だって姉が眩しかったから

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だって自称妹が煩くて   カイ視点

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「お兄様、生きていらしたのですね。」

レイチェルがいるのに、カイにばかり話しかけてくるこの自称妹は、隣国からの留学生らしい。

何でも昔攫われ、離れ離れになった兄とカイが同一人物だと言う。

「理由は目元の黒子ですわ。ホラ、私にもあるのです。」

カイと同じところにある彼女の黒子。だが、こんなもの、珍しくも何ともない。それよりさっきから黙ったままのレイチェルが何を考えているのかわからない方がカイには気がかりでならない。ずっと難しい顔をしている。

自称妹が離れた隙に聞いてみると、彼女にはあまり近づかないでと釘を刺された。

「貴方の周りの精霊達が青みを帯びているわ。折角白い色に戻したのに、彼女はもしかしたら、強力な黒の精霊達を従えているのかもしれない。」

レイチェルの目には彼女の側に黒い影は見えなかったそうだが、以前読んだ本によると、強大な力を持つ精霊の中には、自分の影を消すことができるものもいるらしい。

「本当の親族かもしれないから、強くは言えないんだけど。」

レイチェルは単なる他人の空似ではなく彼女の言う兄の線を多少は信じているらしい。

けれど、カイは自称妹の言葉は信用ならないと思っている。子爵家に入ることになる際、レイチェルの父、侯爵が自国だけでなく、他国にもカイの特徴に一致する行方不明者を探した際に、隣国からはその特徴に合致する行方不明者はいない、と回答を得ている。行方不明になった者は成人済みの男子か、娘ばかりであると。

なので、カイの身分は、孤児の平民のまま、子爵家に養子縁組が叶ったのである。

これがもし、彼女の言う通り、彼女の兄であったなら、何故隣国への問合せの際名乗り出なかったのか。

そもそも、カイは望まれた子ではなかった可能性が出てくる。存在そのものを、秘匿した子だから、攫われたところでそれを言うのは憚られたと言ったところだろうか。

カイは自称妹のことは常に警戒するようにして、レイチェルの言うように距離を置くようにした。レイチェルの側にいることで、レイチェルと彼女の距離も保つように配慮した。

逆恨みでレイチェルを危険な目に合わせることになっては、大変なことになる。

自称妹はそれから暫くは顔を合わせなくて済んでいたが、彼女がそれで諦めるわけもなかった。

「お兄様、今日こそは話を聞いてくださいませ。」

彼女はレイチェルのいない隙に接触を試みることはあったが、カイにもわかるぐらいドス黒いオーラを纏い、目の前に現れたのを見て、絶句した。

「話を聞いてほしい、と言う割に危害を加えられそうなんだが?」
「それはお兄様次第ですわね。記憶を封じて、捨てた筈なのに、また這い上がってくるなんて、悍ましい。」
彼女はカイヘ嘲笑を返すとカイの手を取った。

生命力を根こそぎ奪われるような感覚があるものの、全ては奪われることはない。それはレイチェルが作ってくれたお守りのおかげだ。

彼女はそれでも動がなくなったカイを小脇に抱えてどこかにいくらしい。カイは聞こえるかわからなかったものの、精霊達にレイチェルを呼んでくれ、と念じた。




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