僕の運命は君じゃない

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死の関係者 テオドール視点

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第二王子フェリクスの亡くなった部下は、テオドールも知る人物だった。元はテオドールの側近として選ばれる筈だった彼はその後、大人の事情とやらで、第二王子の側近として、側を離れてしまった。

歳はテオドールよりも少し上で、フェリクスよりは少し下。性格は生意気だけど優しいお兄さん。彼が殺された時、何故か彼自身が治安の悪い場所に赴いていた、とか、悪しき行いをしていたとか、様々な疑惑が飛び回っていたけれど、彼を知る者ならば、それは噂でしかないことを知っていた。

第一王子ルシアンと第二王子フェリクスの影、そして自分でクルデリス家に乗り込んだ時には、この問題はさっさと解決するのだろうとたかを括っていた。

そこにいたのは、彼を陥れた犯人とされる男達。中にはいかにも、な女性もいて、正義感に塗れた男が好きそうな容姿をしていた。


トカゲの尻尾切りで、彼らは実行犯ではあるものの、詳細については知らされていなかった。知らないものは話せない。裏切りという選択肢を取り上げられて彼らは話すことがなくなった。

この場にフェリクスがいないことは、ルシアンの意思だ。フェリクスはいいやつではあるが脳筋で、王子の中で唯一、本人の性格に問題のないタイプ。問題のあるのは彼の周りで、それは後見のベネーノ公爵家も同じだった。


テオドールは、ベネーノ家の庶子、リオルに考えを巡らせ、思い直す。

「あれは不気味であるが、まだ此方側だ。頭の良すぎる彼には彼方側も扱いに困っているだろう。」

第二王子フェリクスの周りにいる者達は一枚岩ではない。小さな石がいくつも集まって岩に擬態しているだけ。どこからでもすぐに割れてバラバラになりうる可能性に溢れている。

「リオルだったか、あの庶子の母親を探して吐かせよう。場合によっては、奥方の力を借りるかもしれないが、いいか。」

クルデリス家の当主は最近結婚した新妻を随分と可愛がり、溺愛していると聞く。第一王子ルシアンの言葉にいつもなら逆らわないリュードが、躊躇う様子を見せることにテオドールは驚いたが、当のルシアンは苦笑いで済ませている。

王家に盾ついたからと言って、クルデリス家を処分などしないが、今までルシアンのいうことに逆らわなかった公爵のその反応は新鮮で、ダリア夫人に更に興味が湧いた。

「冷酷男の仮面が剥がれかけているぞ。」

リュードがそう自ら名乗っているわけではないが、女性への対応然り、処刑人としての仕事然り、彼にはその名を否定できる要素も理由もない。

「恋は人を変えるとは、真実だったのだな。」

テオドールはルシアンの言葉に、ついメリッサの顔を思い浮かべてしまい、彼女も恋をしたら今の良さが無くなってしまうのか、と何だか残念な気持ちになった。彼女の良さは、自分のことを自分で決めて実行できることだ。単純なことだが、それをできる人は意外に少ない。

テオドールは自らが変わる可能性については瞬時に無いと、判断した。

そんなふわふわした感情は、自分には必要がない。自分はあくまでも傍観者で、実行者ではないのだ。実行者ではないがメリッサのことについて、思いを巡らせるのだけは、許してほしい。テオドールは誰に言い訳しているかわからないままそんなことを思った。



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