大恋愛の後始末

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困惑と王子様

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「クククッ。」
夜会の最中からずっと機嫌の良いライアンに、たまらず声をかける男がいた。

「珍しいな。お前がそんな風に笑うなんて。」
ライアンとは長い付き合いの第二王子アダムは、張り付けた笑みしか見たことがない幼馴染が楽しそうに笑うのを信じられない面持ちで眺めた。

幼馴染とはいえ、何を考えているかわからないこの男をアダムは正直気味悪く思っていた。

だが、ここ最近彼のことを「人間らしくなった。」と評する者が増えて、堪らず見に来たのである。

アダムの姿を認めると、またいつもの笑みに戻そうとするが、何がそんなに可笑しいのか未だに小刻みに震えている。

「悪い。お前のことを笑ってるわけじゃないんだ。」
あのライアンから素を引き出せたものは何だったのか、気になって調べたら、新しい婚約者だという伯爵令嬢だった。

ライアンの婚約者といえば、アダムにはジュリエットよりも、その前の子爵令嬢の方が記憶に残っている。

儚げな容姿で、ただそれだけでライアンの足を引っ張っていたあの女。ライアンは彼女を守れなかった、と一時期落ち込んで、思えばあれから、笑顔に感情が入らなくなった。

自分の地位を利用して、その場その場で別人を演じることで、自分の望む方向へと周りの人を誘導する。あの子爵令嬢は危険だった。虫も殺せないような顔をして、周りの人を徐々に追い詰めていく彼女を、ライアンから離し、ある場所に閉じ込めたのは、王家の仕業だ。


新しい婚約者の伯爵令嬢は、悪い噂と良い噂が半々の一見強そうな瞳をした可愛らしい女性だった。ライアンがそばにいようがいまいが、周りの人がいようがいまいが、誰に対しても態度が変わらない。どちらかと言うと、強い女性に見える彼女をライアンが気に入っているのは意外で、だから余計に試してみたかった。


ライアンに対して終始赤くなったり、恥ずかしがる姿は確かに微笑ましいが、他の人達にも同じ態度なら、子爵令嬢のようにライアンに嫌われたとしても、引き離すつもりだった。

アダムは自らの顔面に自信を持っていた。大体の女性は、アダムがじっと見つめ笑いかけるだけで、意識を飛ばしてしまうほどに、舞い上がる。


だが、その自信はシェイラ・ブラウンに会った瞬間、吹き飛ばされてしまった。

彼女は、ライアンしか見ていない。アダムがいくら穴があくまで見つめていたって、全く気づかない。アダムの思惑を知っていたのか、ライアンがフッ、と噴き出してまた小刻みに震えて笑いを堪えている。

三度目の正直ということか。アダムは、鈍感同士の二人を見送って、ほっと一息ついた。




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