踏み台(王女)にも事情はある

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お礼と言う名の会談

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ダミアンは、急いでいた。デリクにばかり張り付いていたせいで、聖女が目覚めた瞬間、いの一番に会えなかったからだ。いくら治癒してもらったとはいえ、態々病み上がりに会いに行くような価値もない。デリクに会わせないよう阻止する為に急いでいた。

聖女様にはガーランドが付いていると聞いてはいたが、ダミアンはあまりあの男も信用していない。聖騎士でありながら、聖女ではなく、イザベラを優先する俗物だからだ。

イザベラが魔物を使い、聖女を襲ったあの時だって、聖女よりも王女に先に駆け寄っていた。貴族としての爵位はアイラール家が上だが、聖騎士としての格や、年数、聖女からの信頼度が自分よりも上のこの男をダミアンは最初から気に食わなかった。

神殿内部では、ダミアンと同じくガーランドを苦手とする者は多い。通常複数人で聖女の警護をするところ、ガーランド卿は一人でも許されている為、聖女の側に侍りたい者からは羨ましがられている。


それに……今思い出しても怒りと困惑に頭を支配されそうなのだが、奴には聖騎士に就任後すぐに心無い中傷を浴びせられたことがある。

聖女を称えたダミアンに対して奴はとても蔑んだ目を向けて言ったのだ。

「貴殿は幼い女の子に恋愛をする、少女趣味なのか。」と。

どんな話の流れでそんな話になったのかは覚えていない。ただその場には他にも聖騎士の先輩方がいて、その中にはダミアンが最も尊敬する人もいた。

そして、ガーランドがそう口にした途端、彼は耐えられない、と言った様子で噴き出したのだ。

まるで、人を変態みたいに言って不名誉な冤罪を擦りつけたあの男をダミアンは一生許さないと決めた。

ダミアンは急いでいた。彼には気の毒だが、彼が聖女とデリクの会談に立ち会うことはない。今、彼は隠された部屋を通り過ぎて行った。神殿内にはいくつか隠された部屋がある。真に魔力、もしくは神聖力がなければ入れない部屋。そこにデリクと聖女、聖騎士の面々が対峙していた。


聖女の近くには聖騎士ガーランドの他に、リカルド・ザイールも同席していた。彼は聖騎士の纏め役でガーランド、アイラールの上司である。本人は公爵家の出身で、他人を滅多に褒めないダミアンの憧れの人。

彼は豊富な魔力量を持って、その昔若い時に、魔法に関する家庭教師をしており、王太子や王女に魔法を教えたのは彼である。

王女は困った時には自分で抱え込む癖があるが、彼だけには絶大な信頼があり、その点ではガーランドも嫉妬するほど二人の師弟関係は特別なものだった。

彼がこの場に同席することは、予定外だった。だが、結果的にこの部屋の使用を許され、ダミアンを撒けたことと、またもし聖女が暴走した時に、止める人が自分以外にいる、と言うことがガーランドには頼もしく、二つ返事で了承したのだった。

聖女ビアンカは、ガーランドが良いのならと、彼を受け入れた。リカルド自身は聖女との絡みが日頃ない為にビアンカは彼が誰かちゃんとは理解していなかった。


そうして、それ以外は誰の邪魔もなく、会談は始まった。



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