハンの様な男でも何もない自分には十分すぎる相手だったのではないかと弱気になってしまう。

サラは最近こちらが、弱音を吐くたびに『馬鹿につける薬』を手にとるようになった。


「お嬢様は、考えすぎなんです。たまには、流されることも必要ですよ。」

「でも、私流されすぎたから馬鹿になったのよ。」

「本当ですね。」

サラが驚いて言葉を無くす。もう笑うしかないじゃない。

私の毎日の悩みを吹き飛ばしてくれたのは意外な人だった。

学園の途中から見なくなった彼女が私に面会を求めてきたのだ。

ヨハンと不貞をしたと噂の子爵令嬢だ。彼女はある事件の被害者でヨハンとの仲も彼女が望んだものではなかったと聞いている。

そんな彼女が私に会いたいと思うかな?

疑問は残るが、アレク兄様が認めたと言うことはちゃんと理由があるのだろう。私の為にならないことを兄様は望まない。

彼女はとても質素なワンピースを着ていた。メイクも控えめで別人みたいに見える。何より驚いたのは彼女の顔つきだ。私のことは前からあまり好きではなかったようでいつも睨みつけられていたように思うのだが、今の彼女からは強い感情は感じない。

互いに好意も感じないので、変わらず苦手は苦手なのだろうとは感じるがこれなら冷静に話はできそうだ。

「この度は誠に申し訳ありませんでした。」

既に平民と聞いていた彼女はその場でひれ伏した。そこまでしなくても、と止めようとした私に対して更に続ける。

「貴女の婚約者を奪い、私の方が愛されて申し訳ありませんでした。」

ん?

「貴女の幸せな人生を奪って申し訳ありません。」

謝る気ある?

彼女は漸く顔を上げると、全く謝る気はなかったと悪びれずに告げた。

「私は既に平民ですから切り捨ててもいいのですよ。どうしますか?」

「どうして欲しいの?切り捨てて欲しいわけ?」
「ご自分でお決めください。私は決められる立場にはありません。私はヨハン様が好きだったから誘いに乗ったのです。ヨハン様の婚約者である貴女のことは大嫌いでした。

貴女に会いに来たのは、このことを言う為です。貴女のお兄様にも言いたいことがあるなら最後にぶちまけてしまえ、と言われたので。

私に奪われたぐらいで生きる意味を失うぐらいならヨハン様にもっと縋り付くべきだったのよ。それもできないでただ楽な方に進んでるだけ。本当に馬鹿ね。

今日来たのは、自分の選択が間違っていなかったと再認識するためよ。貴女からヨハン様を奪って良かったわ。これは正しいことだったわ。だって、貴女ってつまらないのだもの。」

ここまで言われて私は言い返すことができない。

彼女はため息をついて、言いたいことだけ言って帰っていった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

断罪された薔薇の話

倉真朔
恋愛
悪名高きロザリンドの断罪後、奇妙な病気にかかってしまった第二王子のルカ。そんなこと知るよしもなく、皇太子カイルと彼の婚約者のマーガレットはルカに元気になってもらおうと奮闘する。  ルカの切ない想いを誰が受け止めてくれるだろうか。  とても切ない物語です。  この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。   

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

婿入り条件はちゃんと確認してください。

もふっとしたクリームパン
恋愛
<あらすじ>ある高位貴族の婚約関係に問題が起きた。両家の話し合いの場で、貴族令嬢は選択を迫ることになり、貴族令息は愛と未来を天秤に懸けられ悩む。答えは出ないまま、時間だけが過ぎていく……そんな話です。*令嬢視点で始まります。*すっきりざまぁではないです。ざまぁになるかは相手の選択次第なのでそこまで話はいきません。その手前で終わります。*突発的に思いついたのを書いたので設定はふんわりです。*カクヨム様にも投稿しています。*本編二話+登場人物紹介+おまけ、で完結。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

あなたの絶望のカウントダウン

nanahi
恋愛
親同士の密約によりローラン王国の王太子に嫁いだクラウディア。 王太子は密約の内容を知らされないまま、妃のクラウディアを冷遇する。 しかも男爵令嬢ダイアナをそばに置き、面倒な公務はいつもクラウディアに押しつけていた。 ついにダイアナにそそのかされた王太子は、ある日クラウディアに離縁を突きつける。 「本当にいいのですね?」 クラウディアは暗い目で王太子に告げる。 「これからあなたの絶望のカウントダウンが始まりますわ」

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

恋の終わりに

オオトリ
恋愛
「我々の婚約は、破棄された」 私達が生まれる前から決まっていた婚約者である、王太子殿下から告げられた言葉。 その時、私は 私に、できたことはーーー ※小説家になろうさんでも投稿。 ※一時間ごとに公開し、全3話で完結です。 タイトル及び、タグにご注意!不安のある方はお気をつけてください。