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エミリー
婚約者と私の初恋 エミリー視点
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婚約者の初恋の人は、可憐で、働き者。昔、彼の屋敷で働いていたメイドの娘で、彼と歳は近い。メイドが彼の屋敷を辞めた後、行方知れずになっていて、彼は彼女をずっと探していたという。
彼と婚約を結んだのは、一年前だけれど、私自身は彼を知っていた。幼い頃に彼に会い、私は一目で好きになってしまった。だから、私の初恋は正真正銘彼なのだけど、何故か彼からしたら、私の初恋は騎士団長ということになっていた。
騎士団長といえば、親友であり幼馴染のルカの父親で、ルカは幼い頃は美少女と間違う容姿だったのが、最近では父親に似てきている。
「昔は女顔がコンプレックスだったけど、今は父に似て、徐々に人からゴリラに近づいて行っているようだよ。」
ルカは涼しい顔をして冗談を言うから笑ってしまう。
「エミリーは、元気がないね。また、なのか。」
私は肯定も否定もせずに曖昧に笑う。
ルカは私があまりその話をしたくないのを、わかってくれるが、彼は私の代わりに怒っているらしい。
「君の婚約は少し早すぎたんじゃないかな。」
私もそう思う。
せめて、彼の初恋の人が現れてから、考えるべきだった。
私の婚約者であるオリバーは、初恋の相手が忘れられない困った人だ。そして、念願の相手が現れたことにより、婚約者の私ではなくて、その初恋の人の側にずっといる。
私は差し詰め彼らの恋路を邪魔する不埒者であり、悪役らしい。
悪役は、退治されるべきであり、滅びて当然の扱いだから、私を気にする人は誰も、いや、ルカ以外には誰もいない。
私と彼の婚約は、私の一存で決まったものでは決してない。私の家は伯爵家で、彼の家は公爵家。彼の家は公爵家でありながら、人に裏切られ、事業に失敗し、多額の借金を負った。その借金を肩代わりし、事業を共に行うことで纏まった政略的な婚約だ。
だが、彼は婚約の顔合わせの時から、相手に不満があると言うことを隠そうとはしなかった。
私は幼い頃の初恋が叶わないとその時身をもって知った。
彼は私を愛することはない。彼の心の中にはあの女性がいて、彼女以外目に入らないのだと。
「婚約を解消しても、いいのですよ。事業は、事業で進めていきますし。借金も少しずつで返済は可能ですので。」
彼の想い人が現れた際、一度だけ提案した私に彼は薄笑いを浮かべて、言った。
「初恋は叶わないものだから、これは成就しない。私が結婚するのは君だから、解消は必要ないんだよ。」
その言葉とは裏腹に、彼は常に彼女に寄り添う。私はそのまま捨て置かれ、面白おかしく噂される。
彼は、私などどうでもいいらしい。私がそう結論づけるのに、時間はかからなかった。
私と婚約する前のオリバーは、とても良く笑う、誰にでも優しい少年だった。思えばあの時は、まだ彼の側にあの人がいたのだろう。
彼女が居なくなって、急激に彼は大人になった。周りはそれを、成長と呼んだけれど、今ではそれが間違いだとわかる。彼女を失った彼は人生を諦めてしまった。
そして、年頃になった彼の前に再び現れた彼女によって、また彼の人生は輝き、安寧を、希望を手に入れた。
私は彼女を見ようとは思わなかった。彼と二人、仲睦まじい様子を見たいとは思わない。自分が惨めになりたくなかったから。
だけど、私を悪役にしたい人は確かに存在していて、私にわざわざ見せつけてくる。
彼と彼女の逢瀬を。恋人同士の風景を。
私の隣にいてくれたルカと顔を見合わせて、私は言葉をなくした。
たしかに、彼らは絵になるし、とてもお似合いだ。
「私、解消をお願いしてみるわ。私の手には負えないもの。」
ルカは私の震える肩を抱き締めてくれていた。
政略でもあったものの、私達の婚約について、両親は乗り気ではなかった。それと言うのも、彼の態度に不信感を抱いていた、と言うのが大きい。
私の期待が大きかったのも一因だが、娘を任せて良いと思える態度ではなかったらしい。
だから、私が彼との婚約解消を口にすると、両親は揃って喜んでくれて、すぐさま公爵様の元へ話をつけに行ってくれた。
公爵様は渋々受け入れてくれたらしいが、彼の不貞について、話すとそれだけは大きく否定した。
