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王女の元婚約者
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王女の我儘は思えば最初からだった。まだ平和で何の憂いもない頃に、ダミアンは王女の婚約者に選ばれた。初めての顔合わせの際に、当時王太子であった兄王子と共に現れた王女は、ダミアンを見るなり、仏頂面になり、感情をなくした。
王女にまだ密かな期待をしていた自分は、彼女の態度にショックを受け、近づくのが嫌になった。代わりに、というわけではないが、王子と、その婚約者のご令嬢にはとても可愛がって貰った。
彼女とは、王子が隣国との戦で亡くなるまで、何度か交流を深めようとしたが、何が気に入らないのか全く此方と歩み寄る気配がなかった。ドレスを贈っても宝石を贈ってもお眼鏡に叶わなかったのか着てもらえなかったり、身につけることなく捨てられたり。口を開けば、先程少し話していたご令嬢との仲に対する皮肉だったり。気に入らないご令嬢は徹底的に排除したり。婚約者同士であれど、二人で何かすることもあまりなく、それ自体を咎められたりすることもなかった。
王女にとって、自分は何の興味もない人間なのだと、理解させられていた。
王子が亡くなり、その婚約者であったご令嬢が政略結婚により、国を離れると、王女は人が変わったように精力的に働き始めた。今まで勉強ばかりしていたが、あくまで誰かの補佐的な役割を担っていたのに、自らが動き出したのだった。
王子亡き今、王女が自ら王位に就くのかと噂されたこともあった。
「お前、まさか王配になるのか?」
そんな風に揶揄われたこともあった。だけど、婚約者同士の仲が変わることはない。自分で選べるようになれば、彼女は私を選ばない、といった確信があった。
聖女ビアンカが現れたのはちょうどその頃だった。元王子の元婚約者が、嫁ぎ先の国から連れてきた少女。彼女は、儚げな容姿と、優しい心を持つ可愛らしい女の子で、使える魔法はそんなに多くないが、何にでも一生懸命なところが微笑ましく、皆すぐに好意を持った。
王女が出向く視察に聖女も行くようになった頃から、二人が不仲だと言う噂が立つようになった。
聖女を護るために聖騎士になったのは、王女が聖女を虐めている現場を押さえて、あわよくば婚約を解消してやろう、と思っていたのだが。意外にも二人は仲良く連携して問題に取り組んでいた。
王女の化けの皮が剥がれるのを今か今かと待ち構えていたのは、自分だけではない。だけど。聖女は全く持って王女を悪くいうことはなかった。
寧ろ、王女がいなくなった直後は取り乱して倒れるほどにショックを受けていた。彼女は優しいから、王女に同情しているのだと、決めつけていた。
だから、彼女の負担を引き受けたくて、王女のいない今の国に何が起こっているのか、調査を引き受けたのだが。
「デリク・ヒューストン」の名を聞いて、唖然とした。そんな大物がしゃしゃり出てきたら、王女が必死に隠した悪事などすぐに暴かれる、そう期待したのに、彼の見解はまさかの真逆で。
よりにもよって「王女は被害者」だなんて、そんな筈はない。そんな筈はないんだ。
あの後だって、倒れ込み意識が戻るまで数日、今だって長時間は動いていられないほど衰弱している聖女ビアンカと、既に監獄に入り、穏やかな日々を送っているらしいイザベラ。
加害者があれほど衰弱するか?被害者が何の傷も痛みも受けずケロッとしているか?
こいつも、権力に弱いタイプの奴じゃないだろうな。第三者機関に属しながら、真実を追い求めないのなら、自分がこの手で真実を暴いてやる。
ダミアンは、決意に燃えていた。
だから、彼を監視する目的で近づいた自分が、聖女の力と罪を暴くことになるなんて、予想すらしていなかった。
王女にまだ密かな期待をしていた自分は、彼女の態度にショックを受け、近づくのが嫌になった。代わりに、というわけではないが、王子と、その婚約者のご令嬢にはとても可愛がって貰った。
彼女とは、王子が隣国との戦で亡くなるまで、何度か交流を深めようとしたが、何が気に入らないのか全く此方と歩み寄る気配がなかった。ドレスを贈っても宝石を贈ってもお眼鏡に叶わなかったのか着てもらえなかったり、身につけることなく捨てられたり。口を開けば、先程少し話していたご令嬢との仲に対する皮肉だったり。気に入らないご令嬢は徹底的に排除したり。婚約者同士であれど、二人で何かすることもあまりなく、それ自体を咎められたりすることもなかった。
王女にとって、自分は何の興味もない人間なのだと、理解させられていた。
王子が亡くなり、その婚約者であったご令嬢が政略結婚により、国を離れると、王女は人が変わったように精力的に働き始めた。今まで勉強ばかりしていたが、あくまで誰かの補佐的な役割を担っていたのに、自らが動き出したのだった。
王子亡き今、王女が自ら王位に就くのかと噂されたこともあった。
「お前、まさか王配になるのか?」
そんな風に揶揄われたこともあった。だけど、婚約者同士の仲が変わることはない。自分で選べるようになれば、彼女は私を選ばない、といった確信があった。
聖女ビアンカが現れたのはちょうどその頃だった。元王子の元婚約者が、嫁ぎ先の国から連れてきた少女。彼女は、儚げな容姿と、優しい心を持つ可愛らしい女の子で、使える魔法はそんなに多くないが、何にでも一生懸命なところが微笑ましく、皆すぐに好意を持った。
王女が出向く視察に聖女も行くようになった頃から、二人が不仲だと言う噂が立つようになった。
聖女を護るために聖騎士になったのは、王女が聖女を虐めている現場を押さえて、あわよくば婚約を解消してやろう、と思っていたのだが。意外にも二人は仲良く連携して問題に取り組んでいた。
王女の化けの皮が剥がれるのを今か今かと待ち構えていたのは、自分だけではない。だけど。聖女は全く持って王女を悪くいうことはなかった。
寧ろ、王女がいなくなった直後は取り乱して倒れるほどにショックを受けていた。彼女は優しいから、王女に同情しているのだと、決めつけていた。
だから、彼女の負担を引き受けたくて、王女のいない今の国に何が起こっているのか、調査を引き受けたのだが。
「デリク・ヒューストン」の名を聞いて、唖然とした。そんな大物がしゃしゃり出てきたら、王女が必死に隠した悪事などすぐに暴かれる、そう期待したのに、彼の見解はまさかの真逆で。
よりにもよって「王女は被害者」だなんて、そんな筈はない。そんな筈はないんだ。
あの後だって、倒れ込み意識が戻るまで数日、今だって長時間は動いていられないほど衰弱している聖女ビアンカと、既に監獄に入り、穏やかな日々を送っているらしいイザベラ。
加害者があれほど衰弱するか?被害者が何の傷も痛みも受けずケロッとしているか?
こいつも、権力に弱いタイプの奴じゃないだろうな。第三者機関に属しながら、真実を追い求めないのなら、自分がこの手で真実を暴いてやる。
ダミアンは、決意に燃えていた。
だから、彼を監視する目的で近づいた自分が、聖女の力と罪を暴くことになるなんて、予想すらしていなかった。
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