初恋は叶わないと知っている

エミリー

原因

「目」がなくなる原因は複数考えられる。まず一つ目には、「目」を持つ相手の変化。心と体に何らかの変化が生じた場合。そして、二つ目、「目」の対象者に何らかの変化が生じた場合。こちらも心と体に変化が生じた場合、「目」からの干渉を逃れる場合がある。

知られているのは、この二つだが、実はもう二つほど、「目」が現れなくなる原因がある。

三つ目として挙げられるのは、二人の間に生じた雑音だ。二人の間に生じただけで、実際二人とは関係のない動きをしたとしても、雑音として二人を邪魔する存在は、不幸な行き違いという事故において、一番多い原因だったりする。

そして四つ目、物理的に離れすぎた場合、アンテナがうまく起動しなくて、見えない場合がある。



エミリーには話されていなかったが、今回の件は何人かの思惑により生じた雑音が原因でそこにはエミリーと相手には瑕疵がない。ただ雑音となった者達は、これまで同じような状況において、自分の役割を考えて動いていた人達であり、何をすれば自分の利益になるように物事が進んでいくかをわかっていた。




「上手くやれたようだな。」
「人聞きの悪いことをいうな。彼女の不安な時にそばにいられたのは幸運だとは思うが。」

カイル・ディロンと、ジョージア・ルーミスは顔見知りではあるが、大して仲は良くない。互いに互いを胡散臭いと評しており、家の力関係からも親しくする必要がないことから、あくまでも表面上だけの付き合いしかなかった。

その関係性が変わったのは、今回のことがあってからだ。

二人はまるで以前からの親友のように軽口を叩く様子が見られ、どちらかというとジョージアがカイルに意見を聞くような姿が見られた。公爵家の中でも独自のスタイルを貫き他とは一線を画すルーミス家の嫡男は、その容姿から女性は勿論だが、男性からも人気は高い。しかし、側に人がいるのを嫌い、ましてや自分から近づいたりすることはなかったのだが、エミリーやカイルに近づく様子に、彼自身に何らかの変化が現れたことを喜ぶ者や、困惑する者、など人の評価は様々だ。

カイル自身は第一王子の側近という立場はあるが、彼も、側に置く人間は、第一王子にも関わることから選びに選んだ結果一人でいることが多く、彼もジョージアと同じく人を選ぶのだと思われていたことから、二人の仲の良さそうな様子は皆に驚かれた。

カイルはエミリーとジョージアについて何ら思うことはない。ジョージアについて、女性に対しての姿を不思議に思うことはあれど、それについてとやかく言うこともなかった。

「それにしても意外だったな。お前が、ここまで慎重だったとは思わなかったよ。」
「君の思う私の印象とやらがどんなものかはわからないが、褒められているわけではないことはわかるよ。

慎重かどうかは、他に比べるものがいないからわからないな。私は彼女が初恋でね。だから、誰にも渡したくないと思っても、仕方ないだろう？」

「遅れてきた初恋、か。厄介だな。」

「君達に、苦労はかけないように頑張るよ。もう手遅れかもしれないが。」

ジョージアの言う君達に、誰が含まれているかに気がついて、カイルは苦笑を浮かべた。