ただ、彼女の存在について言及すると、解消に応じてくれたことから、公爵様の知るところだったのだろう。
私の初恋は、婚約解消と共に消えて無くなった。
彼と婚約を結んだのは、一年前だけれど、私自身は彼を知っていた。幼い頃に彼に会い、私は一目で好きになってしまった。だから、私の初恋は正真正銘彼なのだけど、何故か彼からしたら、私の初恋は騎士団長ということになっていた。
騎士団長といえば、親友であり幼馴染のルカの父親で、ルカは幼い頃は美少女と間違う容姿だったのが、最近では父親に似てきている。
「昔は女顔がコンプレックスだったけど、今は父に似て、徐々に人からゴリラに近づいて行っているようだよ。」
ルカは涼しい顔をして冗談を言うから笑ってしまう。
「エミリーは、元気がないね。また、なのか。」
私は肯定も否定もせずに曖昧に笑う。
ルカは私があまりその話をしたくないのを、わかってくれるが、彼は私の代わりに怒っているらしい。
「君の婚約は少し早すぎたんじゃないかな。」
私もそう思う。
せめて、彼の初恋の人が現れてから、考えるべきだった。
私の婚約者であるオリバーは、初恋の相手が忘れられない困った人だ。そして、念願の相手が現れたことにより、婚約者の私ではなくて、その初恋の人の側にずっといる。
私は差し詰め彼らの恋路を邪魔する不埒者であり、悪役らしい。
悪役は、退治されるべきであり、滅びて当然の扱いだから、私を気にする人は誰も、いや、ルカ以外には誰もいない。
私と彼の婚約は、私の一存で決まったものでは決してない。私の家は伯爵家で、彼の家は公爵家。彼の家は公爵家でありながら、人に裏切られ、事業に失敗し、多額の借金を負った。その借金を肩代わりし、事業を共に行うことで纏まった政略的な婚約だ。
だが、彼は婚約の顔合わせの時から、相手に不満があると言うことを隠そうとはしなかった。
私は幼い頃の初恋が叶わないとその時身をもって知った。
彼は私を愛することはない。彼の心の中にはあの女性がいて、彼女以外目に入らないのだと。
「婚約を解消しても、いいのですよ。事業は、事業で進めていきますし。借金も少しずつで返済は可能ですので。」
彼の想い人が現れた際、一度だけ提案した私に彼は薄笑いを浮かべて、言った。
「初恋は叶わないものだから、これは成就しない。私が結婚するのは君だから、解消は必要ないんだよ。」
その言葉とは裏腹に、彼は常に彼女に寄り添う。私はそのまま捨て置かれ、面白おかしく噂される。
彼は、私などどうでもいいらしい。私がそう結論づけるのに、時間はかからなかった。
私と婚約する前のオリバーは、とても良く笑う、誰にでも優しい少年だった。思えばあの時は、まだ彼の側にあの人がいたのだろう。
彼女が居なくなって、急激に彼は大人になった。周りはそれを、成長と呼んだけれど、今ではそれが間違いだとわかる。彼女を失った彼は人生を諦めてしまった。
そして、年頃になった彼の前に再び現れた彼女によって、また彼の人生は輝き、安寧を、希望を手に入れた。
私は彼女を見ようとは思わなかった。彼と二人、仲睦まじい様子を見たいとは思わない。自分が惨めになりたくなかったから。
だけど、私を悪役にしたい人は確かに存在していて、私にわざわざ見せつけてくる。
彼と彼女の逢瀬を。恋人同士の風景を。
私の隣にいてくれたルカと顔を見合わせて、私は言葉をなくした。
たしかに、彼らは絵になるし、とてもお似合いだ。
「私、解消をお願いしてみるわ。私の手には負えないもの。」
ルカは私の震える肩を抱き締めてくれていた。
政略でもあったものの、私達の婚約について、両親は乗り気ではなかった。それと言うのも、彼の態度に不信感を抱いていた、と言うのが大きい。
私の期待が大きかったのも一因だが、娘を任せて良いと思える態度ではなかったらしい。
だから、私が彼との婚約解消を口にすると、両親は揃って喜んでくれて、すぐさま公爵様の元へ話をつけに行ってくれた。
公爵様は渋々受け入れてくれたらしいが、彼の不貞について、話すとそれだけは大きく否定した。
ただ、彼女の存在について言及すると、解消に応じてくれたことから、公爵様の知るところだったのだろう。
私の初恋は、婚約解消と共に消えて無くなった。
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