大恋愛の後始末

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マートンとライアンの違い

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シェイラはジュリエットに嫌われている理由を知らない。ジュリエットには取るに足らない人物と思われていると思っている。ライアンはそれが不思議だった。

明らかな政略結婚なのに、ジュリエットが「大恋愛」にこだわった理由も、こちらの調査が正しければシェイラに一矢報いたいから、というものだったし、どちらかと言えば、「興味がない」のは、シェイラ側だったのではないか、と推測できるからだ。

自らを侯爵令嬢と思っていたジュリエットは格下だと侮っていたシェイラが自分より人気があれば、注目するし、構いたくもなる。だけど相手側にはこちらに対して「興味がない」となれば、彼女の性格上、何とか視界に入りたくて、色々仕掛けるだろう。その全てが悪手という状態がジュリエットのすごいところではあるが。

対して、弟マートンは潔く、自分の境遇を受け入れていた。

もっと揉めるかと思っただけに、ライアンには些か拍子抜けに思えたが、マートンは爵位を売ることで平民になっても、抵抗することもなく、我が身の境遇を受け入れた。

「だからか。腑に落ちた。」

彼が発した言葉はたったこれだけ。連れていた女達に縋ることもなく、女達が逃げていっても恨み言の一つも言わない。

「どうして、浮気なんかしたんだ?」
ふと、気になって聞いてみると、自嘲気味にふっ、と笑って「だって、自分ばかりが、ってしんどいじゃないですか。」と返事した。あれは……






「ねえ、シェイラはマートンとかいう男をどう思っていたの?」
「政略結婚の相手として?なら、何とも、ですね。彼には確かにいいところもあったはずなのに、思い出せないし、最初から愛人を連れて交流する男を心底軽蔑していたので、視界には入れたくないほどには嫌いでした。」

「なら、私は?私はどんな風に思ってるの?」

シェイラはスラスラとはなしていたマートンの話とは違い、明らかに動揺してしどろもどろになっている。

それは恐れからくるものではなく、愛情からくるものだと、ライアンは理解しているつもりだ。

シェイラに向かって手を伸ばせば、彼女との間に緊張感と甘い空気が流れ出す。

「もう政略結婚とは言えないかもしれないね。」

短期間に大恋愛を二回もすれば、大公子息としては、侮られるだろう。だが、どちらが真実なのかは、一目瞭然で、それこそが公爵の掌の上だと思うと、悔しさと感謝で胸がいっぱいになる。

シェイラからの返事はまだ聞けていないけれど、彼女がライアンを愛しはじめていることは充分伝わった。

「仲睦まじいフリ」をすることは「契約結婚」には必要だと、ライアンは強引にシェイラを巻き込んだ。始めは抵抗していたシェイラも、無駄だと悟ったのか、今は余程のことがない限りは身を委ねてくれる。

「そろそろ婚約を発表しようか。」

それなら、心置きなく君を愛でられる、
そういうと、シェイラの顔がまた真っ赤に染まった。

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