大恋愛の後始末

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ジュリエットの実情

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ジュリエットは保護された邸でのんびりと過ごしていた。一緒に逃げた庭師は、ジュリエットの我儘を聞いてくれたが、お金のない貧しい道中に、うっかり逸れてしまい置いてきた。私みたいな美しい貴族令嬢と束の間でも愛し合えたのだから満足でしょう。

彼は私を隣国まで連れて行きたかったみたいだけど、そこまでは行きたくないのよね。折角この国で地位を築いてきたのだもの。ライアンだって、失ったと思っていた婚約者が戻ってきたら、感謝で咽び泣くに違いないし、何を考えてるかわからない不気味な顔を解いて、蕩けた笑顔を見せるに決まってる。

自分が逃げた後に侯爵家が潰れたと言うからにはそれだけライアンが私を求めていたということでしょう。

シェイラ・ブラウンは婚約がなくなって、傷物になったというし、後は劇的な演出で、ライアンの元に帰るだけ。

ジュリエットは自分が既に平民の身分に落ちていることを知らなかった。彼女を保護した子爵家の人物が、自分が置いてきたと思っている庭師であることも、彼の主人がライアン・スペードで彼女の行動は全て筒抜けであることも。

彼女は、弟の元恋人達を招いて、駆け落ち後の騒動を聞いてみたが、彼女達に詳しい話を知る術もない。少ない情報を元に真実を見極めるだけの能力もないジュリエットは彼女達の独りよがりの思考を真実だと誤認し、受け入れた。



クララ・メイズは、邸から帰る際、ある光景を目撃した。ジュリエットが男達を侍らせて悦に入る瞬間を。

そこには駆け落ちの末に落ちぶれた女はいない。社交界ではジュリエットは平民との恋の果て、自ら平民になったと、蔑まれていたのに。

平民になったとしても、あの子爵家の方と結婚すればまた貴族に返り咲ける彼女に、クララは美人は得だ、と悟った。

「高貴な血筋の娼婦」とは、ジュリエットをはじめてみた貴族令嬢の第一印象。

血筋しか取り柄のない彼女が平民になったことで、クララやら周りの令嬢達は笑っていたのに、平民になっても人気なんて。

クララは気づかない。自分が元男爵令嬢になってからとんとお呼びが掛からなくなってしまったことで、女性として自信を無くしていた。自分だって、可愛いと自負していたが、結果は残酷だ。

「高貴でなくなった娼婦」のジュリエットに群がる男達が、まともな訳はない。

彼らは理由があってジュリエットに傅いている。彼らは、子爵に呼ばれてやってきたジュリエットの「お友達」で、彼女の「教育係」だ。

その中には、昔ジュリエットに婚約を邪魔された者もいる。彼らは虎視眈々と準備をしていた。彼女を地獄に落とす為に。

ジュリエットは毎日訪れる男達が自分を求めるのに、喜び、夢中になって身体を開いていた。爛れた生活が自分自身にどんな変化を齎すのか知らなかったわけではないだろうに。




子爵家に戻った男は主人に報告するために、屋敷を離れた。

「ジュリエットを望み通りにしてやってくれ。」

「男が好きなら、彼らに一生可愛がられる人生を。」

「考えるより先に体が動くタイプだから、快楽に支配されて仕舞えば、逃げようとも考えまい。」

ジュリエットの「客」は、裏ルートから用意した選りすぐりの変態共だ。「駆け落ちした大公子息の元婚約者」という肩書きは彼女の価値を高めた。

驚くことに、ジュリエットはいまだにライアン・スペードの元に戻れると思っている。他の男の手垢まみれの自分がまだ求められている、と信じている。

滑稽だが、心を折るのはこちらの仕事ではない。男は「商品」には手を出さない。それにアレは誰でも良いのだ。未だに庭師の正体にすら気づかないぐらいなのだから。


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