僕の運命は君じゃない

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ベネーノ家の庶子 リオル視点

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リオル・ベネーノは、第二王子フェリクスとはまともに話したことはない。いつも彼の影を間に挟んでの会話をおかしいと思ったことはなかった。公爵家に入ったとはいえ、庶子でしかない自分を見下し、王子が話したくないと言うのも、そういうのが普通だと理解していた。

だが、最近他の人と話す機会が増えると、本当にそうか、と疑う気持ちが芽生え始めていた。

王子フェリクスと自分の間に入る影は一人ではない。こういう場合、王子自身が嫌がっている場合と、影が嫌がっている場合、良かれと思って行動している場合、何となく、というのがある。

この時一番厄介なのは「何となく」で、誰が言い出したことかはわからないが、「なんとなく」決まったことを皆が何も考えずに実行してしまうことにより犯人探しができなくなる。薄く洗脳でもかけられている状態ともいえる。

ベネーノ家の干渉が嫌なのか、それともリオル自身が嫌なのかわからないが、ただ受け入れるよりは少しばかり抗ってみても良いのかもしれない。

「部下が殺された直後なんだから、配慮してはどうか。」などと、言われたからには、「此方側から新しい情報を得られなくとも良いのか?」と、問うと、相手からは嘲笑と、明確な拒否が見てとれた。口調から彼は、フェリクスと常に一緒にいる影ではなく、ベネーノ家に来る影でもない。他の王子によって影の数はまちまちだと言うが、フェリクスには厄介な影が多い気がした。

誰の思惑かはわからないが、フェリクスにあまり知恵はつけさせたくないらしい。他の王子と違い、あんまり頭の出来は期待されていない彼にベネーノ家が付いたことは、彼を利用しようと狙っていた者達からすれば不服だったことだろう。

ある人からの情報で、影になる人間は、アケル公爵家と絡みがある、と聞いたが、第二王子の影にはその絡みとやらは見られなかった。

確かに他の王子の影の何人かはアケル公爵家に出入りしている者がいたり、裏で接触していたりするが、第二王子の周辺の者達は、避けているのか用心しているのか、繋がりが全く確認できなかった。

これは隠したいのか、関係がないのか判断はつきにくい。

ポエナ公爵令嬢に、密かに紹介してもらった男によると、ベネーノ家の内部に、スパイが紛れ込んでいるらしく、確かに怪しくない人物に絞って調べると、浮き上がる者がいた。ベネーノ家には庶子だから、と蔑む者はいない。彼らが嫌うのは庶子ではなく、働かない者だけ。

リオルは男を強制的に拘束し、フェリクスに報告をしないままに、クルデリス公爵に頼み事をした。

王子を介さないと取り次いでもらえないかと危惧したが、そんなことはなかった。

噂通りの怖い見た目をしていたが、スパイを尋問してくれた。

「母親に情はあるか。」
「いえ、特には。」

何となく、自分の母だった人は生きていないのではないか、と思った。

だが、それはリオルにはすでにどうでもよく、スパイの尋問に気を移した瞬間から忘れてしまった。

クルデリス公爵はそんなリオルを責めなかった。親子の間にある情など信じていない彼に妙な親近感を覚えたのは不思議な感情だった。
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